第9話


「うーん…」


寝すぎた感覚がある、そして、よぎる仕事の事、思わず焦って起きると

ストンとおでこに乗っていた布巾がおちる


「ここどこ?!わ、私は、なんでここに?!あ!!そうだ!!帰らないと!!仕事が!!」


と布団から出ようとしたら置き手紙が置いてある。

それは、桐谷さんが書いたのだろうけど、そうとは、思えないほど、かわいらしい丸字だった


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仕事行ってきます️'ᴗ'


布団からあまり出ないでくださいね!!


具沢山のお粥を作って置いたので、食べれそうなら食べて下さい。

一緒に薬も置いておきます




ps,家に帰っちゃダメですよ笑


桐谷篤より


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「フフッ……」


彼の意外さに思わず笑ってしまい、お腹の空いたのでリビングの方へ

扉を開けた後、私の思考は、止まった。

ゲージから出ているひじきちゃんと目が合った。


「・・・」


・・・


とりあえず、一歩前に足を出すとひじきちゃんは、ゲージの方へ走っていった


「あ、ごめん!!!」


戻ったひじきちゃんだけど、ゲージの扉は、空いておらず、戻りたそうにして何とも言えない表情をしていた。


「分かった分かったから!!今、開けるね!」


ワンちゃんを飼ったことがなかったため、ゲージ開けるのに手こずってしまった。


「ちょっと待ってよ!!ひじきちゃん!!」


ワンワンワン


「ごめん、ごめんね、すぐ開けるから?!?!」


となんとかひじきちゃんを無事にゲージに入れて一息ついた頃


〔ただいま~〕


「あ、おかえりなさいです。」


〔え?!村瀬さん起きとったの?!寝てなあかんやん・・・〕


あ、物凄くお母さんみたいな事言われそう。

ジトッと見られた。

「あ、いや、その」


〔…プッ〕


「え」


笑われた?!?!


〔大丈夫、分かってるから、ひじきをゲージに戻してくれてありがとう。〕


「あ、え、なんで知ってるんですか?」


〔悪い事せーへんように、ペット用の防犯カメラあんねん笑〕


「え!!じゃあ、見られていたんですか?」


〔バッチリとな笑〕


といたずらっ子な顔をして言った桐谷さんだった


「え?!今そういうのもあるんですか?!」


〔凄いよな!俺も友達から貰ったから知らんかったんよ〕


「ペット用なんだ〜…」


〔それで?もうご飯食べた?〕


「あ、まだです。」


〔やんなw、じゃあ、一緒に食べよか〕


「あ、はい、なにか手伝います。」


〔あ、大丈夫やで、温めるだけやから〕


とキッチンの方へ歩いていく桐谷さん

あれ?まだお昼だよね?もしかして、早退してきたのかな?だとしたら悪いことしたかも


〔今は、調子どう?頭痛いとか気持ち悪いとか〕


「あ、大丈夫です。」


〔よかった、心配やったんよ〜〕


「すみません。」


〔謝らんでええから、ほら飯食おか〕


そう笑ってテーブルの方へ諭してくれた

ただ、桐谷さんの仕事は、大丈夫なのだろうか


「あの、お仕事大丈夫ですか?」


〔ん?あぁ、昨日出張から帰ってきて今日は、昼までなんよ〕


「なるほど、出張は、どちらに?」


〔福岡!あ、そうや!村瀬さんにお土産!〕


と思い出したように、立ち上がって袋を漁り始めた。


「わざわざありがとうございます。」


〔こっちが会社の皆さんな、これは、村瀬さんに!〕

と大きい箱と小さい箱を渡された。

「なぜ、私に?頂けませんよ!」

〔いつもお世話なってるからええねん!俺があげたかってん!!〕

「は、はぁ」

彼の考えている事がよく分からなかったから考えるのをやめた

〔それ、美味かってんよ〜、ご飯と一緒の方がええでな〜〕

「わ、分かりました。」

〔うん!よろしい!〕

そう言って、桐谷さんは、鼻歌を歌いながらキッチンの方へ

ご飯も頂き、寝室で帰宅する準備をしていると扉をノックしてきた。


「はい、どうされましたか?」

〔今、入っても大丈夫?〕

「大丈夫です。」

鞄を漁っていると彼が入ってきた。

〔帰り危ないから送っていくからな〕


「え?」抜けま声と共に思わず桐谷さんの方を向いてしまった。


〔ほら、また悪化したら、困るやろ?やから村瀬さんの家まで送るわ〕


「しかし」


〔もう遠慮せんでええから!俺がするゆーてんねん〕


「は、はい」


〔会社からやとどのくらい歩くん?〕


「30分くらいですかね」


〔しっかり歩くな〜!〕


「今日しっかり寝たので、もう熱がぶり返すこともないかと思いますが」


〔…〕


すると桐谷さんは、私の近くまで来て頬を引っ張った。


「いひぁいでふ。」


〔遠慮せんでええの!!俺がいいって言ってんねんから、受け取っとけばええの!〕


「…ふぁい」


〔…ぶふ、この顔で言われるとオモロイな〕


笑い出すと同時に引っ張っていた手がなくなった。


「桐谷さんがしてきたんじゃないですか?!」


〔ごめんごめんw遠慮し過ぎやったからさ〕


「でも」


〔はいはい、ほな、いこか?〕


と桐谷さんのマンションを出た。


歩く道のりは、長く感じたが、桐谷さんとたわいのない話をしていたから、いつもより苦では、なかった。


8対2くらいの割合で桐谷さんが話してたが、ほとんど福岡であった話だった。


私のマンションに着くと


〔これでいつでも村瀬さんの家来れるなw〕

とまたイタズラじみた顔をした。


「来たら追い返します。」


〔えー、なんで〜?〕


「勝手に来られるのは、私も困りますので、」


〔またなんかあったら、連絡してきてな?〕

と別のアドレスが書いてある名刺を渡された。


「これは?」


〔あ、名刺のは、会社やからさ、こっちは、個人用〕


「なるほど」


〔ちゃんと食べて、ちゃんと寝るんやで!!〕


「分かりましたから。」


〔ほなね。〕


「ありがとうございました。」


〔おん!〕


そう言うと満面の笑みで来た方向へ帰って行った。

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