13. ニティカの態度


 〈ニティカ、少しいいですか〉


 「は、はいっ⁉︎」




 ……後ろを振り向いてみると、ニティカがついてきていなかった。

「ニティカ……? どうし……たんだろ?」

身体中が痛むのでしゃがんで待つことにした。もしかしたら、自分の所為で氷の魂に怒られているのだろうか。だとしたら、待っていてはいけない……ニティカを呼びにいかなくては。

「……っ!」

氷塊がぶつかった部位を右手で覆い冷気を当てる。ひんやりと冷たくなると痛みは薄れていった。


 〈よし、急いで戻らないと!〉

山頂に戻ろうと歩き出そうとした瞬間、積もっている雪の中を小さな何かがこちらに向かって歩いて来ていた。


 「……ニティカ?」

「ひっどいじゃない、おいていくなんて‼︎ 」

積もった雪の中で、ニティカが怒りながら飛び跳ねている。あまり山頂にいたくなかったので、早足で歩いてしまいニティカをおいていってしまった。急いで謝ったほうがよさそうだ。

「ご、ごめん……。遅かったけど、氷の魂に何か言われたの?」

「なーにも言われてないよ! ユフリッズは気が利かないけど、よろしくねって言ってたんじゃない」

謝ったのに、まだニティカは怒っている。

「……本当にごめん。氷の魂に何か言われる前に山を下りたくて……」


 先に歩き出していたニティカがこちらを振り向いた。

「ユフリッズ……ありがとうね」


 「え?」

ニティカが何か言ったようだが、小さな声だったので全く聞こえなかった。前を向き、再び歩き出すニティカの後を追いかける。


 それにしても、もう寒さは大丈夫なのだろうか。時々ふらついてはいるが、ニティカはしっかりと雪の中を歩けている。

「ニティカ、寒さは大丈夫?」

「……」

無視されているのだろうか。

「あの……」

「大丈夫じゃない。手足の感覚がなくなってきてるけど、あんたにあまり迷惑はかけたくないから」

ニティカが何も言ってこないので、気にはなっていたが……。まさか、自分に気を遣っていてくれたとは。

「そ、そんな事気にしなくていいよ! 僕が背負っていくよ」


 こちらを睨みながらニティカは話し始める。

「いいっ! あたしだって、唯の陽の妖精なんかじゃないんだから! ユフリッズは黙ってて!」

……ニティカの機嫌がかなり悪いようだ。やはり、氷の魂に何か言われたのではないだろうか。だが、ニティカは何を話したのか言おうとしない。言わないのも自分に気を遣っているからなのだろうか。


 「ニティカ、僕に気を遣わなくていいから。氷の魂に何を言われたのか教えてほしい」

「なーにも言われてません」

明らかに態度が違う気がするが、これ以上聞いても教えてくれないだろう。ニティカが話しかけてくるまで黙って歩くことにした。

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