12. 僕の意思
恐怖で両手が震える。氷の魂を本気で怒らせたら、自分はどうなってしまうのだろう。
〈や、やっぱり……謝っ……〉
……謝りたくない。
六大始源に対して失礼な態度を取っていることは分かっている。自分の態度にニティカも焦ってしまっている。自分が黙ればいいだけ……すぐに謝れば氷の魂も許してくれるだろう。だけど、自分はどうしてもフリゼルス雪山から出て外の景色を見たい。ニティカを放っておくつもりもない。
〈僕は
瞑っていた目を開けて氷の全元晶を睨んだ。
「僕はあなたの道具なんかじゃない!! 僕が何をしようとあなたには関係ない!! あなたの言う事には、もう従いません!!」
ニティカは真っ青な顔色で大きく口を開けて驚いている。自分の本当の思いを氷の魂にやっと言えた。フリゼルス雪山に閉じ込められ続けるのはごめんだ。
〈……今、何て言いましたか? ユフリッズ〉
氷の魂を本気で怒らせてしまった。だけど、もう引くつもりはない。氷の魂が何をしてこようと、自分はナズナ村へ行き、ニティカと村人達を助ける。
「僕は、あなたが何を言おうとナズナ村へ行きます。ニティカを助けたいし、外の景色も見たいから」
「ちょ、ちょっと……」
困惑した表情で、ニティカは自分が着ている半袖のシャツの裾を引っ張っていた。
〈ダメです〉
「僕は行きます!! 絶対に!!」
〈ユフリッズ!!〉
──パァン!!
突然、目の前に現れた大きな氷塊が自分に向かって物凄い速さでぶつかってきた。
「うぁあああああ‼︎」
衝撃で身体が飛ばされる。
「ユフリッズ!! こ、氷の全元晶様、やめてください!! あたしは水の全元晶様の場所へ行きます!」
〈そうしてください。ユフリッズを外へ行かせるわけにはいかないのです〉
倒れている自分を見て、ニティカは歩き出そうとしていた。
「ニ……ティカ……、僕も……行く」
痛む上半身を起こそうとする。
水の全元晶がいる場所までニティカを行かせるつもりはない。起き上がろうとする自分を心配したのか、ニティカが慌てて駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫!? あんたはもういいから、氷の全元晶様の言うとおりにして!」
小さく首を横に振る。
「僕は……僕の意思で……ナズナ村を……助けにいく。氷の……魂が何を言おうと……しようと……僕は絶対に……行く」
「あんた……何でそんなに」
ゆっくりと立ち上がり、ふらつきながら山を下りようと歩き出す。
氷の全元晶は何も言わなくなっていた。
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