第23話 秘密の報告(お父様side)
※今回は、まさかのお父様視点です。
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コンコンコンと控えめにドアを叩く音がし、私は「入れ」と声を掛けた。
エドワードが何か言い伝えようと戻って来たのかと思ったが、入ってきた人物を見て僅かに驚いた。
「レオン、どうかしたか?」
「旦那様、さっきの祖父さんの話で、伝えておきたい事があるんだ……」
何処までも純粋で優しい目をした青年を、私は見つめ話を促す。
「祖父さんは、アレックスがもし魔眼を持っていたとして開眼していないだけなら、アリスにも、その素質はあるかも知れないと言っていたんだ」
レオンの言葉に私は目を見張る。
「アリスにも? しかし、あの子はアレックス程の魔力はないが……」
「それでも、旦那様よりはある」
「まぁ、それは確かにそうだが……」
はっきりとした物言いをするレオンに、私は苦笑いを返す。
「祖父さんは、アレックスとアリスの魔力を合わせると、お互いの足りない部分を補い合う事が出来る。そうなると、二人同時に何かをする事によって、魔眼が開眼するのでは無いかと言っていたんだ。それに……祖父さんは、大きな物事が起きる前触れだと言っていた。俺も最近、妙な気配を感じる時がある。今朝、ルーラの森の精霊達も、何やら騒めいていたんだ……」
「なるほど……。レオン、その話を何故さっきしなかった?」
レオンは小さく肩をすくめ、くすりと笑った。
「だって、それを聞いたらアリスが暴走するでしょう?」
「くくっ……。まぁ、確かにな。アレは何を思い付くか分からん……。レオン、お前に頼みがある」
笑いを止め、真剣な面持ちでレオンを見据える。レオンは黙ったまま私を見つめかえす。
「本来なら、お前が誰よりも早く北の砦へと向かいたかったであろう事は、十分承知している。それを、下調べする事を優先してくれた事、感謝している。……頼みというのは、アリスの事だ。間違いなく、近いうち北の砦へ行こうとするだろう。その時は、アレを一緒に連れて行ってやってくれないか?」
「……いいのかよ、本当に。アルが居ない今、俺はこの姿のままで行く事になるんだぞ?」
戸惑いながら私を見る目は、不安が見える。
「……アリスは、常々アレックスを魂の片割れだと言っているんだ」
「あぁ、子供の頃からよく言ってた」
私は一つ頷き、話を続ける。
「あの二人にしか分からない、心の機微があるやも知れん。アレは思い立ったら後先考えず動くからな。その時は、アリスを助けてやってはくれないか? お前がアレックスの親友である事は充分承知の上。だが、アリスの事も守ってはくれないだろうか」
頭を下げ、願い出る。アレはお転婆を通り越している。魂の片割れが消えたのだ。必ず、予想外な行動をする。それを、誰が止められよう。
「……アルと契約する時に、約束しているんだ。アルが大切に思う人間を、アルと変わらず護ることって。だから、アリスの事はちゃんと護るよ」
「そうか……。ありがとう、レオン」
心の底から安堵し、レオンに礼を告げると小さく微笑みが返ってきた。
「だがな、レオン。私にとって、お前の事もアリスやアレックスと同じくらい、大切な存在だ。お前達は、いわば三つ子の様なものだ。お前の事だ、アレックスやアリスの命に危険が及べば、真っ先に矢面に立とうとするだろう。が、頼む。私も二人が悲しむ結果は望まぬ。どうか、必ず生きて帰って来てくれ。いざと言う時は、二人を連れて全力で逃げろ。いいな? レオン」
その言葉に、レオンは呆けた顔からクシャリと歪み、困った様な泣き出しそうな、そんな笑顔を見せた。
「……逃げろなんて言っていいのかよ。……でも、ありがとう、旦那様。俺も旦那様のこと、大事な人間って思ってるよ」
レオンの温もりを感じる言葉に、胸が熱くなる。
「まぁ、でも。アリスのお願いは一度は断るよ。直ぐ了解すると調子に乗るから」と、レオンは楽しそうに笑い、その言葉に私も声を上げて笑った。
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良かった、覗いてみてください。
https://kakuyomu.jp/users/seiren_fujiwara/news/16817330656551381815
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