第45話 弱点発見! もちろんそこを狙っていきますよ。


 隻眼のオゥガにぐんぐんと近づいていく私。

 対してボスと言えば私の動きを注視していて、いつでもこん棒で叩き潰しにきそうだ。


 あと50メートル程の距離に入ったとき、隻眼のオゥガがこん棒を頭上にやり――

「ウボオオオォォッ」の声と同時に振り下ろした。


 あえて速度を落としていた私は、そこで右旋回の全力疾走。

 次に、こん棒が地面をたたく瞬間にジャンプ。

 地響きを回避するためだ。

 

「わっ、わわわっ?」


 思いのほか、飛び上がったので私は驚く。

 どうやら速度に比例して飛距離も上がっているらしい。

 着地が危うかったけど、なんとか転ばずに済んだ。


 今度は左旋回して隻眼のオゥガの背後に近づく。

 こん棒を振り下ろした状態のボスは隙だらけだ。


「てやああああああっ」


 私は無防備な左足めがけて、通り抜けざまにエンシェントロッドでぶったたく。

 続けて右足も。

 バコォンッバコォンッといい音が続く。これは痛そうだ。


 両足にダメージを負ったから後ろに倒れちゃったりして。


 ――なんて期待したのだけど、隻眼のオゥガはちょっと唸っただけで、私をギロリ。


 再びこん棒を、ミンチ四葉にするべく振り下ろしてきた。

 私は最大加速でこん棒の下を潜り抜け、遠くへと退避。


「はぁはぁ……さ、さすがにちょっと疲れたかも。そ、そぅだっ」


 私は隻眼のオゥガの動向を注視しながら、魔法の詠唱を開始。


「我ぁアストライアと契約せし聖なる汝を崇める者。血の盟約に従ぃ魔力マグナの付与を授からん――リカバルッ」


 例の、電球色のようなオレンジ色の光が私を包み込む。

 至高の気持ちよさに包まれたのち、私の疲労はどこかに吹き飛んだ。


「みなさん、やっぱりリカバルってすごぃですっ。どんだけ疲れてぃても一発で大回復ですから。どんな栄養ドリンクより利き目バツグンぇすねっ」



【コメント】

 ・わかった、わかったw

 ・リカバルだけやけに褒める謎仕様

 ・市販の栄養ドリンクと比べちゃあかんだろ

 ・よっちゃん、バトルに集中!でもかまってほしい複雑な心境のワイ

 ・可愛いけど、中二病光線くるからあっち向いて!

 ・俺にとってのリカバルはよっちゃんです♥



 そうですね。バトルに集中です。

 リカバル効果の感動をどうしても誰かに伝えたくなっちゃうんですよね。


 そして隻眼のオゥガといえば、予想通りの眼帯外し。

 先と同じくゆっくりと外していき、赤い目が露わとなる。


 もしかしたら。


 論理的な推理でもなんでもない直観だけど、次に試してみようと思った。


 赤い目から赤い光線が照射される。

 

 あれを食らったらどうなるんだろう。

 という好奇心があるけれど、もちろん私の体で試すつもりはない。


 私は右へ左へと動き、赤い光線を避け続ける。

 リカバル後ということもあり、余裕のよっちゃんで。


 赤い光線攻撃が終わる。

 でも私はそのままでいた。

 魔法を使うでも近づいて打撃攻撃に打って出るでもなく、そのままで。


 隻眼のオゥガもこちらに攻め込んでこようとはしない。

 距離が離れすぎているからなのかもしれない。

 

 だとしたら――、


 痺れを切らしたように、隻眼のオゥガがまた眼帯を外しにかかる。


 やっぱり! 遠距離のときは目から光線攻撃一択なんだ。

 よーしっ。


 私は隻眼のオゥガに向かって走り出す。

 「更なる付与を授からん――」と魔法の詠唱をしながら。


 隻眼のオゥガは中二病攻撃を止める気はないようだ。

 眼帯を三度、ゆっくりと外しにかかり――、


 今だっ。


「ヴァニシングノヴァッ」


 私は中位魔法を使用する。

 発射される4つ光線が、隻眼のオゥガの赤い目に向かっていく。

 隻眼のオゥガはこん棒で消し飛ばすモーションに入ったけど、それは明らかに遅きに失した。

 

 ドンッ、ドドンッ、ドンッ!


 全弾が赤い目付近に命中。


「ウガッハアアアアアアアアッ!!」


 聞いたことのない叫び声を上げて、赤い目を押さえる隻眼のオゥガ。

 こん棒を落として膝を付いた。

 

 間違いないく効いている。

 直観だったけど、あそこが弱点だったのだ。


「みなさん、どうやら赤ぃ目が弱点だったよぅですねっ。直観……あ、第6感的なあれで狙ってみたんぇすけど、大大大成功でしたっ」



【コメント】

 ・第6感に言い換えてるの草

 ・直観でいいじゃんw 

 ・第6感のほうがかっこいいもんね

 ・よっちゃんも中二病かw

 ・隻眼のオーガの全ては右目に集約されていたか

 ・とりあえず弱点が分かってよかった!



 3年前まで中学2年生だったので中二病でもいい、ですよね??

 ところで本当に弱点が分かって良かったですっ。


「グオオオオオオオッ!!」


 隻眼のオゥガはまだ痛そうにしている。

 光線の1つが、がっつり目ん玉に当たったのかも。


 やがて立ち上がる隻眼のオゥガ。

 台東Cのボスはこん棒を拾い、私を睨みつけると、


「ガアアアアアアアアアッッ!!」


 と雄たけびを上げ、正に鬼のような顔をして近づいてきた。


 あ、やばいっ。中距離だと近寄ってきちゃうんだ……っ!


 こん棒を振り上げている隻眼のオゥガ。


 食らってなるものかと、私は何度目かの長距離退避。

 するとやっぱり隻眼のオゥガは追いかけてこない。

 まるでそういったプログラムが組み込まれているかのように。


 では遠距離攻撃は、目から光線のままだろうか。

 だとしたら先と同じように、近づいてからヴァニシングノヴァを放つのだけど……。


 でもこちらの魔法を警戒して、目から光線を使ってこないかも。


 対峙する私と隻眼のオゥガ。

 にらみ合う私と隻眼のオゥガ。

 視線をバチバチとさせる私と隻眼のオゥガ。

 お互いの動向をさぐるような私と隻眼のオゥガ。


 って、いつまでこのまま!?

 絶対、警戒されちゃってるっ!



【コメント】

 ・動いたほうが負けみたいなw

 ・立ちんぼの隻眼のオゥガが滑稽すぎて草

 ・ある意味冷戦状態www

  突如始まる根競べw

 ・ゲームか!!

 ・オーガ氏、魔法に対して警戒警報作動中

 


 いや、この根競べ状態は予想できなかったです、はい。


 どうしよう、攻め込むしかないのかな?

 でもこっちから攻撃を仕掛けたところで、弱点が封鎖されている状態じゃ――、

 

「グオアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 突如、真っ赤な顔をして大声を張り上げる隻眼のオゥガ。

 するとこん棒を振り上げて――投げてきた。


 うっそっ!!


 その攻撃も予想外だった私は一瞬たじろぎ、走り出しが遅くなる。

 ぶん投げられたこん棒はなんとか避けたものの、揺れる地面に足を取られて私はこけた。ヘッドスライディングみたいに。


 いったぁぁい――はずなのに、全然、痛くない。

 なんでだろうという疑問はさておき、この状態は超やばい。


 早く起きないと、とどめだとばかりに目から光線を出してくるかもしれない。


 ……。


 え? それでいいじゃんっ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る