閑話 ちょっとした場面

 商店街の北東、拠点にしたレストランから遠く離れた道にて、一人の男が体を丸めて息を潜めていた。

 彼はドリル男の猛威に怯え、死んだふりをしている警察官だ。

 彼は未だに極限まで呼吸音を抑え、今も尚死んだふりを続けていた。

 逃げようと思っても足が竦んで立つ気になれない。もうこのまま死んだふりを続けた方がマシだ。

 そう思った彼は静かに……沈黙を貫いて……只只無言で壁の近くで横になっていた。


「…………」


 まあ、そうは言っても暇だ。無茶苦茶怖いけど暇だ。あと微かに尿意が込み上げて来ている。

 この姿勢のまま尿を垂れ流すのはちょっと嫌である。


「…………んン」


 いやしかし、もし立ち上がって便所を探そうとして、敵に見つかったら終わりだ。

 このまま尿を垂れ流した方がいいのかもしれない。


「…………」


 そうやって諦めがついた瞬間、ふと遠くで空を切るような音が聞こえてきた。

 しかもそれは何度も何度も切るような音だ。


「?」


 何だと思い音の方へゆっくりと目を向けると、遙か遠くの空で黒い点が四つ程見えている。

 それは小さかったものの徐々に大きくなっていき、そして姿形も鮮明になっていった。


「…………??」


 それ見た男は困惑の表情を浮かばせていった。

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