第18話 初ニーリャコラボ配信(1)

「もうそろそろ始めるよー?」

「はいはいわかってますよ」


 この前のコラボ勧誘から一週間後、わたし達はそのコラボを実行していた。

 あの日、マネージャーさんにこのコラボのことを話し、了承を得たのだ。

 坂本さんはどこか悶絶しながらこのことを了承していたが何かあったんだろうか……

 それに詩織の説得は「一週間後アリシアとコラボするから!よろしくね!マネちゃん!」と言って了承をぶんどってきた模様。あっちのマネージャーさんは大変苦労したでしょうね。

 それでまぁ今日の配信は成り立っているわけだけれども。1つ重大な問題がある……それは……


「なんで初回コラボがオフなんですか?」

「そっちのほうが楽しそうだから」 


 そんな理由で……

 そう、今日はオフコラボなのだ。普通初回のコラボは通話を繋いでやるのだが詩織がオフコラボにしよう!と言い出してしまったのだ。


「マネージャーが気の毒……!」

「まぁまぁ細かいことは気にせんで行こーや」

「むぅ……」


 そう言いながら私はWebカメラを起動させる。

 今回の配信は詩織の枠でやる。


「準備おっけー?」

「ええ」


 オープニングが終わる。


 ――――――――――


「みんなー!こんちゃー!」

「こんにちは。またご縁が有り嬉しいです」


 コメント

▷こんちゃー!

▷こんちゃー!

▷5円!

▷5円!

▷こんちゃー!

▷5円!


 アリシアとニーリャの挨拶に合わせ、コメントが高速で流れ出す。

 ニーリャのこんちゃーという挨拶はまぁ前回と同じだから気にしないが、アリシアの『5円』というのは私が挨拶の度に『ご縁があり――』と毎回言ってるからリスナーが自然と挨拶に合わせて5円!とコメントを打ってくるようになったのだ。


「今日は待ちに待ったアリシアとニーリャでのコラボです」

「わーパチパチ!」


 コメント

▷六兆年と一夜待ってた

▷やるとは思ってた。てゆうかやらないとおかしい

▷きちゃ!

▷ゆーじん!


「まぁその初回コラボがオフなのは意味不明ですけどね」

「それ配信前にも言ってたけどきにせんでいこーよ!」


 コメント

▷いや気にするだろ

▷初回オフは草

▷リア友だから行けるんかな


「今日はゆったり雑談配信していくよー!」

「マチュマロも読んでいくので宜しくお願いします」


 そう言い私はふぅと一旦息を吐く。


「んー何から話そうかー?」

「じゃあ今日のことを話したらどうですか?」

「そうだね~……今日はね5時ぐらいにアリアがうちに来て、テレビゲームとかしたよ。スマ○ラとか……マ○カとか!」


 コメント

▷アリアの圧勝だな

▷ニーリャ勝ててないやろ

▷友情破壊ゲームいっぱいで草


「おい!私が勝ったと思ってるやついないんか!」

「まぁ普段の話聞いてたらそうなるでしょう」

「そうだけど!」


 コメント

▷で?結果は?


「スマ○ラは全敗だよ!」

「ニーリャも強かったですよ?」

「嘘つけ!2割は三タテだったろうが!」


 そう言いながらニーリャは私の方を指差し、大きな声で怒鳴る。私はそれを苦笑いで流す。

 するとコメントに鋭い指摘が飛んでくる。


 コメント

▷ん?スマ○ラは?マ○カは?


「あぁ……逆にマ○カは私の全勝だよ」


 コメント

▷嘘でしょ?

▷嘘は良くない

▷負けは不名誉じゃないんやで……ワイは煽るけど


「そこは慰めてくれよ!」

「まぁまぁ……でも私が全敗は本当なんですよ?」

「この子スキルに関しては圧倒的な才能がある癖に運が絶望的にないんだよねぇ」

「下位なのにコインだけなのどうにかしてくれませんかね……」


 コメント

▷草

▷運なさすぎで草

▷つまりスキルでは負けてる……?

▷これは実質アリアの勝ちやね……


「いや私が勝ったんだから!?」


 私はこの話題が落ち着いてきたところで話題転換をするべく、違う話を振る。


「今日の夕飯は一緒にカレー食べましたよね」

「ん?あぁ!そうだね!アリアの手作りカレー!美味しかったー!」


 コメント

▷手作り!?

▷詳しく


「詳しくって言っても……私がニーリャの冷蔵庫の中勝手に使って作っただけですよ」

「私が作ったカレーより美味しくてビビった〜……」


 コメント

▷はえー……料理得意なんか

▷俺はいつもインスタントですぜ

▷ビーフ?


「料理は一人暮らしですから自然と身についた感じですね。カレーはシーフードです」

「私も一人暮らしなんだけど……」

「カップ麺で済ませること多かったんじゃないですか?」

「うぐっ……」


 コメント

▷ニーリャ に 100のダメージ

▷不健康と健康の差

▷ニーリャ見習え


「うっせ」

「……今度料理教えましょうか?」

「負けた気がするからヤダ」


 なんですかその子供みたいな理由……そう思っていると私はニーリャの顔にある違和感を覚え少し凝視する。

 するとニーリャの顔に1つの違う部分があった。

 私はその部分に手を伸ばし、それを指で拭き取る。


「んへっ!?なに!?」

「いや口元にカレーがついてたので取っておきました」

「あっほんと!?ありがと〜!」


 するとコメントが一気に加速する。


 コメント

▷これは嫁

▷嫁?

▷友人ではなく嫁だった説

▷デビュー配信から思ってたけどやっぱ嫁だったかぁ……

▷初見です。夫婦配信ですか?

▷指輪何にした?


「よ、嫁ェ!?」

「そんな感じに見えましたかね……?」


 そういうと詩織は少し考えるような仕草を取り、次の瞬間一気に顔を赤くする。


「確かに嫁ムーブだった……!」

「そ、そんなにですか……」

「私達はそんな関係じゃないからね!リスナーども!勘違いすんなよ!」


 コメント

▷照れ隠しか?

▷こんないい嫁もらっててよく言う

▷勘違いじゃない


「ぬあー!」

「いい嫁って……」


 コメントに対し、私は少し苦笑いを浮かべた。





☆☆☆


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