第4話 心友

俺は電話をしながら校門をくぐり、外に出た。

クラスメイトが集団でファミレスに、カラオケに向かうのをスルーしながら。


俺は彼方と話しながら校門の桜の写真を撮り、熱い想いを語った。



「今年はちょっと遠出しようと思ってて。

桜の名所巡りとか、よくね?」


『…お前、学校サボる気だな。』


「何のために無欠で通したと思ってんだよ!」


『ハア。桜好きも結構だがな?、調子に乗って出席日数の計算を間違えて留年なんてしてくれるなよ?

そんなのされた日には両親になんと伝えればいいのやら。

『父さん母さん、僕は酷くあの日の事を恥じた。

あの日僕が奴のサボリを容認しなければ…!!』

なんて涙ながらに語るのなんて御免だからな?』


「半笑いで言うな。てか親に言うな気まずいだろ!?」


『嫌なら頼むからミスしないでくれ?

この歳で責任の片棒など担ぎたくはない。』


「余計なお世話だ過保護💢!?

…でさ、将来設計的にさ!、俺春までにめっちゃ金貯めようと思ってて!」


『…ほう。で、春に有給を全て消費、若しくは大型連休を申請し花見行楽に出掛ける。…と。』


「そうそれ!、家賃安いトコ探さねえとな♪

…お前んとこから不動産とか紹介してくれたら安くなったりしねえ~?」


『…まあなる可能性はなくはない。…が、……』


「じゃあ今日夕方遊び行っていい?」




こんな俺だが、俺は自分なりの将来設計を描いていた。

それしか好きなものがなかったんだ。

幼少期から桜の動画を見せていれば御機嫌な程、俺は桜が好きだった。

だからこの将来設計はごく自然な流れだった。


だから電話先の彼方が神妙な顔をしていることに気付けなかった。




『……なあ。』


「でさ! …ん?、何?」


『お前の夢は、どうするんだ。』


「…!」




…彼方は、決して逃げない。

俺が『何故生まれてきたかったのか』の疑問を手放そうと、目を背け、心の渇望に蓋をし無視するのを、許さない。




「…あー、ソレな。」


『…そんな悩ましいお前に朗報だ!!』


「急だなおい。」


『父から聞いた話なんだが、どうやら輪廻転生というのは本当の話らしい。』


「!」




中学の頃、俺の渇望について俺と彼方は一つの仮説に辿り着いていた。

それは『前世での悔いややり残した事を、現世にて実現し、魂を救済する』…というものだった。


俺にそんな大層なものがあるか。…と思ったのだが、この仮説を立ち上げた彼方は神妙な顔をしてこう続けていた。




『だがな、実際にあるらしいぞ。

殆どが子供の頃に、おおよそ子供が思い付きもしないような言葉、場所を話したり、そこに行きたがる…と。

そしていざその場所に行き満足すると、その記憶はどんどん薄れ、本当に忘れてしまうらしい。』


『へえ~!、なんかドキュメンタリーでもありそうだな。』


『あるとも昨夜見た。』


『でたー。』




彼方は更にこう続けた。

『何故僕ら二人は生まれてきたかったと確信しているのに、他はそうではないのか。

それは、想いの強さが違うからなのでは?』と。




『想いの強さ…?』


『ああ。例えば怨念だの、よく映画やアニメの心霊ホラーであるだろう?

より強い憎しみや怒り、悲しみに苛まれた魂ほど、強力な霊力を持つ強い悪霊となる。…のような。』


『…俺らどんだけ悲惨に死んでんの。』


『そうではなくだな。つまりは『想いの強さ』が、現世にまで影響を及ぼすのでは。…という意味だ。』


『…!』




サラサラの黒髪、二重の綺麗な黒いつり目。

おおよそこんな話をするようには見えない端整な顔立ちは、真剣そのものだった。




『つまり僕らは、…いや、正確には僕らの魂が、強い想いを持ち、生まれてくることを望んだ。

…だから僕らにはその自覚があるのでは?』


『………』


『僕の胸に、お前の質問はまだ熱い。』


『!』


『…実は僕の祖先にそういったスピリチュアル?な能力を持った者が居たらしくてな。

もしかしたら、父に聞けば何か手掛かりが掴めるかもしれない。』


『………』




そして彼方は、強い決意を灯した瞳で言ってくれたんだ。




『必ず見付けよう。お前が生まれてきた理由を。』




だが、高校が別になった俺達はそれぞれ忙しくなった。

彼方はかなりランクの高い高校に進学し、当然こちらでも持ち前のリーダーシップを発揮し。

俺は家から一番近い高校に進学し、学校が終わるとすぐにバイトを。

だからこうして時折電話で話す程度の関係性となり、三年。

いよいよ彼が本気で動き出そうとしてくれたのが、俺には分かった。




(まだ、覚えていてくれたんだ。)


『でな、……まあここからは今夜にするか!

電話ではなんだしな?』


「…お前、なんでこんな必死になってくれんだ。」


『は?』




俺はつい口を突いてしまった言葉に思わずパシッと口を塞いだ。

…でも、本当に不思議だったんだ。

だって俺と彼方の人生は…、明らかに違うから。

彼方は将来有望だ。俺は誰よりそれを知っている気がする。

嫌味の無いリーダーシップを生まれた時から有し、高校だって大学だって良いところへ行き、そして間違いなく将来は人の為になる職に就き、大成を果たすだろう。

それなのに俺はフリーターでもなんでもござれ。

唯一の将来設計は花見行楽。


それなのになんでこんなに、もう何年もたってるのに必死に俺の本当の夢を…、生まれてきた目的と向き合ってくれるのか、…不思議だったんだ。


つい口を押さえ言葉に詰まると、彼方は『アホらし』とでも言いたげな声で言った。




『友達だからだろう。』


「!」


『それに、気になるんだ。』


「な、何が?」




『友達なんだから当たり前』と平然と言い放つその人間性に改めて尊念を抱いていると、彼方はまた真剣な声を放った。

俺には見える気がした。

彼方の、真剣なのに好戦的な笑みが。




『目的を思い出したお前が、何を成していくのか。

僕はそんなお前を見てみたいんだ。』


「……マジで言うとります?」


『ハハ!、当たり前だろ!

…まあ、理由なんか後付けさ。』


「え?」


『友達の夢を応援出来なくて、何が友達だ。

結局な、世界なんてシンプルなのさ♪?』


「え?、…へ??」


『つまりっ!、単にお前が僕の』




ズ…!!  キィィイィィィィイイイ…!!




その時だった。


突然感じた、重力と勘違いする程の全身にのし掛かる重み。

耳だけでなく脳を揺らす超音波のような高音の衝撃に、俺は思わず頭を抱えしゃがみ込み、膝を突いた。






◯ あああああとがきのせいで余韻が冷めたらアレなんでお次にどうぞ!?


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