第19話 初ニーリャコラボ配信(2)

「はい!この話終わり!次はマチュマロ読んでいくよ!」

「終わり方強引すぎません?」


 恥ずかしくなったのかこの話題を強引に終わらせる詩織。

 配信予定時間的にも話題を切り替えるのは得策だろう。


 コメント

▷てれてーら

▷照れてる?もしかして照れてる?

▷それでも平然としているアリアさんまじ鋼


「はい!これ!」


〘 初コラボキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 ということでまず初めて(配信以前)あったときの印象を教えてください〙


「印象ー?……不健康児かな」

「ひっどいですね」


 コメント

▷不健康?

▷なぜ?

▷そんな様子は見られないけど


「いやこの子中学の入学式でぶっ倒れたんだよ」


 もちろんこれは設定上中学で会ったことになってるから中学の入学式と言っているだけだ。本当は大学のなんだけど。


「あの日は特別体調悪かっただけですから」

「うそつけ!それからも何回かあっただろ!最近やっと倒れることなくなったやんけ!」


 コメント

▷え?それ普通に大丈夫?

▷病弱なんかな

▷ストレス?

▷まぁ治ったなら……


「ああ。今はもう全然平気ですよ。一種の持病みたいなものですから。薬のお陰で安定してきてます」


 今年に入ってから睡眠薬を処方されて、やっと深い眠りにつけているから睡眠不足でぶっ倒れるということはなくなってきた。

 ふと詩織の方を向くと私のことをじーっと見てくる。私はその原因が分からず少し首を傾げたがすぐに原因がわかる。

 私はまだ第1印象を言ってなかったのだ。


「私がニーリャと初めて会ったときの印象はグイグイ来るしつこい人ですかね」

「わぁおウザがられてた……」

「今はそんなこと思ってませんよ。何ヶ月も攻められたらいつの間にか仲良くなってた感じですね。今では感謝してますよ」


 正直なことを言うと私は詩織に対して最初はマイナスの印象を持っていた。当初は1人でいたかったし、誰とも話さずにいたかったのに詩織はガンガンこっちに話しかけてきた。

 それが何ヶ月も続いたらいつしか私は詩織とよく話し、詩織を一番信頼できる人と認識していたのだ。


 コメント

▷ええ話やで

▷眩しい……

▷俺もそういう関係になれる知人がいてほしかった


「へいへいへーい!いいだろー!私のアリアは最高なんだぜー!?」

「調子に乗らないでください」


 コメント

▷は?

▷失望しましたアリアファンになります

▷お前のじゃない(定期)


「失望すんな!アリアファンに……なるのはべつにいいか」

「……次行きましょうか」


〘アリアさんに質問です!ニーリャさんがVtuberだと知ったときどう思いましたか?〙


「まぁ納得しましたね」

「へー」

「この人、一緒に出かけれない日とかがあまり分からなかったんですよね」

「配信の関係上出かけれない日があるからね」

「そうですね。だからVtuberと知ったら成程と思いましたよ」


 コメント

▷はえー

▷俺ならびっくり仰天して天に召される

▷おれだったら逆立ちして「まじ?」って聞くわ


「なんで皆さんそんな奇行に走るんですか……」

「私らのリスナーはそんな感じだから」

「私のリスナーさん巻き込まないでもらっていいですか?」


 コメント

▷ニーリャよりはマシ

▷ニーリャはもっと酷い

▷ニーリャに言われたくない


「どういうことじゃおらぁ!!!」

「そういうところじゃないんですかね」

「は?」

「配信者が配信者ならリスナーもリスナー……」

「おぉ!?そんなこと言っていいのかぁ!?あぁもうしーらない!次選んでやる!」

「ちょっと、勝手に見ないでくださいよ」

「あっ……ふふ……これ行こー!」


〘どっちでもいいんで熱中症ってゆっくり言ってください〙


 私はこの質問に少し疑問を覚える。


「こんなことして意味あるんですか?」

「んー……知らない!リスナーはどっちに言ってほしい」


 コメント

▷アリア

▷アリア

▷アリシアさんで!

▷ニーリャが言っても意味ないて

▷これ絶対ニーリャわかってるだろ

▷そりゃ以前してましたし


「少しは私派いても良くない!?」

「……まぁリスナーさんのご要望ですしやりますか」

「あっ!やるなら全力でいい声でやって!」

「え、いいんですか?」

「うん!よろ!」


 私は喉を軽く鳴らし、声の調子を整える。

 イメージとしては可愛いい感じの声をイメージする。喉仏がいつもより少し上に上がり、私は口を開く。


《ねっ……ちゅーしよ》

「おぉ」


 コメント

▷ふぐぅ!

▷おおぉ!?

▷待って顔赤い

▷切り抜きはよ

▷オチテマウ……


「えっ?皆さんどうしたんですか?」

「あんたの声やっぱ良すぎるよ……」

「いやでもそれだけでしょう」

「……自分が今何言ったか振り返ってみ?」

「え?」


 熱中症……ねっちゅーしょう……ねっちゅーしよう……


「にゃ……!?」


 私は先程自分が何を言ったのかが分かり、顔を赤く染め、伏せてしまう。

 詩織はそんな私を見てニヤニヤする。

  

「気づいたようだねアリアくん」


 その言葉で私はニーリャのことを睨み、少し怒気を孕んだ声でニーリャに呼びかける。

 

「ニーリャ後で覚悟しといてください」

「ゑ」


 コメント

▷当然の報いで草

▷ニーリャ終了のお知らせ

▷ニーリャがんば


 このあとニーリャの絶叫が轟いたとかなんとか。


 ――――――――――


「配信お疲れー!」

「本当に疲れましたよまったく……」


 今回の配信はいつもの雑談とは違ってなんかツッコミとかを多くしていた気がする。

 近くのペットボトルの水を飲み干し、キャップを締める。隣の詩織もㇸのキャップを締めてゴミ箱に放り投げている。


 私はそこでかねてからの疑問を投げかける。


「……なんで唐突にオフ配信なんて誘ったんですか」


 今回のコラボはオンラインでやるつもりだったが急遽オフになったのは配信前にも話していた。しかし、その理由が私達がリア友というだけでは納得がいかない。


「あー……やっぱ言わなきゃだめ?」

「駄目ですね」


 そういうと詩織は口をモゴモゴさせながらこちらを言う。


「最近叶元気なさそうだから……配信始めた頃から」


 私はその疑問に少し目を見開く。

 確かに最近は元気がないのだろう。その原因もわかってる。しかしそれを隠していたのだが詩織にバレているとは思わなかった。

 私はそれを誤魔化すべく、詩織に笑いかける。


「気にしないでください。私の問題ですから」

「……そう」


 詩織は彼女には似合わないような沈んだ顔をしてそっとドアを閉じた。

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