第7話


気がついたら立派なマンションの前にいた。


「大きい…」


〔えーと鍵鍵〕


少し慌てて鍵を開ける。

彼が玄関に開けてすぐ


〔ちょっと待っててな!!〕

そう言って、扉を閉めた。5分程すると


〔ごめん!遅なってもうた…上がれるか?〕


「あ、はい、お邪魔します。」


と少しフラフラしたが、玄関でヒールを脱ぎ歩いて、彼の家にお邪魔した。


〔ほら〜、もーーフラフラやん!!とりあえず、なんか作るから待ってて〕


「すみません」


彼は、私の背中を押して、リビングまで案内した。


〔そんなとこで立っとるとしんどいやろ?ソファーにおり?あ、ベットも準備せな!!〕


とバタバタしてる桐谷さんが面白い。

会議でもこういう姿をあまり見ない。


「ふふふ」


すると


ワンワンワン


見た事ない人が来たからびっくりしたのだろう、ワンチャンが吠え出した。


〔ひじき、しっ!!〕


「え?ひじき?」


〔あ、犬の名前よ、ひじきって言うねん〕


そう言われて、私は、視線をひじきに送る。


「へー、可愛いですね」

〔そうやろ?!村瀬さん、分かってくれる?!〕

彼の顔がまた明るくなった。

「え、あ、は、はい」


本当にすきなんだな


〔ひじきはな?めっちゃお転婆さんやねん、散歩行くってなるとものすんごく喜ぶねん、こないだなんか!〕

「へー」


と彼が溺愛トークをしている間に、少し熱が落ち着いた気がする。


〔あ、ほら出来たで?お粥にしたけど良かったか?〕


「あ、ありがとうございます。」


〔あと薬やな!食べとってええから!!〕


「あ、はい、いただきます。」


〔どーぞ、えーと、確かこの辺に〕


といいながら戸棚を漁っていた。


「ふふっ」


〔何笑ってんねんw〕


「いえ、あまり見ない桐谷さんだったので新鮮で…」


〔そんなんゆーたら、俺もやわ〕


「え?」


〔ほい、風邪薬やからな、食後に飲んでや〜?〕


「あ、すみません、」


〔謝らんでええから、風邪やねんからしゃーないやん〕


「あ、はい…」


〔さぁ!!俺もたーべよ〕


そう言って私とは、別になにか作り始めた。


「なにをしてるんですか?」


〔え?あー俺は、うどんにしよかな〜思ってw〕


「なるほど」


〔あ、風呂とベット準備するからちょっと村瀬さんみといて〜!!お湯沸騰したら出してあるうどん入れてや〜〕


そう言って奥の部屋へ行った。


「なんか悪い事したな〜」


とりあえず、お粥を素早く食べ、薬を飲み鍋の前で待った。


するとまた


ワンワンワン


ワンワン


「真似してみるか〜…ひじき、しっ!」


ワンワンワンワン


「ダメか〜」

あまり動物に好かれない私である。


〔めっちゃ吠えられてるやんwww〕

気がついたら、後ろで口を押えて笑う桐谷さんがいた。


「え?!聞いてたんですか?!」


〔そら、聞こえるからなww〕


「恥ずかしい……」


聞かれているとは、思わなかった。


〔まぁ、あんまり俺の家、人こーへんからな〜、ひじきも警戒してんねやろ〕


「え?そうなんですか?」


社交的かと思ってたけど、そうじゃないんだ。


〔家には、あんまり呼ばんな〜外で飯なら行くけどな〕


「へー」


薬を飲んで、また少し楽になった。


うどんを作っている彼の後ろ姿を見ながら腕を組み、壁にもたれていると視線を感じたのだろう。


〔あのさ、座ってなくて大丈夫なん?〕


「え?あぁ、今楽なので、大丈夫です。」


〔まだ分からんから座っとき?それともベット行くか?〕


「え?いや、しかし」


〔そら、風邪人をソファーで寝かす訳行かんしな〜よっしゃ、出来た〜と〕


「…」


今、冷静に考えたらこうなるのかな?


〔今は、楽ゆーとるだけやから熱測っとき?いただきまーす〕


と体温計を渡された。


「はーい」


大人しく従う事にしたので、脇に挟んで待った。


すると桐谷さんは、もぐもぐしながら

〔そーいえば、今日珍しい格好してんな〕


「え?あ、」


それのそのはずだ。

わざわざ熱があるのに、メイクも服もヒールも着替えて来たのだから


「…たまたまです。」


〔そうなん?もしかして、予定でもあったん?〕


「いいえ、ないです。」


〔じゃあ、なんであんな所でおったん?誰か待ってたんやろ?〕


「いえ、待ってないです。」


〔ならなんで、はよ帰らんかったん?風邪って分かってたんやろ?〕


「…それは、」

ピピピピッピピピピッピピピピッ


〔あ、熱どう?〕


「えーと、38.2ですね。」


〔え?!結構あるやん!!〕


「そうですね」


〔そうですねちゃうわ!!はよ着替えて寝た方がええで?!ちょっと待っとって着替え持ってくるわ〕


「え?桐谷さん?!」


またいなくなってしまった。


「なんか今日迷惑しか、かけてないな〜」


そんなことを思いながら、ひじきを見ていた。


「こんなつもりじゃなかったのに…」


本人は、気が付いてない

私があそこいた本当の理由を


「言える訳ないでしょ?」


ヴゥゥ


「…めっちゃ警戒してるね。」


ひじきちゃんと目を合わせて待っていると


〔ほら、持ってきたで?〕


「ごめんなさい。迷惑ばかりかけて…」


〔風邪なんてみんな引きたいと思ってひーてへんわ〕


「それは、そうですけど、お家に入れて頂いて、それにご飯まで」


〔たまたまやからええねん〕


「…そうですけど」


〔はいはい、もうええから〕


と廊下を歩き、寝室まで桐谷さんに背中を押せれ案内された。


〔はい、ベットは、自由に使ってええで〕


「あ、はい、ありがとうございます。」


〔俺は、風呂入って来るから、なんか分からん事あったらゆーてな〕


「分かりました。」


〔じゃあ、また後でくるから、ちゃんと寝るんやで?〕


「は、はい」


と部屋から出ていった。

借りた服に袖を通して思ったが


「…大きい」

そう、そもそも男性と女性だからしょうがないが大き過ぎる。


「ぶかぶかだよ」

だらーんとした袖と足元は、引きずって歩けないので折り曲げた。


「桐谷さんって、こんなに大きいんだ」


コンコンッ


〔着替えれた?〕


「え?!はい!!」


〔ならよかった~。なんか今日の村瀬さん、危なっかしいからなぁ~〕


桐谷さんの髪の毛が濡れていてタオルで頭を拭いてるけど

「お風呂、早すぎませんか?」


〔え?そう?〕


「いや、早すぎますよ」


〔いつもこんなもんやで?〕


「ちゃんと洗いましたか?」


〔洗ってるわ!!〕


「へ、へぇ~」

カラスの行水とは、まさにこの事だ。


〔そんなことより早く横になり?〕


「いえ、まだ大丈夫なので」


フラっと立ち上がって


「お手洗いお借りしてもいいですか?」


〔ええで?部屋出た右の扉〕


「ありがとうございます。」


と部屋を出た。


〔…あれが噂の彼シャツかぁ〕


頭を抱えている彼の事を知らずに

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