第7話 初潜入

あの洞窟のようなものを、仮にダンジョンと呼ぶようにした。

さて、ダンジョンに行くには準備が必要である。

なぜか幸い、武器は配布されて、スキルは強そうで、ということで

準備はほぼできているのだが。


(あそこだって、まだ何があるかわからないし、

  そもそもダンジョンぽいから敵がいると決まったわけでもないし)


とりあえず、行ってみないことにはわからないので、言ってこよう。

そして必ず帰ってくるんだ。


家を出て、鍵を閉める。

そしてポケットに入れようとして、

(あ、ストレージに入れればいいのか。)

と思った。なので、今はストレージ内に鍵がある。


こんなことがあったのに不気味なくらい外は晴れていた。

雲一つもない青空である。

学校に向かっている途中ですれ違う人が増えていたのだが、

そのほとんどが、こちらをちらりと向くのだ。


何か恥ずかしい。


ということで、学校にダッシュをまたすることになった。

前回は、遅刻したくないという気持ちで、

今回は、恥ずかしいという気持ちで。


学校につくと、やはり野次馬が残っていた。

それには気にすることがなかったのだが、

こんな声には耳が寄せられた。

「よくこんなところに入っていけるさっきの人みたいなのがいるもんだねぇ。」


どうやら、このダンジョン(?)に入っていった人を心配する声だったようだ。


僕は、ちらちら見られながら、ダンジョン(?)の入り口へとどんどん近づいていく。


不意に

 「ちょっと、あんたもこいつに入るというのかい。」と言われるが、

何も言わずに、ダンジョン(?)に入っていった。


進めば進むほど、跳ね返ってくる音を大きく感じる。

しかし、なぜか周りの明るさが一向に暗くならない。

周囲にはダンジョン(?)の壁があるというのに、

まるで太陽の光が降り注いでいるみたいだった。


そうこうしているうちに、分岐点にぶつかった。

今までの接敵数はいまだに0である。


無駄に明るいダンジョン(?)内で彼はこんな事を考えていた。

(ほんとうはここ、ただの洞窟じゃないか?)


二つの分岐点なのだが、左に行くことにした。

しばらく進むと、そこにはスライムがいた。


スライムというのは、RPGで定番の雑魚敵というやつであり、

ここでもそんなものなのだろうかと思った。

それ以上に、やはりここはダンジョンなのかと思っていた。


「大丈夫」と声を出した。

まだ高い声に慣れていなくて、この声でこう言うと、

他人が励ましてくれるような感覚になった。


ストレージから剣を出す。

片手で持ちたいが、振るには少し重たいので両手で持つ。


そっとそっと、そっと、そおっと、そぉっとスライムに近づく。

そして、上から振り下ろす!


スライムはたおした。そして、消えていった。

「こういうのは、何かドロップ品を落とすものじゃない?」

しかし、待っていても落ちない。


その後、ドロップをあきらめて、進んでいった。

上と同じような戦法でスライムにばれずに近づきながら倒していった。

まぁ、2回だけなのだけれども。そしてドロップ品もなかった。


ダンジョン内では、まるで夕焼けの時のように

ある方向から淡い赤色の光が差し込んでくる。


とりあえず一旦、帰ることにした。

剣はインベントリにしまった。

ずっとダンジョン(こりゃもうダンジョンといってもいいでしょう。)

にこもっていたもので、

グゥ~、とおなかが鳴った。

分岐点も、結局最初の一個だったので、迷うことなく入口まで来た。


ぜっっっっったいに野次馬がいると思って身構えていたのだが、

そんなに人は残っておらず、

緊張しすぎたことでかえって疲れてしまったことは内緒である。


帰り道、僕が気にしていたことといえば、

親友ゆうとのことである。

彼の家に行ってみたが、人の気配がしなかった。

それが、僕を少し気落ちさせていた。


そんなこんなで家に帰ってきた。

一人で住むには大きい一戸建てであるが、

僕の父さんと母さんは帰ってこれるのだろうかと思う。


家に帰ってきて、手を洗った。

そして僕はすっかり習慣化してしまった、

帰ってきた後にテレビをつけるという行為をした。

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