第17話 魔女の企み2(オリバーside)


「アル!! アル!!!! 離せっ!!」


 目の前で倒れたアレックスを見て、俺は全身ザワリと粟だった。

 羽交締めにする兵士を上半身のみで暴れ、振り解こうとするが、足が拘束されて踏ん張りが効かない。


「この子は私が貰っていく。お前は精々喰い殺されないように頑張ることだな」


 魔女が顎で兵士に合図すると、一人がアレックスを担ぎ、もう一人が俺が倒した三人を起こす。兵士がアレックスを囲む様に一箇所に集まると、魔女は何かを呟き手を振り翳した。

 兵士の足元に魔法陣が浮かび上がり、全員が消えた。


「アル!! アレックス!!!!」


 上半身を捻る様にして動こうとするが、足元はビクともしない。歯痒さに苛立ちながら魔女に目を向けると、愉しげに笑う目とかち合った。


「アレックスをどうするつもりだ!」

「お前はあの子の心配をするより、自分と他の仲間の心配をする事だ。どうなるのかねぇ? 本当に楽しみだ。ガブレリアが誇るフィンレイ騎士団が全滅する姿をきっと皇帝様もご覧になりたかっただろうに」


 魔女の言葉に、今回のバイルンゼル帝国は、本気でガブレリア王国を落とす気でいると、俺は確信した。


「皇帝!? やはりバイルンゼルが噛んでるのか!!」


 俺の問いに魔女は何も応えず、声高らかに笑う。


「お前達の最期を看取ってやりたいが、私も暇じゃないのでな。餞別として、足枷だけは解いてやろう。じゃあ、最期の悪足搔き、頑張る事だな。さようなら、騎士団長」

「…ッ! 待て!!」


 黒い煙が魔女の足元から湧き出ると、魔女を包み込み姿が消え、俺の足枷と赤黒い石が消えた。

 藻搔いていたので突然自由になった足が勢い付いて、俺は前のめりに膝をつく。魔女の消えた跡を睨み付ける。悔し紛れに地面にドンと拳を突くと、魔女の立っていた場所から尖った岩が突き出た。


 グルルル……


 ハッと我に返り、辺りに集中すると魔獣に囲まれているのに気が付く。


「ハッ! 俺を……俺達を舐め腐って。やってやろうじゃねぇか……。アル、待ってろよ。必ず俺達が助ける!!」


 俺は火魔法で緊急を知らせる花火を打ち上げた。


 さて、俺一人でどのくらい持つか。


 四方八方から魔獣が飛び掛かって来たのを、俺は火魔法で蹴散らす。立ち上がり、剣を握り締めると、ニヤリと片方の口角だけ上げた。取り囲んだ魔獣は大きな角を持つ一角獣。見えているだけでザッとニ十匹前後。どうやら狂化した奴ばかりだ。


「来い! 全滅させてやるよ!!」


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る