閑話 レオン・ライラックの秘密
第25話 神獣狩(レオンside)
※今回はレオン視点です。
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俺とアレックスが出逢ったのは、今から十年前。
神獣としては、まだまだ赤児同然だった俺は、祖父さんに育てられていた。
両親がどうしているのかは、分からない。物心ついた時には、側に居たのは祖父さんだけだった。
いつもの様に、祖父さんとの手合わせが終わった後、その当時お気に入りだった花畑へ向かった。
日差しが柔らかく、穏やかな昼下がりだった。
森の中には、殆ど人間は入り込まない。時々、魔獣狩りに入り込む輩もいたが、だいたいが反対にヤられて、餌にされて終わりだ。
俺達、神獣は、そんな野蛮な生き物では無いため、食事はもっぱら木の実か花々だ。
最近のお気に入りの場所は、祖父さんには絶対秘密の場所だった。
なぜなら、その場所は人間の張った結界近くで、魔獣狩りも多く出ると言われていたからだ。
それでも、最近は人間くらいなら倒せるくらい、ちょっと強くなって来たと、若干自惚れがあったため、祖父さんの言い付けを無視してやって来ていた。
頻繁に通っていたせいか、人間たちの間で「神獣の子供が現れる」と、噂が流れていたと聞いたのは、随分と経ってからアレックスが教えてくれた。
愚かな人間達は俺を捕まえて、オークションに掛けようとしていたという。
そんな事とは露知らず、俺はいつもの様に花畑へやって来た。
花畑には数本、花が咲く木があり、その下で寝るのがお気に入りだった。
いつもの通り花の咲く木の下で横になり、たまに地面に咲く花を食んで、日の光を浴び、のんびりと過ごしていた。
いつの間か眠っていたのか、突然、後脚に激痛が走り、俺は飛び起きようとしたが、起き上がれなかった。
何が起きたのか分からず藻搔いていると、人間の声が聞こえてきた。
「おい! あまり傷を付けるなよ! 価値が下がっちまう」
「そうは言っても……! コイツ、チビの癖に、力が……凄い……!」
どうにか起きようと暴れていたら、不意に首元に何かが刺さったような気がしたと同時に、急に全身の力が抜けて行った。不思議なことに、目は見えるし、耳も聞こえている。なのに、身体は動かない。頭の中はもう大混乱だった。
「ったく! 手間かけさせやがって」
「最初から麻酔打っときゃ良かったんですよ」
そりゃちげぇねぇと、男達が汚い笑い声を上げていると、「何をやっているんですか?」と声を掛ける者がいた。
「なんだぁ? 随分と身なりのいい坊ちゃんじゃ無いか」
「おい、坊主よ。お前、魔力持ちか。こんな森の中に入るのは良く無いぞ? 魔獣に襲われて、あっという間に喰われぞ?」
「あぁ、悪い事は言わねぇから、さっさと帰んな」
男はどうやら三人居たようだ。
リーダー格の男が男児に近寄り、森から追い出す様に背中を押した次の瞬間、そのリーダー格の男が宙返りして倒れ込んだ。
「え!? なんだ、なんだ! どうしたんだよ、急に!」
俺を抑え込んでいた男が、慌てた様に立ち上がって、倒れた男に近寄ろうとした時、再びその男も宙返りして倒れ込んだのだ。
何が起きているのか混乱中の俺は、ただただ情け無くも動けないまま、耳だけを澄ませていた。
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