第13話 事前準備
「よいしょっと!」
あのニーリャの一周年記念配信。そして私のデビュー動画の4日後、私は届いた機材の輸送と配信部屋の確保をしていた。
配信部屋となるのは私の寝室の目の前にある部屋。元々は物置として利用していた場所だ。
送られてきた機材はパソコン、Webカメラ、マイク、マイクスタンド、ミキサー、キャプチャーボード、ゲームチェア。
私の部屋は結構
デスクは近くの家具店で買った大きめの木のもの。
それらを運び終わった私は部屋全体を俯瞰して見る。
「……配信機材以外のとこが寂しい気もしますがまぁいいでしょう」
配信のためにあとから何か買うかもしれませんし。
そう思い、配信部屋は取り敢えず完成した。
初配信は今日の夜9時からある。そのためこの前の一周年記念配信の直後には【アリシア・アンモライト】のチャンネルは開設されており、私のスマホと届いたパソコンにはそのチャンネルのアカウントが入っている。
ふと思い、そのチャンネルのページを開く。
「チャンネル登録者数15万人……」
配信もしていないのにこの数いるのか……と思い若干苦笑いをする。
この前に話をされたが、この配信界隈においてGO!ライブ!は一定のブランドを持っている。
普通の個人勢でデビューするよりGO!ライブ!でデビューするほうが認知もされやすく、配信の同時視聴率も上がるそうだ。
こんな感じでGO!ライブ!だから推すみたいなことを箱推しというのだが、新規のメンバーたちはこの箱推しと紹介動画で興味を持った人達が初期の配信に来てくれるそうだ。
あとは色んなジャンルの配信をして、その分野の人達をリスナーにしていくことでチャンネル登録者数も増えていく。
しかし、初期の登録者数15万人というのはいささか多い。
まぁでもこれの理由もわかる。私が異様なデビューをしたからだ。
あんなデビューの仕方をしたらそりゃ注目が集まるに違いない。
トイッターにも【友人デビュー】がトレンド入りしてたし、簡単なネットニュースでも取り上げられていた。
この期待に答えなければならないという気持ちが湧いてくるが、気にしないことにする。
気にしていてパフォーマンスの質が下がったらこの期待を裏切ることになるからだ。
それに今回の配信は1時間半を目安にするつもりだ。だってすることは簡単な自己紹介と質疑応答だけだからね。
「とりあえずこれで機材は全部運び終わりましたかね」
配信機材が入ったダンボールが玄関の前にもうないことを確認し、ドアを施錠する。
腕を伸ばし、大きく背伸びをして少し体をほぐしたあと、目の前のゲーミングチェアに座る。
その時、インターホンが鳴る。
「おっ待たせー!」
インターホンを鳴らしたのは詩織。
私はエントランスのドアを遠隔で開け、詩織を部屋で待つ。
1分もしたら私の部屋のドアのインターホンが鳴り、私は部屋急いで部屋のドアをあける。
「ういー!おっ邪魔しまーす!」
「こんにちは」
今回詩織に来てもらったのは配信の準備を指導してもらうためだ。機材の準備はしたがパソコンの設定とか、ライブはどうやってするのかとからちんぷんかんぷんである。
なので先輩である詩織に来てもらい、事故が起きないように監修してもらうのが賢明かなぁと思ったのである。
「機材届いてるねー!」
「えぇ、さっき届いたのでそれっぽく置いてみました」
「私の部屋に似てるね」
「そりゃあなたの配信部屋しか見たことありませんので」
「そーか」
そう言うと詩織は荷物を部屋の隅に置き、デスク周辺を見回る。
大体見回ってから「うん……大体いいかな」と呟いたと思うと、次はゲーミングチェアに座り、パソコンを起動する。
「ちゃんと正常に起動してるね」
「そりゃ起動してもらわないと困りますよ」
パソコンのマウスを操作し、アプリを開く。
そこには私のアバターであるアリシア・アンモライトの体があり、私がVtuberにデビューすることを更に実感する。
次に詩織はWebカメラを起動し、少し体を動かす。
そうするとアリアの体も動き、詩織と同じ行動をする。
「うん。アプリも正常に起動してるし、カメラとの接続も問題ないね」
「検査ありがとうございます」
「いやいや、友達なんだから当たり前でしょ!」
遠慮するように手を振った詩織はパソコンの動画サイトを開き、アリアのアカウントでログインする。
「ここでライブを開始するの。んで、ここがミュートボタン、くしゃみとか出そうになったらここ押してね」
「ふむ」
そういうと詩織はパソコンを閉じ、こちらに向き直す。
「配信の時はモラルとか国際問題に関わることを話題に挙げるのは禁止!あと初期のころはリスナーいじりも控えること!」
「……私のキャラ上そんなことはありえないと思いますけどね」
「いやぁ?わからないよぉ?」
意味深なことを言いながら詩織がこちらにニヤリと笑いかける。
私はそれに対しため息で答え、椅子に座る。
「これで設定完了ですか?」
「うん。あとは社長からもらったマニュアルに書いてあるよ」
「はい。ありがとうがとうございます」
「それじゃ私帰るね」
そう言うと詩織は玄関の方へ向かう。
私はその後について行く。
「お邪魔しました!」
「ええ。また来てくださいね」
詩織は玄関から出ていく。
私はその後ろ姿を眺めていた。
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