渋川Cダンジョン/朱雀の扉編
第104話 探索者ギルド本部にやってまいりましたっ。
その48階建てのビルは、新宿区内藤町の一角にそびえたっていた。
すぐ近くには、ここが一級の土地であると言わんばかりに存在する新宿御苑。
事実、一等地である内藤町の物件は希少性が高く、ゆえに
「はへええええええええええええええええええ」
新宿本部の真下から上を眺めている私。
いやぁ、高いね。
屋上から落ちたら絶対、死ぬね。
5階から落ちても死ぬかな。
あ、7階に誰かいる。
何か飲みながら外眺めているけど、休憩時間かな。
てゆーか、こんなに大きなビル必要?
絶対、半分くらいの部屋使ってないと思う。
「首、いった。……中に入ろう」
私はガラスのドアを開けると、新宿本部の中に入る。
入ったところで広がるエントランス。
ひっろっ。
奥のエレベーターまで50メートルはありそうだ。
エントランスには、ソファや観葉植物が絶妙の配置で置かれている。
壁には、ダンジョンが生成されてから今に至るまでの歴史年表パネルが飾られていて、けっこう興味深い。
奥のほうに目を向けると、巨大なホログラムで生成されたダンジョンが見えた。
わっ、すっごっ。
近くに寄って見ると、プレートに〝日本の始まりのダンジョン ~箱根Dダンジョン~〟と書いてある。
ダンジョンだけをくり抜いた形になっているので、まるでゲームの3Dマップみたいだ。
箱根Dダンジョンの最奥にいるボスはなんだったかと思い出す。
そうだ、確かゴブリンロードだ。
どのボスが出没するかランダムではなく、なぜかゴブリンロード固定。
トライアル的なダンジョンということで、敢えてそういった扱いをされているのかもしれない。――エンドラさんの言う〝神〟によって。
巨大ホログラムをまだ見たかったけど、先にやることを済ませることにした。
私はインフォメーションカウンターに行くと、受け付けの綺麗なお姉さんに声を掛ける。
要件を2つ述べると、綺麗なお姉さんは手続きができる場所を教えてくれた。
その場所は受付の左側に進んだ大広間のようなところで、手続きのほとんどはそこで行われるらしい。
エレベーターには乗らないようだ。
えー、窓から新宿御苑見たかったのに。
私は会釈したのち、まずは潜章カード発行窓口に足を向ける。
――そう。
先日の渋谷Bダンジョンの脱出もあり、私の潜章ランクは銅から銀に上がっていた。
ただそれは現在、ギルドアプリのデータ上だけのもの。
つまり、銀潜章だけどまだ正式には手続きが終わっていない状態。
手続きが終わったと言えるのは、潜章カードが手元にあり、その潜章カードを使ってゲートに入れる状態になってからだ。
銅潜章カードは、パスワードとIDの入力をすると郵送で送ってくれるのだけど、銀以上の潜章カードは自ら取りに行かなくてはならない。
なんでも本人確認が重要らしくて、それは探索者ギルドにある生体認証システムで確認するとのこと。
この生体認証のデータはギルドに入るときに皆、行なうものだ。
もちろん、私もやった。
顔、指紋、声紋、あと
このときのデータと差異があった場合、本人ではないと判断され潜章カードは発行されない。
私はどきどきしながら、データの照合を続けていった。
指紋――OK。
声紋――OK。
虹彩――OK。
顔――…………………………………………
え? 照合しないっ? もしかして今日、サイドポニーテール逆だったから!?
顔――OK。
違った。良かったぁ。
結果――本人。
銀潜章カードの発行。
やったぁ。
潜章ランクが鉄から銅になったのがケルベロスを倒した翌日。
それからまだ6日しか経っていないのにもう銀潜章にランクアップできたなんて、いまだに信じられない。
でも事実なんだよなぁ。嬉しーっ。
ごほんっ。
発行窓口のおばちゃんが、早く行けとばかりに咳をする。
見れば、私の後ろにも数人のダンジョンシーカーさんが並んでいた。
やば、す、すいませーんっ。
私は次の要件を片付けるために周囲をきょろきょろ。
すると端っこのほうに目的の窓口を見つけた。
〝手形式の受付はこちら〟
私は急く気持ちのまま、そこへ向かう。
これでようやく私の適性魔法が分かる。
多分、聖魔法だと思うけどもしかしたら違うかもしれない。
でも、違ったところで聖魔法オンリーで戦い続けるつもりだ。
エンドラさんから頂いたエンシェントシリーズが私専用である限り。
じゃあ、一体なんのために手形式をやるんだって話だけど、はっきりできることをはっきりさせないままでいるのは、なんか気持ち悪いから。
この感覚って大事だと思いますっ。
受付を終えたあとパイプ椅子に座る私。
手形式が行われているのは個室みたいだけど、順番が来るまでここで待機しているようだ。
ふと、隣を見れば屈強な男性ダンジョンシーカーさん。
まるでプロレスラーのようだけど、魔法師なのでしょうか。
力でねじ伏せる戦士にしか見えないのですが。
すると個室の中から出てくる女性。
嬉しそうな顔を浮かべながら出てきたところを見るに、それであってほしい属性が適性だったのだろう。
良かったですね、おめでとうございますっ。
私は心中でお祝いの言葉を投げかけた。
「お次の方どうぞ」
受付の方がプロレスラーさん(便宜的に)に声を掛ける。
彼は「うっしっ」と立って、個室に入っていく。
すると聞こえてくる声。
「うそだああああああああああああああああああああっ!!」
ええっ!?
やがて出てくるプロレスラーさん。
彼は、まるでこの世の終わりかのように号泣しながら、大きな背中を丸めるようにして去っていった。
泣くほど!?
大の大人がっ??
順番が次だというのに嫌な光景を目にしてしまった。
私も、もし聖魔法じゃなかったら、しかも適性的に最悪だったら相当落ち込むかもしれない。
手形式。
それは、〝火・水・雷・風・土・氷・闇・聖・無〟の属性毎の、手形の彫られた台座に手の平を置いて、その属性が適性であるか知る方法だ。
属性には色があり、適性であればその色が濃くでて、逆に適性でなければ色はでない。
色の程度で上から、
大いに適性である。
適正である。
どちらでもない。
適正に欠ける
著しく適性に欠ける。
の判断が下されるわけだけど、もちろん狙うは聖属性の〝大いに適性である〟だ。
「お次の方どうぞ」
私の番だ。
よーし、がんばるぞっ。
がんばりようもないのだけど……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます