第20話 半年後?(ホラー注意)
――――□□□□□□?
いつも通りの早朝、私は自室で目を覚ました。
いつも通り顔を洗い、髪をまとめ、朝食を作る。
そして部屋に戻り、部屋着から外出用の服へと着替える。
すべての準備を整えた私は部屋から無言で出て、エレベーターに乗る。
――――□□□□□ル?
あのコラボ配信から多くの月日が流れ、今は半年が経った気がする。
私はバスに乗り、窓の外を見る。
あのときとは違い、私と同じで多少の厚着をして当校する人々。次第にその人たちが私と同じような格好をしているように見えてしまう。
そんな幻覚を見た私は目をこすり視界を戻す。
外の木々は枯れていて、その景色の中に私は溶け込んでいると思えた。
バスが大学に到着し、私は無言でバスから降りる。運転手もこちらを向かずただハンドルを握っているだけだった 。
――――ワ□□□□ル?
大学の講義が終わり、いつも通り食堂で詩織と待ち合わせをする。そういえばコラボ配信はこれまでに何度しましたっけ……と思い、私は自分のスマホで調べる。
どうやらこれまでに数十回はしていたらしく、こんなにしましたっけと思い、苦笑いを浮かべてしまう。
私は適当に小説アプリを開き、時間を潰す。
最近はいろんなジャンルの小説がアップロードされていて飽きることがない。私のアカウントは読み専で通知欄には
まぁ当然か……と思いながらも小説を読んでいく。
そうしたら私の横で私を呼ぶ声が聞こえた。
ああ……詩織ですか。驚いたじゃないですか
――――ワタ□□□ル?
詩織と帰るときは少し料金はかかるが駅を使っている。詩織が駅の方が近いし、私も実を言うと電車のほうが早い。
ならなんでバスを使っているのかというとこうすることで何か思い出せないかと思っているのだ。成果が出た事はない。それでも私はこれに縋り続けるしかない。
電車の中は物静かで電車の中にいる数人も下を向いてスマホを見ている。
そのスマホには何が流れているか気になるが人のスマホを覗く趣味はないので人には聞かない。
そんな中詩織だけは私に喋りかけていた。
――――ワタ□ハ□ル?
駅で詩織と別れ、私は自宅へと向かう。
周辺の住人とは顔も合わせず、ただひたすらに歩いていく。
そんな道中は季節も相まってどこか色がないように思える。
いつものように公園から聞こえていた子どもたちの声も今は皆無に等しい。
家につくと私は鍵を開け、家の中に入る。今日は配信があるので配信部屋の準備もしなければならない。
今日は少しいそがしいかな。
――――ワタシハ□ル?
配信が終わり私は配信部屋を後にする。
スマホを開き、自分のトイッターを見る。そこにはアリシア・アンモライトへと賛辞が並んでいた。それを私は興味なさ気な顔でスルーする。
部屋着に着替え、私は寝る準備をする。
ふと台所を見ると睡眠薬がおいてあり、私はそれを手にとって、寝室へと向かった。
メッセージアプリを開き、アリアに関するメッセージを消費する。
それが終わり私は寝床につく。顔まで掛け布団を被せ、目をつぶり今日一日を振り返る。
いつも通りの日々だった。
自分でバスに乗り、自分で大学へと足を運ぶ。
自分で配信の計画どおりに配信をする。
そんな有澤叶と他人が関わらない日。
そこで一つの疑問が湧く。
――――ワタシハイル?
刹那、私の耳元で大量の声が発せられた。
「あなたって必要なの?」「あなたはいらない」「あなたがいてもいなくても別に関係ない」「きみいるかちあるの?」「あなたは――」「あなたは」「あなたは」「あなたは」「あなたは」「あなたは」「あなたは」
「アナタハイラナイ」
掛け布団を思いっきり自分の体から退かす。
「うるさいうるさいうるさいィ!」
私の顔はいつもよりずっと酷い顔をしてるだろう。
「私だってわかってますよ!他人が一切関わってこない生活!記憶をなくしてるんだから交流できなくて当たり前じゃないですか!唯一の希望と思っていたVtuber活動だって注目されるのは
大声でそう叫ぶ。いつの間にか周りは赤黒く染まっており、私が寝転がっていたベットしかそれ以外の色をまとっているものはなかった。
「こんな疎外感……受けたくなかったッ……」
捻り出すように私は言葉を紡ぐ。
顔を上げ周りを見渡すとそこには睡眠薬があった。
私はそれを素早く取り、いつもの適量を手に置く。
そして蓋を閉めようとしたとき、また耳元で声が発せられる。
「そんなに少なくていいんですか?もう少し飲めば
その言葉に私は考えが揺らぐ。
ここで
周りの黒はそれを助長するように禍々しくねじれる。
そんな中私は薬を……
……私の視界が黒く塗りつぶされる。なにもないはずの黒、でもその先に
その先に
黒い私がいた気がした。
――――――――――
「ん……」
そこで私は目が覚めた。
スマホを見るとそこには
さっきのは夢だったかと思い洗面台へ向かう。
洗面台に行き、ガラスを見る。
そこには私でも見るに耐えないような酷くやつれた顔があった。
「これは……酷いですね……」
そんなことを言いながら手に水を集め、顔を洗った。
その後は朝食を作り、準備をして、家を出た。
バスから見える景色もいつも通り普通の景色で見慣れてしまっている。
大学の講義も終わり、食堂に行く。
小説アプリを開いてそこで詩織を待つ。通知は一切来ておらず、読み専だというのが一目でわかる。
最近増えたお気に入りの小説を開き、コーヒーを飲みながら時間を過ごす。
すると私の前に人が立っていた。
「おまたせ。叶」
「ええ。待っていましたよ詩織」
そこにいたのは予想通りの人物。
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