第17話 マネージャー
「コラボしよう」
「……はい?」
いつもの大学の講義が終わり、私達は食堂でくつろいでいた。
あの初配信から2週間が経ったこの頃、私は順調に配信をし続け、もう配信に対する緊張感は皆無になったと言っていいだろう。
そんなときに詩織がこんなことを言ってきたのだ。
「何故急にそんなことを言い出したのですか……」
「今思いついたから」
んな無茶苦茶な……と思いながらも私はその案に結構前向きな印象を持っていた。
私の特別デビューの要因の1つにはニーリャ・ファイブロライトの友人であるというのがある。リスナーたちもそれを把握しており、この二人のコラボが見てみたいという意見も多かった。
実際、私がデビューする前とかはデビューしたらニーリャとコラボしてみたい、とか思ってたし、なにより初のコラボ相手がニーリャだと話しやすい。
てゆうかこれを今思いついたからで済ませて欲しくない。
「じゃあマネージャーに相談してみますか?」
「まじで!?ヤッター!」
「貴方もマネージャーに言っていてくださいよ」
「はいはーい!」
「全く……」
私はそう言いながらコーヒーを啜る。
今日のコーヒーはいつもより豆が多かったのか少し苦い。それでも私の好みの味なので飲み続けた。
「それじゃあ家に帰ったら早速相談してみよーと」
「私もそうしますかね」
私はスマホを取り出し、画面をつける。そして数あるアプリから1つのアプリを起動させる。
「何してるの?」
「Y○uTube見てます」
「あー……ネタ探しか」
「まぁそんなところです」
このサイトは色々な動画が投稿される動画投稿サイトである。かくいう私もこのサイトでライブ配信をしており、毎日お世話になっている。
この動画サイトは内容が様々であり、ゲーム、食べ物、最近話題の店などが一目でわかる。だからこのサイトを使って、最近のハヤリなどを探すことがよくあるのだ。
「そういや最近は昔の人気ゲームのリメイクが出たーとかあったよ」
「最近リメイク物多くないですか」
「わかるー」
そんな他愛もない話をしながら私達は自分の頼んだものを消費していく。
私のコーヒーと詩織のオレンジジュがなくなったとき、詩織は席を立った。
「それじゃあ先に帰るね」
「ん。さようなら」
「さいならー」
そういうと詩織はこっちを向きながら手をふる。
私もそれに答えるように小さく手を振ると詩織は満足したかのように笑い、出口に体を向け、去っていく。
いつもなら一緒に帰るのだが、今日は少し違う。
「もうそろそろ時間ですかね」
私はスマホで時間を確認し、食堂を出た。
――――――――――
「お迎えありがとうございした」
「いえいえ。こちらも仕事ですから!」
私は大学を出たあとGO!ライブ!本社に来てていた。なんで本社に来ているかというと今後の配信についてを話し合うためである。
「それでは向かいましょうかアリシアさん」
「わかりました坂本さん」
坂本美奈
私のマネージャーとして配属された茶髪の女性。凄い笑顔の似合う女性で結構若めである。
「今日はどこでするんですか?」
「今日は……会議室2が空いてるようですね。そこにしましょう」
坂本さんは持っていた書類のファイルを開き、目を通しながら私に言ってくる。
私に目を合わせないでササッと会社の中に入って行ってしまう。
仕事熱心な方ですね……と思いながらも私は彼女が結構うっかり気質なのを知っている。
エレベーターで3階に上がり、会議室2に入る。
中には簡単な会議用の椅子と机がある。そこに坂本さんは座り、私もその対のところに座る。
坂元さんは書類を慌てて取り出し、私の前と坂元さんの前に置く。
書類には資料が色々書かれており、下には書き込み欄がある。
「えっと……今からアリシア・アンモライトの配信会議を始めます!」
「お願いします」
「今日はこれからの配信でのジャンルを決めていきたいと思います」
そうして私の配信のための会議は始まった。
――――――――――
かわぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?
私、坂本美奈は今、人生の最高潮に達していた。
原因は私がマネジメントしているアリシアさんである。
何を隠そう私は3週間で見事攻略されたアリシアファンなのである。
最初にあったときはまぁ少し清楚な女の人だなぁと思うだけであり、そんなに特別な感情は抱いていなかった。
しかし、ある1つの出来事で私は見事に攻略された。
それはマネジメントをして一週間が経った頃。
私が事務所の機材を運んでる時だった。
「うわわっ!」
私はつまずき、その機材たちを落としそうになった。これはやっちゃったかな……と思っていると
「ッ……大丈夫ですか?」
「え?」
落としたと思っていた機材は私の手元にまだあり、いつの間にか叶さんは私の体と機材を支えていた。
よかった……助かった……とか思っていると叶さんは耳元に寄ってきて……
《気をつけてくださいね》
と言ってきた。
急にその声が来たから私はビクッと体を震わせ、返事をすることができなかった。そのままあぜんとしていると叶さんはニッコリとほほえみ、去って行った。
これがきっかけで私は彼女を好意的に見てしまったのだろう。
《落としましたよ》
「あ……」
《大丈夫ですか?》
「へ……」
《これ持ちますよ》
「み゛……」
それからも彼女には何度も助けられ、その度に私は彼女に惹かれ私は彼女の……
《どうも皆さんこんにちは。今日もご縁が有ったようで嬉しいです》
「ありしあ可愛いいいいいい!!!!」
熱狂的なファンになってしまった。
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