3. 変元力
『あなたは……誰?』
遠ざかる意識……目の前は更にぼやけていく。確かに、目の前に浮かんでいる小さな水晶から女性の声が聞こえたような気がした。だけど、水晶が喋るなんてあり得ない。幻聴が聞こえているのだろうか。
〈ユフリッズ、このままだとあなたは凍死します〉
『凍……死……? そっ……か』
小さく微笑んだ。柔らかい雪の上、このまま目を瞑れば本当に二度と起きれなくなりそうだ。
自分がフリゼルス雪山に来た理由……山頂にあると伝えられている全元晶を盗もうとしていたような気がする。
『……』
身体はもう寒さすら感じない。フリゼルス雪山で自分はこのまま永遠に眠るのだろうか。
……誰にも見つかることなく。
小さな水晶は更に自分の元へと近付いていた。
〈私は、あなたを使いたい。ユフリッズ、私の
『
顔をゆっくりと上げる。
ライトブルーの小さな水晶が自分の額に当たった。
それからは何があったのか覚えていない。そして、自分はいつの間にか氷の魂の
〈でも、逆に雪山の外の気温に耐えられなくなってしまった。5度以上の気温は僕にとって暑くて暑くて辛い……。外の平均気温は今何度になっているんだろ?〉
いつかまた外の街へ遊びに行きたい。現在の気温や外の風景を登山家に聞きたいと思い、フリゼルス雪山に登って来るのを何年も待っているのだが……。
未だに自分が住んでいる山腹の山窟まで辿り着いた者はいない。氷の魂は自分が外に出掛けたいと言っても何も答えてくれなかった。
有事の際に命を懸けて全元晶を護らなくてはいけないからだ。
「分かってはいるけど……やっぱり外を見たい。でも、僕の命を救ってくれた氷の魂を放っておくわけにもいかないよね」
ノートを見ながら、小さなため息をついていた。
「んっ?」
フリゼルス雪山の山麓から生き物の気配を感じる。ありえない事に思わず驚いていた。まだ、生きているかもしれない。急いで山麓まで下りれば"生きている何か"に会えるかもしれない。
「い、行ってみよう! 急がないと!」
ノートを山窟の入り口に置き、慌てて山道から山を下り始めた。
「ハァハァ、お願いだから死なないで……すぐに助けに行くから!」
山道に落ちている石が足に当たって邪魔だ。
──キィン
自分が右手を軽く振ると、でこぼこだった道は氷の坂になっていた。
「
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