第17話 ごめんなさい
『アル!!』
焦った様な声でレオンの念話が僕の頭の中に響いた。僕は一旦、伯爵達から離れ、レオンに念話をする。
『どうした?』
『コレットとサーシャが捕まった!』
「なに!?」
僕の叫び声に、クラーク伯爵が「どうした?」と声を掛けてきた。オルガルドも困惑顔でこちらを見ている。
『乗合馬車の整備場で捕まったと、サーシャから念話が来たんだ!』
『分かった。僕は伯爵とオルガルドさんを連れて、今から整備場へ向かう。サーシャと常に連絡を取って。他の場所へ連れて行かれてないか都度、教えてくれ』
『分かった。俺はどうする?』
『そのままコナーさんを見張ってくれ。何か怪しい動きがあれば報告を。僕も何かあれば報告する』
『了解』
二人には、僕が黙ったままに見えるせいか、酷く訝し気な表情で見られていた。
僕は二人に近寄り交互に見る。
「今、僕と契約している神獣から念話が入った。コレットがある者に捕まった」
「なに!?」
「一体、どこで! 誰に!?」
「乗合場所の整備場だ。二人とも、僕と共に来て頂きたい」
二人は互いの顔を見合わせ、分かったと頷いた。
そして、僕らはクラーク伯爵が乗って来ていた馬車に乗り、整備場へと急いだ。
***
『コレット様、ごめんなさい』
アタシは、情け無い気持ちで閉じ込められた籠の中からコレット様に声を掛けた。
「大丈夫。レオン様に知らせてくれたんでしょう? なら、すぐにアレックス様が来てくれるわ」
『でも……。アタシ……』
「サーシャ。もし、あそこでサーシャが出て行かなかったとしても、きっと私が出て行っていたわ。そしたら、今みたいに捕まっていた。だから、サーシャのせいじゃない。アレックス様に約束したのに勝手に出て来た罰だわ」
『コレット様……』
コレット様は、後ろ手に縄で結ばれている様で、さっきからゴソゴソと動いている音だけが聞こえる。
アタシは、網で編んだ籠の中に入れられて、蓋を閉められていて、外が見えないでいる。ほんの僅か、隙間があるけど、殆ど見えていない。
どうにかもう少し穴を大きく開けられないか、爪で網を引っ掻くけど、全然壊れない。泣きそうになったいるアタシの頭の中にレオン様の声が響いた。
『サーシャ、聞こえるか?』
『レオン様!』
『いま、どんな状況か教えてくれ』
『いま、アタシは網の籠の中に閉じ込められてて、外が見えないです。コレット様は近くに居ます。でも、縛られているみたいです』
『周りが見えないのか……コレットに周りがどうなっているか、聞いて教えてもらえないか』
『はい! 聞いてみます!』
アタシは網の隙間からかろうじて見えるコレット様の足を見て、声を掛ける。
『コレット様、いま、この部屋の周りが見えますか? レオン様がどんな状況か教えて欲しいと』
「ちょっと待ってね。まず、この部屋のには工具が沢山あるわ……。あと、ここから見えるのは……左手側に小屋が見えるわ。多分、いま私達が閉じ込められているのは、整備場の裏にある小屋の横にある物置よ」
『わかりました! 伝えます!』
「お願いね」
『はい!』
アタシは、すぐにレオン様に場所を知らせると、レオン様はアレックス様に繋げると言ってくれた。
『コレット様、アレックス様がいま、ここに向かってくれてるそうです!』
「そう……良かった……」
心底安心した声でいうコレット様に、アタシはやっぱり申し訳ない気持ちになって反省した。
すると、物置のドアが急に開いた音がした。
「さっきから、話し声が聞こえているけど、何を話しているのかしら? もしかして、猫ちゃんに不安な気持ちでもお話ししていたのかしら?」
この声は、あの受付の女! グレースって人だと分かった。
「使い魔、とか言ったかしら? でも、まだ幼いみたいだし。手紙を届けるくらいしか、お手伝い出来ないみたいだし。頼りない相棒で可哀想に」
その言葉に、アタシは一瞬、目の前が真っ暗になった。本当のことだけど、改めて他人に言われると、ショックだった……。
だけど……。
「私の大切な家族を侮辱する事は、やめてください!」
「ふふ。侮辱じゃなく、本当の事じゃない。助けも呼べない、主人を助ける魔力もない。役立たずの、ただの猫ちゃん」
「サーシャは役立たずじゃない! 何も知らないくせに! それ以上、私の家族を侮辱しないで!! 私はあなたを許さないわ!」
コレット様……。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……役立たずで、ごめんなさい……。
「縛られて、杖も奪われているのに、何が出来るかしらね? 西の魔女様?」
アタシは泣きそうになるのを堪えて、心の中で叫んだ。
『レオン様! 早く来て! お願い!! コレット様が……コレット様が!!』
すると、倉庫がガタガタと揺れ出した。その揺れは徐々に大きくなり、大きな音を立てて小屋が軋む。そして、ガラスが割れる音が部屋に響いた。
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