第25話 期末テスト1


「あの……、兄様」


 夕食時、私は兄様に恐る恐る話しかけていた。勝手にお姉ちゃんに会いに行くことを決めてしまったけれど、さすがにだめだったかもしれない。ミークレウム殿下は周りには隠して出かけるけれど、私は隠すことは難しい。というか、隠したくない。


「どうしたの、そんな顔をして」


「そのですね……、テストが終わった後にお姉ちゃんに会いに行ってもいいでしょうか?」


 私の発言に兄様が目を丸くする。そうですよね、普通ありえないですよね。


「どうして急に……」


 兄様の疑問は最もだけれど、それに答えようとするとミークレウム殿下のことまで話さないといけないからな……。それを勝手に伝えることもはばかられて、私は口をつぐんだ。


「それなら僕も一緒に行っていいかい?」


「え⁉

 あー、それは……」


 その言葉は予想外。でも兄様と一緒に行くことは難しい。本当はそう言ってくれることがとても嬉しかったけれど。


「ふーん」


 うう、そんなにこちらを見ないでください。すべて白状したくなる。少しの間そうしていると、兄様は深くため息をついた。


「ダメって言っても止まらないでしょう。

 だったらまだ伝えてもらってから行ってもらった方がいいよ。

 長期休暇中に行くつもりだとは思うけれど、どうやって行くつもりなの?」


「その、ウェルに乗って……」


 私の言葉に兄様がああ、とうなずく。もうウェルが天馬であることは隠していないから、それで大方理解したのだろう。


「あの、行ってすぐに帰ってきます!

 だから……」


「そんな顔しないでよ。

 すぐに帰ってくることもないよ。

 せっかく久しぶりに会うんだ、ゆっくりしてくるといい」

 

 ゆっくり……。その提案は本当に魅力的ですぐにでもうなずきたい。でも殿下のことを考えると早く帰ってこないと。


「いいえ、すぐに帰ってきます」


 そう言った私に兄様は不思議そうな顔をしたけれど、そう、とうなずいてくれた。


「でも!

 その前にまずはテストだよ。

 準備は大丈夫そうか?」


「ええ、まあ……」


「わからないことがあったら聞くように」


「ありがとうございます!」


***

 そして、ついにテストの日がやってきた。1年生は今日は実技を受けて、明日は筆記。今日までの勉強会は6人でやってきた。リューシカ様とマベリア様のお言葉に甘えて、私は殿下方とリューシカ様たちと一緒に勉強会を行うことになったのだ。これが意外と相性が良かったようで、おおむね良好な状態で勉強会を行えた、と思う。


 今日の実技は、判定の儀の時と同様に魔力のランク判定、そして今まで授業で習ってきた呪文のコントロールと威力、従魔と契約した私たちはそれに加えて従魔との関係性に関するテストがある。これらと筆記テストを総合的に判断して後期からのクラス分けが行われるのだ。従魔持ちだけが入れる特別クラス、Aクラス、Bクラス、と。


 今回は特に実力を隠すつもりはない。それでいいと言質もとっている。さてさて、私のことを平民だと馬鹿にしていた貴族たちの反応が楽しみだ。


「今日は頑張りましょうね、アイリーン様」


「はい!

 でも緊張します……」


「実技試験の内容はその時に言われるものね。

 自分が得意なものだったいいのだけれど」


「もう、マベリア様はそんな心配する必要ないでしょう?」


初めてのテストで緊張していたけれど、この2人のやり取りは和む。自分の実力を出し切るだけと言ってもそれが難しい。でも、何とか頑張れそう!


視線を殿下たちに向けると、カンクルール様と何かを話している。ふと、下を向いていた視線が上を向く。そして、その視線が絡む。え、なんで、このタイミングで視線を上げるのよ。


「アイリーン様?」


「え、あ、なんですか?」


「……?

大丈夫ですか?」


「は、はい!

 大丈夫です!」


 何が大丈夫なのかわからないけれど、うん、大丈夫。先生が教室へと入ってきて、話が途切れる。ついにテストが始まる。私はまあいいとして、ミークレウム殿下にはいい成績を残してもらわないと。そのために手荒な方法をとってでもミークレウム殿下に従魔を召喚させたのだもの。


 実技試験は基本的には順調に進んだ。先生を相手に授業中に習った呪文を使って魔法を出していく。どこに打っているのか、そしてどの威力になるのか。一人一人の生徒と戦いながらそれを判断しなくてはいけないって、相当大変よね。しかも、1年生うちは先生は基本的には攻撃をしてこない。余計大変だと思う。


 まあこの手の実践も悲しいことに私は得意だから、特に苦労することなく魔法を繰り出していく。そして早い段階で終了を告げられた。


「はぁ、はぁ……。

 遠慮なさすぎだろ、ハーベルト。

 なんでそんなに涼しい顔をしているんだよ」


「なんで、と言われましても……」


「もういい……。

 お前はSだよ……」


 あれ? このタイミングで成績を言ってもいいのかしら? 疑問には思ったけれど、先生があきれた顔で手を払っているから、聞くタイミングを逃した。まあ、どんどんやっていかないと終わらないらしいので仕方ないか。


 そして次は魔力ランクの判定。あの時使ったのと同じ水晶が目の前にある。どうしてもあの時の緊張がよみがえってきて、心臓がばくばくしていく。でも、大丈夫。兄様のおかげでもう怖くないから。


「え……、どうして」


 水晶がまばゆく光る。それはあの時よりも強い光で。水晶の前にいた先生が驚きに目を見開く。なんだか申し訳ない。普通1、2年でこんなにランク上がることないものね。とはいえ、前回の私は2年の時にはS級から特級に上がったのだけれど。その時もこんな風におどろいていた気がする。というか、叫んでいた? 水晶割れていたものな……。


「え、S級、です……。

 え、本当に?

 ちょっと、待っていてもらっていい?」


「はい」


 信じられないとその顔に書いてあるまま、先生がどこかへと行ってしまった。そして帰ってきたときには教務主任の先生を連れてきていた。なるほど、信じられなくて上の人をつれてきましたか。


「アイリーン・ハーベルトさん。

 申し訳ないのだけれど、もう一度水晶に手を当ててもらっても?」


「はい」


 言われるままもう一度手を当てる。結果、無事に? S級判定をもらいました。これがいいことなのかはわからないけれど、まあ、予想通りではある。


 最後は従魔とのテストだ。

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