第39話 希望の光
『アリス、そろそろ砦が見えるぞ』
目の良いレオンが顎をクイっと上げて方向を示す。私は目を凝らして見つめるが、まだ深い木々の様子以外、見てとる事は出来ない。
「あと少しね。砦はどんな様子かしら」
言った途端、遠く離れた前方で、鳥達が一気に森から飛び立つ姿が見えた。
『砦付近だ! 何か起きてるぞ』
「急ぎましょう!」
私は身体強化魔法を掛け、剣の柄に手を添える。
『アリス、俺がついてる。無茶だけはするなよ』
「わかってる。レオン、お願いね」
『あぁ。速度上げるぞ』
「えぇ! 行きましょう!」
砦上空に着くと、地上では魔獣が群で襲い掛かって来ていた。騎士も兵士も苦戦している様子を見ると、恐らく狂化した魔獣だろうと思った。ざっと見渡したが、フィンレイ騎士団の姿は見えない。
「レオン、もう少し高度を下げてもらえる?」
『了解』
剣を抜き、魔力を流す。
「皆、退がって!!」
上空から大声で叫ぶと、何人かの騎士が気が付き「全員、退がれ!」と叫んだ。
「ガオォォォォ」
レオンが地鳴りの様な低く響く声を上げると、魔獣が怯んだのが分かった。
『アリス、今だ!』
「ありがとう!」
私は思い切り剣を薙いで範囲攻撃魔法を放つ。続けてレオンが大きく一鳴きし稲妻を落とすと魔獣の殆どが痺れ倒れた。
攻撃を逃れた魔獣が興奮し暴れ出す。再びレオンが低い声で呻くと、暴れていた魔獣が怯み地上にいる騎士達が一斉に攻撃をした。
私達は少し高度を上げて、上空から目を凝らし、見落としていないか確認する。
『アリス、森の方から何か気配がする』
「フィンレイ騎士団かも。行ってみましょう」
レオンは翼をバサリと大きくひとかきすると、森へと向かった。
森の奥へ近づくと、いつくもの閃光が見てとれた。
「ブラアイン! ロブの魔法陣に沿って地属性魔法で壁を作れ! カーターとレイモンド! 光属性魔法と音属性魔法で壁際へ追い込め! マーカス! 火属性魔法で一気に片をつけるぞ!」
エバンズ団長の指示に、男共の野太い声が「おおう!!」重なり響く。
あちこちに散らばっていた十数頭いる魔獣をあっという間に一箇所へ集めたかと思うと、連携された美しい陣の華がいくつも咲く。
私は、その美しさに言葉を失った。
『大丈夫そうだな』とレオンが言う声に、我に返る。
「そうね。先に砦へ戻りましょう」
私達が北の砦の上空へ戻ると、地上から大きな歓声が聞こえて来た。
「アレックス・ランドルフが神獣様を連れて戻って来たぞ!!」
「ランドルフが帰って来た!!」
皆、口々に歓喜の声を上げながら両腕を上げて私達に向かって手を振っている。
『すごい歓迎だぞ。大丈夫か? アリス』
「う〜ん……。バレないように頑張るっ」
『……不安しかない……』
レオンの呟きは聞かなかったことにしよう。
だって、私自身が一番、そう思っているのだから---。
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