第21話 モンチ
※グロテスクシーンあり(レベル弱) 苦手な方はご注意下さい※
悶々と涙を飲み込み続ける内に青年は森に踏み入っていた。
黒くグネグネと湾曲する木々と時折響く不気味な鳴き声は、まるで悪夢の中のワンシーンのように不気味で鳥肌の立つものだった。
カサ…
「しーっ!」
「!」
アップルが口にタコ手を立て静かにと促してきて、ようやく青年の意識が戻ってきた。
ハッと狩りに来ていたことを思い出し慎重に辺りを観察してみると、虫があちこちを飛んでいてなんとなく獣臭く感じた。
その臭いや森の雰囲気は、『本当に狩りに来ているんだ』と実感するに充分だった。
アップルは枝の少ない場所を進むように指示をしながら、「最初は見ててね?」と小さな小さな声で囁いた。
「危ないから。」
「…でも。……あのさ、ここには何を狩りに?」
「モンチ。」
『でたー。』と眉をヒクつかせた青年。
初めてのファンタジナフーズ『モンチ』と、ついに対面の時である。
チェリーは辺りを慎重に窺っていて…。
メロンは鼻をフンフンと上げ匂いを追っていて…。
いよいよ青年は本格的な狩りを感じた。…だが、当然青年は狩りなど経験したことはない。
(え。狩りってどうやってやるんだ!?)
皆を見てみたが、武器すら持たず生身だ。
まさかこんなに弱そうな生き物達が(※失礼)、生身でモンチなる生物に立ち向かうなんて…。
正直無謀に感じた。
(いや待てよ。彼らだってファンタジナの住民なんだから力が使える筈だ。
だから武器を持たないなら納得だよな。
それにチェリーが狩りの要だって言ってたし。
…なんかすごい威力の力持ってんのかも!)
そう思い直すと同時にモンチという生物について少し思考した。
ネーミングから『小さくてすばしっこい動物』を、…というより早く言えば猿をイメージした青年。
猿を狩り食すなんて正直オエッときてしまうが、確かにその肉は柔らかく臭みが無く味わい深く、御馳走と呼ぶに相応しいものだった。
なので、やはり危険は少ないのでは?
すばしっこいから狩りの成功率が低いのでは?…と結論付け、今回はありがたく見学で済ますと決めた。
腕並み拝見!…と息を殺し跡に続いていくと…
「いたよ!」
「え!?、どこ!?」
「その奥の開けたところ!」
モンチを発見したようだ。
木が邪魔で青年はまだその姿を捉えていないが、チェリー達は勢いよく飛び出していった。
「「わああああああ!!!!」」
「…え!?、作戦とかないの!?」
まさかのノープランでの突撃に思わず突っ込んでしまった青年。
三人が心配でつい自分も飛び出すと…。
キイイイイイイ!!
モンチは翼を大きく広げて一行を威嚇した。
鷲のような頭に、獅子のような胴体。
真っ白で大きな翼、鳥のような前足。
体長は少なくとも2メートル。
後ろ足で立ち上がり前足でガリガリと宙を蹴り翼を広げる姿は、全長4メートルはあるように見えた。
青年は悠然としたモンチの姿に、スン…と顔を固めてしまった。
(全然モンチじゃねえ。
これ『グリフォン』だわ。)
そう。何度も言うがここはファンタジナである。
人間が想像した仮想生物すら、本当の生き物として具現化する世界だ。
…まあ、今さら気付いたところで後の祭りだが。
(ムーリー死んだ~。)
「わわ!?」
「えーい!!」
石ころを投げるメロン。
陽動のつもりなのだろうか、やたらと走り回るアップル。
空に飛び立ったモンチの足を掴もうとピョンピョンと跳ねるチェリー。
狩りの失敗…むしろ生命の危機を察知し、青年は急ぎ撤退を決め近くに居たアップルに駆け寄った。
だがアップルは青年が森から出てきたと分かるなり、急ぎ森に入るように促した。
「駄目だよ出てきちゃ!?」
「いやあんなんノープランで狩るとか無理だろ!」
「危ない二人とも!?」
チェリーの声にハッと顔を上げると、モンチがすぐ傍に迫っていた。
翼で発生した風を感じた直後には、長い爪の前足が大きく振りかぶられ…
「ツ…!!」
青年は反射的にアップルを腕に抱き、ギュッと目を瞑った。
バサッ…!!
「……っ、」
だが何も起きず、青年は恐る恐る目を開けた。
「!!」
「…まったく。」
「……なんで。」
驚きの光景が広がっていた。
マグダラが青年の前に立ち、モンチの前足を掴み止めていたのだ。
モンチは大きく甲高く鳴き逃げようと羽ばたくが、マグダラは前足を離さず、そのままモンチを地面に叩き付けた。
ドオオン!!
地割れが起きたかと錯覚する程の振動が足に響き、青年は愕然とマグダラを見上げた。
マグダラは汗一つかかず、涼しい顔をしてチェリーに促した。
「後はできるな?」
「ありがとマグダラ様~!」
ガシッ!!
チェリーはパアッと笑い、起き上がろうとするモンチの翼を両手で掴み…。
ブチ!!
(うっえ…!?)
「やったー!、もう逃げられないぞモンチー!」
「はなしてヨワッチ!?」
「あ……うん。」
ここからはモザイクの世界であった。
青年は暫く耳を塞ぎ目を閉じ…、心も少し塞ぎがちになってしまった。
いつの間にかマグダラは姿を消していた。
◯ ドンマイとしか言い様がない……
狩りの最後は『ここからはモザイクの世界であった』という言葉で纏めました…
ちょっとね?、詳細を書くのはね?
注意書したとはいえ流石にエグいかなと…。(苦笑い)
それにしてもグリフォンがどうしてモンチなんて名前になったのやら。
ドラゴンが居たなら『ガオー』とかですかね?
生物リクエストありましたなら受け付けます(笑)
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