第1章 ランドルフ侯爵家の人々
第2話 ランドルフ侯爵家の人々
私達の国、ガブレリア王国には二つの騎士団がある。
ひとつは、王族や要人の警護や街の警備、非常時(隣国との戦闘があった時)は、戦闘部隊となる、ハルロイド騎士団。
基本的にはハルロイド騎士団が王国を守る騎士団だが、もうひとつ、特別な騎士団がある。
魔獣討伐を専門とする騎士団。
少人数制の精鋭部隊で、なりたくてなれる騎士では無い、選ばれし者の集団。
それが、フィンレイ騎士団だ。
我がランドルフ侯爵家は、このガブレリア王国が建国した時代からの名家。王都の中でも随一と言っていい、長きに渡り魔獣討伐を担ってきた騎士の家系で「影の王の盾」とも言われている。
フィンレイ騎士団自体、ランドルフ侯爵家のご先祖様が創設した騎士団ではあるが、そこは忖度無しの実力社会。
代々侯爵家は魔獣討伐専門の精鋭部隊・フィンレイ騎士団の団長に登り詰めるほど魔力の高さを誇っており、お父様も元は騎士団長をしていたがアレックスが入団したと同時に引退をした。
そして次期騎士団長も兄のアレックスがなるであろうことは周知の事実である。
ランドルフ家には三人の子供がいる。
長男のエドワードお兄様、そして私、アリスと双子の兄アレックス。
長男のエドワードお兄様は、周りと比べれば魔力量は多いけど、アレックスほどでは無い。ベージュ色の髪に青緑色の瞳を持つお兄様は、明るく気の良い性格のためか、多くの領民に好かれている。
次期侯爵として父に付いて領地運営を手伝いつつ、魔術師団で魔術の研究や王都に結界を定期的に張るなどしている。魔力量としては私の方がちょっと多いから、私だって本来ならば魔術師団に入れる可能性はあるはずなのだ。
そして家族の中でも一番の魔力を持つ次男のアレックス。
魔力量だけで言えばガブレリア王国でも一番で、魔力制御がまだ下手だった子供の頃は使用人やお友達が魔力酔いする程だった。まぁ、それを言えば私もなんだけど。そもそもランドルフ侯爵家の人間は魔力量が多いため、子供の頃にまず、魔力を制御するための訓練を受ける。その辺は私の方が割と上手で、レオンと出会う前のアレックスはよく暴走していたわね……レオンと出会ってから、お互い切磋琢磨してグンと成長したけど。
そんなアレックス。素材は私と同じく、ふんわり癖のあるホワイトブロンドの髪に青紫の瞳だが、そこに凛々しさが備わった美丈夫で、市井では騎士団姿の絵姿が売られているほど人気だ。
ただ、ひとつ残念と言われているのは、百八十前後が平均身長と言われる男性騎士としては若干……まぁ、一般のご令嬢達(平均身長は百五十五前後)よりは高い方だけど……とにかく低いのだ。
女性としては上背のある私(百六十五くらい)と、ほんの少しの違いなだけで、大して変わりない。ちょっと目線の高さが上かなぁくらい。因みに、私がヒール履くと同じなの。
……まぁ、お察し下さい。
本人も気にしているようで、自身よりも背の高いエドワードお兄様や親友であるレオンとすれ違いざまに、こっそり背丈の確認をしたり、身長が伸びるといわれる「何か」があれば、怪しかろうが何だろうが、密かに取寄せて試しいてるのを私は知っている。
薬の調合が得意な私は、そんな怪しいモノを取り寄せるより、相談してくれたら良いのにとも思うが、敢えて何も言わずにいる。
そんなアレックスは元々とても物静かな性格で、とにかく常に穏やかで優しい心の持ち主。子供の頃はいつも私の後ろに隠れるような子であった。
逆に、私はよく言えば天真爛漫。ちょっとだけお転婆だったものだから、侍女達が毎日大袈裟なくらいゲッソリ疲弊するほど「何かしら」やらかして、両親は私達がなぜ逆の性格で産まれなかったのかと、事あるごとにに嘆いていた。
そんな私、妹のアリスを窘める事を両親は早々に諦め、幼少期からアレックスと共に魔法の扱い方の練習も兼ねて、魔術や剣術の訓練を受けさせたおかげで、今では淑女とは思えない程の戦術や戦闘能力に長けている。
そして、それらを考えるのが趣味なのだ。
ひとり、机に地図を広げ想像する……。新しい魔法陣を考えたり、戦術を考えたり。時にはレオンを無理矢理引き連れて、こっそり森へ行き、実際に魔獣を相手に闘い、一人鍛錬をし、自分の考えた術を磨き上げてきた。
まぁ、それを披露する機会はなかなか無い……というか、一生来ないだろうと思っていた。
つい、数週間前までは。
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