第16話 宝探し

「本当に良かったのか、僕と同じグループにならなくて」


「ふふ、大丈夫ですよ。

 それよりもすみません、勝手にミークレウム殿下とグループを組んでしまって」


「それこそ気にしないで。

 君は君がしたようにすればいいんだ」


「ありがとうございます」


 兄様の言葉が嬉しくて、ありがたくて。うん、頑張ろう。それよりも、彼女たちの方がこれで良かったのかな……。


「それじゃあ、今日は頑張ろうか。

 負けないよ」


「はい、私も負けません」


 とはいえ、どうやって勝敗を決めるかはよくわからなかったりする。この宝探しはほとんど先生方の独断と偏見だと思っているし。課題が与えられて、それをクリアする時間を競ってはいるのだけれど、そこに先生たちの追加点が入るのだ。最終的にはそれによって順位が決まる、と。とりあえずホライシーン殿下よりも高い順位を取りたい。


***

「ねえ、本当にいいの?」


「もう、しつこいよ。

 私がそうしたいんだもの、だからいいの」


「は、はい。

 私も、アイリーン様とマベリア様と一緒がいいんです」


「……ありがとうございます」


 私は結局ミークレウム殿下とカンクルール様、セキエルト様、そしてリューシカ様、マベリア様とグループを組むことになった。嬉しいことに、2人はミークレウム殿下と一緒のグループになってでも私と一緒になりたいと言ってくれたのだ。


「あの、それってかなり私に失礼では……?」


「ぶはっ、た、耐えてください、殿下」


「本当に失礼な……、おい、カンクルール!」


 何か言っている気がするけど、知りません。


「さあ、グループごとに集まって。

 説明を始めますよ」


 そうしているうちに先生が拡声魔法を使って全体へと呼びかける。その声に慌てて先生の方へと向かっていった。


 前回と同じ説明を適当に聞き流す。ぞくり、と寒気がしてそちらを振り向くと、そこにはホライシーン殿下とその取り巻きが立っていた。ああ、やっぱり敵視されますよね。嫌だな……。


「それでは最後にグループごとに課題を渡しますよ」


 やっと説明が終わったところで、ようやく課題が渡される。この課題はグループごとに違うものが配られる。グループの力量から課題を用意されるから、ほかのグループから無理やり奪うことも意味がない。大変だとは思うけれどよく考えられているよね。


「私たちの課題は……ぅゎ、復魔草みたいです」


 今うわ、と聞こえた気がするのですが……。いやそれよりも。なんなのでしょうか、その口調と表情は……。いや、確かに前回はこんな感じだった。こう、紳士的で優しくて、堅実そうな。でも今は疑い深くて、雑なしゃべり方で、そんな殿下しか知らないから違和感しかない……。


「復魔草って……。

 かなり探すのが難しいやつですね」


「うーん、妥当と言えば妥当なのではないですか。

 だって、ほらどう考えてもこの学年で一番戦力あるでしょう。

 下手に獣とか指定しても、ねえ?」


 言われて見渡してみると、うなずくしかない。ここにはこの学年の現時点での従魔持ちが全員集まっていましたね。本当によくできた課題よね。


「でも、これだったら私でも役に立てるかもしれません!」


 始まる前は力になれないかも、と落ち込んでいたリューシカ様が嬉しそうに笑う。そうだ、リューシカ様は薬草に詳しかったんだ。


「よろしくお願いします、リューシカ様」


「はい!」


 そうして宝探しの場となる森に足を踏み入れた。


***

「初めは順調だったんだがな……」


 はぁ、というセキエルト様のため息が聞こえてくる。その声に全員が沈み始める。否定できない。初めの1本目はすぐに見つかったのだ。リューシカ様が復魔草が生えやすいところを知っていて、そこを中心に見ていった結果、早々に見つけることができた。でも、そのあとは全然見つけることができないでいた。


「す、すみません……。

 復魔草はもともと数が少なく群生しないので……。

 その上だいぶ見分け辛くて」


「い、いやいや。

 リューシカ嬢の知識にとても助けられていますよ」


「ええ、本当に。

 これはもう、仕方ないですよ」


 すみません、ともう一度リューシカ様が謝る。本当に謝る必要はないのに。先ほどから私たちは森にいくらでも生えている草を丁寧に見ていくことしかできないでいた。


「もっと効率のいい探し方があればいいのだけれど」


 さすがにマベリア様にも疲れが見えてくる。もっと効率がいい、ね……。うーん……。


「その復魔草、少し貸してもらえますか?」


 受け取った草をくるくると回してみてみる。これが復魔草。魔力がなくなったときの最終手段の一つ。かなり苦いけれど、嚙むだけで魔力がすぐに回復するものだ。ということで重宝するものだけれど、探すのがなかなか難しい。魔力、魔力ね……。


 ウェル、出てきて、そう話しかけると、ウェルがすぐに出てきてくれる。


「ねえウェル、これほかに探せたりしない? 

 あと5本ほしいのだけれど」


 ウェルは手に持った復魔草に鼻先を近づけるとすぐに顔をそむける。うわ、嫌そうな顔をしている。私からすればあまり匂いしないのだけれど、きっとウェルにしかわからない匂いがするのね。


「ごめんね、いいわよ休んでいて」


 そう言ってなでようとすると、ウェルはブルッと不満げに鼻を鳴らす。そして地面に鼻先を近づけながら、どこかへと向かっていった。


「え、まさかわかるのか⁉」


 皆で緊張と期待を抱えたままウェルの後を追いかける。見失いそうになると、ウェルは立ち止まってこちらの様子をうかがってくれる。そうしてウェルはとあるところで完全に立ち止まった。


「え、これって本当に……?」


「復魔、草ですね……」


「すごい……。

 しかも2本も生えている」


「すごい、すごい!

 ありがとう、ウェル」


 これで後3本! ウェルにはご褒美に魔力を上げて一度帰ってもらった。どうやら復魔草の匂いはきついらしくて、ウェルはふらふらとしていたから、休んでもらわないと。


 従魔なら復魔草を追えるということが分かって、そのあとは3人が順番に従魔を召喚して復魔草を探してもらった。まさかこんなあっさりと見つかってしまうなんて。復魔草がどうかの最終判断はリューシカ様にお願いして、私たちは無事に6本の復魔草を手に入れることができた。そのうちの1本はかなり珍しいことに2つの花をつけていた。


 早く先生たちのところに戻って報告しないと。報告した時点タイムになるはず。これはかなりいいタイムなんじゃないかな。


 みんなで急いで森の中を抜けていく。

 その時。急に視界を光が覆った。

 とっさに体が動いていて、隣にいた殿下を覆いかぶさる。そして、すぐに暴風が襲ってきた。




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