14. 気温
〈……〉
氷の魂はニティカと何の話をしたのだろう。自分の事なのか……それとも、ナズナ村の事についてなのだろうか。自分も黙ってはいるが、気になって仕方がない。
山頂から麓まで下りてきたが、下りている間ニティカは一切自分と話さなかった。自分が何を聞いても無視されてしまう。ニティカをおいてきてしまったことを後悔していた。
「……ニティカ、本当にごめんね。僕、今の外の環境が分からないから……その……」
「……」
こちらを振り向かずに歩き続けるニティカ。わざとニティカをおいていったわけではないと、分かってほしかった。小さなため息をつきながら、黙ってニティカの後をついていく。
「何か聞きたいわけ?」
突然、ニティカは歩いていた足を止めて振り返る。
「え……」
驚いた表情でニティカを見ていた。まさか急に話しかけてくるとは思わず驚いていた。何度も謝り続けて、ニティカはやっと許してくれたのだろうか。
「え、じゃないよ。外の環境が分からないって言ったじゃない。何かあたしに聞きたい事でもあるんじゃないの?」
何も聞かずに無視されていると思っていたが、自分が何て言ったのかしっかりと聞いてくれてはいたようだ。
「ナズナ村付近の気温って何度ぐらいなのか教えてくれたら助かるんだ」
フリゼルス雪山は一年中極寒の冷気に覆われている為、氷点下の気温が上がることはない。フリゼルス雪山から離れたナズナ村ではどのくらい気温が上がっているのだろうか。
気温が5度以上だと、自分は長時間ナズナ村に滞在できるのか気になっていた。
「ナズナ村の気温のこと? 今は春の季節だから15度から18度ぐらいあるわよ。……何で急に気温のことなんて聞いてくるのよ」
「じゅ、18度……」
顔色が真っ青になっていく。
気温が18度もあるとは……自分にとってはとても危険な気温だ。
真っ青な自分の顔色を見て、ニティカは首を傾げている。自分の身体は5度以上からとても暑く感じることを伝えておいた方がいいのだろうか。
〈でも……ニティカに迷惑をかけるわけにはいかない。僕の身体を薄い氷で覆っておけば数日なら大丈夫かもしれない。ナズナ村に雪を降らせたらすぐに帰ろう〉
「ねぇ、どうしたの? 気温が高いと何かマズイ事でもあるの?」
「な、何でもないよ。外はどのくらい暖かいのかなぁ〜って気になっていただけなんだ。教えてくれてありがとう、ニティカ」
小さく微笑みながら感謝すると、何故かニティカは顔をすぐに逸らしていた。
「別に感謝される程のことなんかしてないし。本当、あんたって変わってるよね」
……褒めてくれているのだろうか。
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