第5話 積極的な先輩

 私はこの前、先輩に一世一代の告白をした。

 ずっと嘘告をしていたのはそのため。

 最初こそは嘘告だと思われてたけど、最終的には受け入れてくれて。前向きに、返事を待つこととなった。

 待っていればいいだけだけど、拒否されるのはいや。

 なので私は積極的に先輩へアプローチするつもりだったが。


「せ、先輩っ。それはダメですよ……」


「桃華ぁ〜。そんなこと言っるけど、本当とのとろはされて喜んでるんじゃないのか? 顔に全部書いてあるぞ……。どうなんだ?」


「こんなことされて嬉しいはずが、はずが、はず……」


「ふはははっ! これは朝のことしかり、生意気に俺をからかった罰だ! このまま俺のお気に入りであるハムスターのスタンプで埋め尽くしてやる!」


 そう、連絡手段であるラインを交換した。

 ちなみに提案してきたのは先輩。私がどうやって切り出そうか、と思っていたとき。

 「そういや学校以外で連絡する方法、電話だけじゃ不便だしラインでも交換しない?」と、なんの躊躇いもなく言ってきたのだ。


 先輩、すごい積極的……。


「このスタンプ、可愛いですね」


「おっハムちゃんスタンプの良さがわかるか。どれ、ギフトしてげよう」


「いいんですか?」


「あぁ。ハムちゃんスタンプを使い、共にこの可愛さを布教しようではないか!」


 積極的だったのって、このスタンプを布教したかっただけとか?


 いやいや。先輩がそんなことするわけないよね。

 だって先輩はかっこよくて、頭が切れるんだもん。


「これでいつでもビデオ通話できますね」


「……え? するつもりないけど」


 先輩はスッと冷めた顔で答えた。


 ぐぬぬ。私がどこまで本気なのか試そうってこと?


「わかりました。じゃあ、ハムちゃんスタンプを布教したらビデオ通話してもらえますか?」


「まぁ考えなくもないな」


 合格みたい。


「でも、注意してくれ。このハムちゃんスタンプは一定層忌み嫌う謎の人種がいるからな。もしそいつらと出会ったら、迷わず逃げることだ」


 合格だったのは嬉しいけど。


 こうやって先輩が私に先輩らしくされると、ついからかいたくなっちゃう。


「その人たちに布教せず逃げちゃうんですね。わかりました」


「…………逃げないとだめ、なんだ」


「へぇ。「一緒にを布教しよう」だなんて言いながら、逃げるんですか」


 ちょっと煽るとすぐ先輩の顔が負け顔になった。


 出会った最初の頃は対抗して煽り返してきてたけど、最近はすぐこの顔になっちゃう。

 私としてはもっと色んな顔を見たいんだけど。

 最近じゃ、私の方が色んな顔見せてる気がする。


 あ。色んな顔をさせるいい方法思いついた。


「なぁ桃華。勘違いであってほしいんだけど、なんでそんな悪巧みを考える人みたいな顔してるんだ?」


「ふっふっふっ。しばらくは周りにいる人に気をつけることですね、先輩」


「まじで何するつもりだ!?」


 絶対、デレデレしてる顔見てやるんだから!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る