エピソード2 :出会いと初戦闘

 あれ・・・?私は、なんで、床で寝ているの・・・?


「――!」


 女性は、目を覚ましそばにあったベビーベッドを見る。そして、安堵した。


「よかった、この子は無事だ・・・。 ん?これは、血? 一体、誰の・・・?」


 そして、恐怖に満ちた表情で壁に倒れたまま絶命しているメイドが目に入った。


「ッ! ミレイヤ・・・?」


 女性の顔が青くなった時、俺は起きた。


 あの日から3ヶ月後、母と俺は領地を失った。きっかけは些細ささいな事だ、政治による政策でナディア領民による反抗が発生し王国側に見放されその後、領土という物が――故郷と呼べる場所を失った。


 当時1歳未満の俺と母は、王国から出て周辺国を放浪していた。しかし、俺が12歳になった時、母が疫病えきびょうによって他界した。


「・・・なんで、なんで、だよ! 俺達は、無実だろ・・・。なぜ、故郷や領民に裏切られないといけないのさ・・・! ――この畜生ちくしょう共めえぇぇぇぇ!!!!」


 母が他界した時、俺は世界をうらんだ。世界最高に絶望していた時に見た怨恨えんこんだ。


 そして俺が14歳になった時、世界から逆に称賛しょうさんされる傭兵軍団を設立するきっかけになる少女に出会った。


・・・・・


 エール辺境国の国都エーラに、3日ほど世話になった時の話だ。


 その日俺は、宿屋を兼ねた酒場から出て来た時、少女の悲鳴が聞えて来た。


「――離してください!」


 今いる場所から、そう遠くない場所だ。他の住人は聞こえないふりをして声のしてくる場所をさけて居るから、様子をうかがいに向かった。 え? 正義のため・・・いいや、これ以上世界を恨まないように、ただそれだけの理由だ。


 路地に入りしばらく進むと、高貴な身なりの少女が男性3人に囲まれていた。しかも、よく見るとこの国の兵士達だ。


「――良いじゃないか。 楽しいことをしようよ、お兄さんたちと」


「少しは、気持ちいい事も含んでいるけどな」


「けへへ」


「い、いや・・・嫌あぁ!」


 うん、傍観ぼうかんしていないで助けるか。


 そして、俺はそばにあった小石を拾い上げると物音を立てるような音を出すために軽く地面に落とした。その音を聞いて俺に振り返った時、俺は話しかけた。


「――あぁ?」


「やぁ、助けて欲しいかい?少女よ」


少女は大きな声で、「はい! 助けて欲しいです!」と答えた。


「おい、小僧! さっさと消えろ!」

「? 何故?」


「あぁ?! 見て分からないのか? お取込み中だ」


 少女は何度も「――助けて・・・、助けて!」と藻掻もがき、逃れようとしていた。


 だから俺はそっと笑い笑顔で「じゃあ、試作武器の実験を始めようか」と言って苦心して魔法創造したスキル――〈無限収納インフィニティ・ストレージ〉から昨日完成させた2,5インチバレル仕様で.357マグナム9ミリ×33R弾を6発撃てる回転式拳銃リボルバーCOLT-PYTHONコルト・パイソンと7,62ミリ×39弾を一度に30発撃つことが可能な突撃銃アサルトライフルAK-47を取り出した。


 そして、右腰にホルスターを装備してそこにCOLT-PYTHONコルト・パイソンを差し込みいつでも撃てるようにソビエト連邦共和国の傑作けっさく銃であるAK-47を両手で持った。


 当然、現代武器を知らないこの世界の兵士達は「――そんな鉄の魔術杖で何が出来る!」と、笑い2人の兵士が剣をさやから抜いて俺に喧嘩けんかを売って来た。


「――ハハッ! さぁ、血と涙と悲鳴の舞台ロックンロール・ライブの始まりだ! ご紹介しよう、これがAK-47だ!」


 その言葉と同時に俺は、予め弾倉マガジンを装填していたAK-47の棹桿コッキングレバーを引いていた。だから、後は右頬と右肩を木製の銃床ストックに当てて照準を向かってくる敵に向けるだけだった。


「このガキ!」


「――思い知らせてやる!」


 俺まで300メートルとなった時、俺は引金トリガーに右中指をえて警告をした。


「それ以上近づくなら、俺は容赦ようしゃせずに冥府めいふに行かせる。 死にたくないなら、剣を降ろせ」


 しかし、命を救うための警告を無視し突撃してきた兵士2人が残り200メートルの近くまで来た時、「・・・はぁ。 仕方が無い、死に急ぎ野郎が」と呟き引金トリガーを引いた。


 その瞬間、ヒトをかたどっていた兵士2人が肉塊にくかいに変わった。その光景を見ていた少女は口元を両手で隠し少女に剣を向けていた残りの兵士は恐怖のまなこで俺を見た後、肉塊となり呼吸をしない仲間を見た。


「・・・ハンス、ケイター」


「――さてと、その少女を放してくれますか? 死にたくないでしょ?肉塊死体となった仲間みたいに」


 兵士は思った――否、後悔こうかいした。


「(ああ・・・、大人しくこの子供から逃げて居たら――)この・・・、化け物が」


「ん? “化け物モンスター”か。 褒め言葉として受け取っておくよ。兵士さん」


 空になった弾倉マガジンをレバー式の弾倉取り出しボタンマガジンリリースボタンを押し下げると弾倉マガジン自身の重さで石畳の地面に落下した。空弾倉マガジンが落下している間に今度は、80発の弾丸を装填した特製のドラムマガジンを装填し再度、機関部側部にある棹桿コッキングレバーを、ドラムマガジンを装填した左手で手前に素早く引いた。


 そして、男の後ろに居る少女に当たらない様に照準を少しだけずらし威嚇射撃のために1回だけ地面に撃とうとした時、背後から兵士達の声が聞こえて来た。


「――姫様! 何処どこですか!返事をしてください!」


「新兵!」

「はい!」


「そこの路地を見て来てくれるか?」

「分かりました、隊長」


 どうやら、ここまでの様だ。戦闘終了と見て、撤退しよう・・・。


「それでは、僕はこの辺で――、また会えると良いですね」

「――あ、あの!」


「何か?」


「な、名前は・・・?」


「名前ですか? 名乗るほどの者でもないので、それでは」


 俺はそう言うとフードを被りなおし、AK-47を〈無限収納インフィニティ・ストレージ〉に収納しながら路地を立ち去った。


 途中、兵士とすれ違ったが質問を受ける事なく活気にあふれた表通りに出た。

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