4. 雪の中の声
木や地面には一昨日降った雪がまだ積もっている。氷の坂を滑りながら麓まで下りたが、真っ白な雪が積もっている地面には何かが倒れている様子はない。
「ハァハァ、何処にいるのかな。すぐ近くに気配を感じるんだけど……」
もし人か動物が倒れているのならば、すぐに分かる筈だ。だが、人や動物の姿は見当たらない……雪に埋もれてしまったのだろうか。
「誰かぁーーいますかぁあ!?」
大きな声で気配を感じる山道の近くで叫んだ。返事をしてくれたらすぐに捜し出せるのだが。
……少し待ったが、返事はない。
「……凍死しちゃったかな。間に合わなかった」
物凄く落ち込みながら山窟に戻ろうとする。やっと生きている何かに会えると思い期待していた。動物や人を自分はもう何年も見ていない。
厳しすぎる寒さの所為で生物が生きていけないフリゼルス雪山。この雪山で生きていられるのは自分一人だけだ。
「はぁ……帰ろう」
──「"誰……か、いる……の?"」
「えっ」
慌てて振り返って辺りを見回す。今、間違いなく"女性の声"が積もっている雪のどこからか聞こえた。
「どこにいるんですか!? もう一度だけ返事をしてください!」
目を瞑って耳を澄ませた。女性の声がもう一度聞こえれば、埋もれている場所を特定出来る。
〈お願いです……もう一度……!〉
──「こ……ここ……に」
「!」
急いで雪を掻き分けながら、山道から外れた木々の中へと入った。女性の声は木々の中から聞こえていた。間違いなくこの先に女性がいる筈だ。
「絶対に、絶対に目を閉じないで‼︎」
雪の中を更に掻き分けていく。掻き分けていくと、雪の中から白色のワンピースと小さな両足が見えてきていた。慌てて手を伸ばし、雪の中から救い出すと両手に抱えた。
「だ、大丈夫!? しっかりして」
「だ……大丈夫じゃ……ないわよ。さ、寒くて……もう……ダメ」
女性は橙色の左右のお団子ヘアーに白色のワンピースを着ている。両腕で抱き抱えられる程の小ささ……どうやら女性は"小人の妖精"のようだ。自分は初めて妖精を見たので少し驚いていた。妖精は人の前では絶対に姿を見せないという言い伝えがある。何故、妖精がフリゼルス雪山に来ているのだろうか?
だが、今はそんな事を考えている場合ではない。小人の女性の体温は寒さによってどんどん下がっている。低体温になったら命が危ない。
〈どうしよう。僕はこの山から出れないから出せないし、小人さんも歩けなさそう。……山窟に連れて行こう、外の気温よりは少しは暖かい筈だから〉
小人の女性の身体を薄い氷が覆い始める。
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