第8話 魔女の魔法陣


 私は「そう」と一つ頷き、話をはじめた。


「ほら、覚えてない? 以前レオンのお祖父様から、隣国には魔女が居るという話を聞いたことがあるでしょう? 魔女達は、私達とは違う魔法を使うと……。古代魔法でもない、


 【魔女】は、ガブレリア王国には、存在しない。女性が魔法を使えるから【魔女】と呼ぶのだというなら、私もそうなるのだけれど。そもそもが、この国に【魔女】【魔法使い】という表現そのものが、ない。

 それに、隣国の【魔女】達と、私達の魔法は、どうも全てが違うのだ。

 レオンのお祖父様の話によれば、彼女達の使う魔法は私達の国には無いものが多い。その魔法は魔女の家系に代々伝承されるそうで、隣国の人間であっても、魔女の親族以外に知る者はいない。外部に漏れる事はないのだと、聞いた事がある。だからこそ、未だに隣国の魔女について、謎が多いのだ。


 アレックスは何かを考えるように視線を落とし、数回瞬きをすると「あぁ……そう言えば……」と思い出し、再び私に向けた瞳が光る。


「確かに、その線があったね。僕とした事が、すっかり忘れていたよ……。そうなると、やっぱり今回は転移門を使用しないで行った方がいいのか……」


 後半、独り言のようにいうアレックスに、なぜ? と訊ねると


「転移門で行ってしまうと、やはり細かい箇所まで確認出来ないからね。とにかく、アリス、いいアドバイスをありがとう」

「ううん。ねぇ、アレックス、もし私に何か出来る事があったら、いつでも念話してね? 私達二人だからこそ、出来る事があるんだから」


 そう、双子だからこそ。


「わかったよ。いつもありがとう。多分、今回は野営になるだろうから陣地に到着したら、必ず念話する。アリス、王都にはエドワードが居るし今回はレオンを連れて行かないから安全とは思うけど、何かあったとしても、、無茶はしないでね?」


 アレックスは目に力を込めて私の顔を覗き込む。絶対にって、強調したわね……。


「…………もちろんよ」


 にっこり笑って見せるが、「なに? 今の間は?」と、私の頭を両手でガッチリ固定する。更に目力が入るものだから、私は慌てて返事をする。


「はい! 約束します! だからこそ、アルもちゃんと連絡してね! 約束!」

「言質、取ったからね」


 満足そうにニッコリ笑顔を返すアレックス……。時々、ごくたまに……こう、何というか……圧が……。普段、穏やかだからこそ、迫力がある。


 そして翌日。

 アレックス達は北の砦へと旅立った。

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