メイド服 いろんなものが あるけれど みんな違って みんないいよね
宮川雨
色んな種類のメイド服があるけれど
「それでは今度の文化祭、私たちのクラスはメイド喫茶をすることになりました。皆さんで良く話し合って決めなさいね。じゃ、委員長の早川さん、よろしく」
そういって担任の望月先生はそこらへんに置いてあったパイプ椅子に座ってしまった。このまま私たちに全て丸投げするらしい。仕事はちゃんとするけれど、どこか気だるげなんだよね望月先生。
まあとりあえずみんなの意見を聞かないと。とりあえず黒板の前にでてチョークを持つ。すると後ろの席にいた元希くんと田口くんがすぐさま言い始めた。
「メイドっていったらミニスカメイドだろう! あのあざと可愛さはたまらねえよな」
「わかる。俺としては絶対白のニーハイソックスを履いてほしい。ガーターはつけるかどうか迷うな」
「だよな! あとは眼鏡かけたり猫耳つけたりして個性をだそうぜ。もえもえきゅーんってな」
いいなぁ! なんていいながら二人してからから笑っている。あの二人の意見に同意なのか周りもそうだな、なんて空気になっている。
ミニスカメイドかぁ、可愛いけれど個人的にはちょっと恥ずかしいから嫌だな。なんて思っていたら田口くんより少し前の席からのんびりとした声が聞こえてきた。
「えー、でも俺はスカートの長いクラシカルメイドさんがいいな」
びしり、と空気が凍るような気配がした。何、どうしたのみんな。さっきの吉水くんの発言そんなに変だったかな? 私としては嬉しいんだけれど。
すると先ほどミニスカメイドがいいといった田口くんが反論をした。
「何言ってんだ吉水。あんなお堅いメイド服のどこがいいっていうんだ」
「えー、あの長袖で襟もついているお堅いところがいいんじゃん。見えないからこそ想像の余地があってさ」
個人的にはスカートの中に武器がしまわれているのが好きー。なんて本当に個人的な考えを続けていう吉水くんの声を皮切りに、周りからどんどんと声があがっていく。
「それなら時代は和ロリメイドだろう! 着物に袴、エプロンにブーツ。それはまさにはいからさん。日本とヨーロッパの伝統を掛け合わせた最高傑作だ。品もあるし可愛らしさもある、最高だろう?」
「はあ、何言ってるの悠。メイドはチャイナよチャイナ!あの天才的発想の良さがわからないわけ?ミニスカチャイナにフリルエプロンをつけて~あるっていうあのあざとさ。あれこそが最高よ!」
千尋さんがそう言い切ると、みんなガヤガヤとやれそれならゾンビメイドがいいとか男の娘メイドがいいなどと話はじめてしまった。どうしよう、収集つかなくなっちゃうよ。
そう困っていたら突然廊下側の一番前の席の机が蹴られて大きな音が教室に響き渡った。しんっと静まりかえったなか、声をあげたのはその机を蹴った張本人の日比谷くんだ。
「さっきから聞いてりゃミニスカだのチャイナだの、うるせーな。ありえねえだろう」
ギロリという音が聞こえてきそうなほど強いまなざしで教室を見渡す。怖い。そんな彼が続けた言葉に私は思わず言葉を失ってしまう。
「メイドはフレンチメイド一択だろうが!! あのざっくり開いた胸元に完全に見えてる丈のスカート、そしてピンヒール!あのセクシーな良さがお前らにはわからねえのか!」
え、怒ってるのそういう理由なの? その日比谷くんの発言に先ほど声を上げた人たちは次々と言い争っていく。
もうどうしたらいいかわからず私はあわあわしていると、担任の望月先生が椅子から立ち上がって私の隣に立った。
「あなたたちそんなに言い争うなら各自好きなものを着るなり着てもらうように頼み込んだらいいでしょう。それでこの話は終わり。もうすぐ時間になるし」
えー、なんて声が上がるが望月先生はそのまま話を終わらせた。正直すごく助かった。私はもうどうしていいのかわからなかったから。
「望月先生、ありがとうございました。本当に助かりました!」
「いいのよ早川さん。それにしてもメイドの衣装で言い争うなんて、馬鹿らしいわね」
ため息をはきながらそんな風にいう望月先生に私はちょっと安心した。よかった、先生もあの状況についていけてなかったんだ。しかしそんな考えは甘かった。
望月先生はどこか遠くを見つめながら続けてこういった。
「メイドは70歳を過ぎた人がなるからいいのであって、高校生の子たちが着ても良さは一ミリもでないのに」
メイド服 いろんなものが あるけれど みんな違って みんないいよね 宮川雨 @sumire12064
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