第3話 誕生日会(という名の婚約者探し)
遡ること、数週間前-----
私とアレックスの十九歳の誕生日会を邸で行っていた。
今回の誕生日会には裏テーマがある。
それは私達の婚約者探し。
とくに、私の。
社交界デビューしてから、それなりにお話はあったけど、どの殿方も私の思い描く未来の女性像に難色を示す方が多かった。そして、何故かエドワードお兄様が色々と横から口出ししてくるものだから、御縁が繋がらなかった。
まぁ、私はまだ婚姻に興味が持てなくて、全くもって気にしていないけれど。
来賓に一通り挨拶を終えた私は、早々に食事に目を向けて吟味する。
立食パーティーなので、ひと口サイズの料理が多く、色んな味を楽しめることにワクワクしていると。
お父様が私を捕まえ、そろそろ本腰を入れて婚約者探しをする様にと耳打ちしてきた。
そんなお父様に私は、「えぇ〜。私より弱い人なんて無理ですぅ」と言いながら、カナッペをひと口に頬張ってもぐもぐする。
「またお前はっ! そんな大口開けて! はしたない! 今日くらい、もう少し淑女としての振舞いをしなさい!」
「だってぇ、ここに来ている令息の皆様方ぁ、どう見ても私より弱そうだしぃ。私は興味無いのにぃ、何だか思わせぶりなのはぁ、やっぱりぃ悪いじゃ無いですかぁ」
間延びした頭の悪そうな話し方を敢えてすると、お父様は私とアレックスと同じ青紫色の瞳を釣り上げ、怒りで顔を赤くしつつ口元は笑顔を作る器用な表情で「その阿呆な言葉遣いは、今すぐ止めなさい」と呻きながら言った。
アレックスを見遣ると、既にご令嬢達に囲まれている。
一見、細身に見えるが近くで見ると意外とガッシリした体型に、凛々しさがありつつも美しい微笑み。柔らかな物腰でゆったりと話すアルトの声は暖かで、思わず聴き惚れる。
争い事が嫌いで、小さくて可愛いものが大好きで、甘い物に目がない。
あの凛々しさからは、そんな事を想像する令嬢は、まぁ、いないであろう。
騎士は実力主義の世界で、いくら家柄が騎士の家系とはいえ、それなりの力が無ければ認められない。
そんな世界で、心優しいアレックスがやって行けるのかと入団当初は心配もしたが、私の心配など皆無で。アレックスはしっかり騎士団の中でも、その有り余る魔力を活かして実力を発揮していた。
だからこそ、次期騎士団長とも言われるアレックスの周りには、どこへ行っても多くの蝶が舞う。
アレックスは、あの中から婚約者を選ぶのかしら。
ぼんやりと思っていると、私に声を掛けてきた人物がいた。
「ランドルフ侯爵令嬢、お久しぶりです」
振り向くと、そこには騎士団の正装をした
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