第5話 わたくし、強いんですのよ?
エバンズ団長は少し声のトーンを落とし、続きを促した。
「なるほど。では、その活躍とは、どういったもので?」
意外だ。
馬鹿にすると思ったら、エバンズ団長は少し驚いた顔をしながらも、興味を示すように身体を僅かに前のめりにした。私は若干、戸惑いながらも私の夢を語った。
「例えばですけれど……今現在の我が国では、騎士団も魔術師団も男性のみで構成されておりますでしょう? しかし、女性でも訓練を受ければ、騎士団や魔術師団に入団出来る日が来るやも知れません。そのための育成支援を行なって、いずれ女性自身が自分や家族、国を守る事が出来る日が来ればと思っておりますの」
私は、今までずっと考えていた事を口にする。
貴族女性に限らずだけど、女性だって婚姻が全てでは無いと、私は思っているのだ。
もし、私がフィンレイ騎士団に入団は無理だとしても、魔術師団に入団出来たらアレックスの力になれるのに……。
確かに、アレックスは騎士団で活躍はしているが、あの心根の優しい兄を、後ろから支えてあげたいと、ずっと思っていた。
アレックスとエバンズ団長が所属しているフィンレイ騎士団は通常、魔獣討伐を主としているが、時として対人間との闘いに駆り出される事もある。
隣国で熾烈な闘いをして帰還した後のアレックスは、それはそれは見るに堪えない悲壮感を漂わせて、数日部屋に篭る。
双子だからこそなのか、アレックスの心の痛みが、私の胸の奥に流れ込んで来る事がある。
アレックスの少しでも近くにいて、その心を少しでも守りたい。最初のきっかけは、それだけの気持ちだったけど、今はまたちょっと違う。
貴族社会に生きる女性達を見ていて、もっと外の世界へ出てみたいと密かに思っている令嬢は、私以外にも少なからず居るのだと茶会などで知ったから。
「女性の魔術師団か……。それは、治癒を主にしたものとか……そういうことかな?」
エバンズ団長の答えに、私はキョトンとして首を傾げた。
「いえ……? 治癒ももちろんですが、討伐も致しますわ」
今度はエバンズ団長が瞳を瞬かせた。
「討伐も……ですか? ……しかし……女性は残酷な事は苦手では? 血に汚れ、とてもでは無いが、その場に立って居られないのでは?」
エバンズ団長は戸惑いながら言う。
「あら、それは偏見ですわ。女性は殿方が思うより、強いですわよ? その証拠に、私は時々、森へ行きますの」
今度こそエバンズ団長は目を見開き、口をぽかんと開け「森、へ……?」と呟いた。
「えぇ。私、こう見えても、強いんですのよ?」
ちょっと小首を傾げていうと、エバンズ団長は口を黙、何とも言えない顔で私と同じ様に小首を傾げた。
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