第58話 最強の騎士団
会議室を出ると、ザッカーサ団長とズベルフ副団長が待ち構えていた様に立っていた。
「血を流さない討伐とやら、実現出来るのか?お前達の腕に我が国の命運が掛かっている。失敗は許されない。口だけなら、さっさと撤回してはどうだ?」
無視して通り過ぎようとした私達の前に、ザッカーサ団長が通路を塞ぐ様に立つ。
「国の命運が掛かっているからこそ、俺達は必ず実現させて見せますよ」
エバンズ団長が落ち着いた静かな声で言う。
「魔獣が大挙襲来しても、そう言えるかな?」
「やって見せますよ。それが俺達の仕事だ」
「良い心掛けだ。ただし、心掛けだけではどうにも行くまい。失態は許されない。まぁ、精々頑張る事だな」
会話に割り込む様に深い溜息が響く。ズベルフ副団長だ。
「団長ぉ……俺達も作戦会議行きますよ? コイツらが失敗したら、俺達が尻拭いする羽目になるんですからぁ。こんな所で遊んでる場合じゃ無いですよ?」
その言葉にマーカスさんが再び頭に血が上り、「黙って聞いてればテメェ!!」とズベルフ副団長に詰め寄ろうとしたその時。
見計らった様に鐘の音が響いた。
『砦から南方に二十頭近くの魔獣の群れを確認。手の空いている者は配置に付け。繰り返す……』
「……早速、お出ましですか。テメェの相手はまた今度だ。首洗って待ってろ!」
マーカスさんが不敵な笑みを浮かズベルフ副団長を睨み付けると、一番に走り出す。
「腕が鳴りますねぇ、魔獣討伐もキミとの腕試しも」
カーター副団長が楽しげにズベルフ副団長の横を通り過ぎながら言えば
「カーターさん、どう調理しますか? 私はやっぱりカーターさんの氷漬けが一番だと思うけど」
どちらに対しての氷漬けか分からない言い方でレイモンドさんが片腕を回し肩を解すような仕草をし、マーカスさん達を追う。
ザッカーサ団長の横を無言で通り過ぎようとした私に「お前はヒューバートの子供だったな。生意気な口調は親父そっくりだ。あれだけ大口を叩いたんだ。その実力を見させてもらうぞ」と言った。
私はザッカーサ団長を一瞥すると「失礼します」と通り過ぎる。
「精々、悪足掻きする事だな」
ザッカーサ団長がニヤけながら言う声が背中に当たる。
「えぇ、そうしますよ」と、エバンズ団長は無表情で応えて、ザッカーサ団長の脇をすり抜ける。
前を走る仲間が、それぞれが自身の得意な魔術でどう討伐するか話す姿を、私は後ろから走り着いて行きながら聞いていた。
「大丈夫だ」
隣でエバンズ団長が言う。
「ガブレリア王国以外で、俺達が何と呼ばれているか知っているか?」
少し前屈みになり小声で訊ねて来るので、私は小さく首を横に振る。
「ガブレリア王国最強の騎士団、だ」
エバンズ団長を見上げると、彼はニッと口角を上げた。
「それに、今は神獣様も一緒だから無敵だな」
と言って私の頭をポンポンと軽く叩くと、前を急ぐ皆さんに大きな声で言う。
「みんな! 俺達の本気を、見せ付けてやろうじゃないか!!」
その声に、「おぉ!!」と腹の底から出す気合いの入った声が揃い、低く響いた。
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