第29話 瞬間、精神世界を重ねて
黄金の稲穂畑。
「左に岩があるのでその上に登って両腕を伸ばしてください」
緑の森林。
「千切白菜爪!!」
黄金の稲穂畑。
「その勢いでつる草を掴んでジャンプ。勢いが足りないと死んじゃいます」
緑の森林。
「千切白菜爪!!」
黄金の稲穂畑。
「その場でしゃがんで神様にお祈り」
緑の森林。
「千切白菜爪!!」
黄金の稲穂畑。
「今のコアラさんの攻撃で木が倒れて道ができましたので前転しながら移動してください。勢いが足りないと死んじゃいます」
緑の森林。
「うおおおおおお!!でんぐるがええしいいいいいいい!!!!」
「バカな!何故当たらないコア!?人類が我がコアラ族を上回る反応速度で対応できる感覚器官を持っているだとっ!!!?あり得んっ!!!」
紙一重の回避を続けるウィンゲート達。それに対し奥義を繰り返しすもいずれも躱されることにコアラは明らかに同様し始めていた。
黄金の稲穂畑が出現する。
「卑弥呼様。お持ちしました」
卑弥呼と似た様な材質。だがデザインは簡素。
「ご苦労様。伊予」
伊予と呼ばれた娘は十代前半位の年齢だった。
「なんだ貴様は?」
見知らぬ人間にリーファが怪訝な顔をする。
「あ、申し遅れました。卑弥呼様にお仕えしている祭女で伊予と申します」
「メイド?!もしかしてメイドなのか?!しかしメイド服はどうしたのだっ!!?」
「リーファさん。二千年前ですよ?メイド服なんてありません。そもそも祭女侍女の服装は世界の諸地域によって異なります。アステカ、エジプト、インド、中国、日本。また王宮か市中の商家なのによっても変わるでしょう」
「うおおおお!!!まるで魔法学校の先生ミタイダアーーー!!!」
「いや。エリザベス教授は先生だから」
伊予が運んできたのは足に小さな車輪がついた木製の箱だった。
「エリザ、卑弥呼さん」
「あ、どちらでも宜しいので」
「まあ。一応大学以外では卑弥呼さんでいくか。卑弥呼さん。これジュークボックスに見えるんですが」
「ジュークボックスですよ」
伊予が言った。
「そうか!卑弥呼の国にはジュークボックスがあるのか!」
「ねえよ!二千年前だよここ!!」
「今エリザベスさんと精神世界で繋がってますからねえ。そっちから引っ張って来たみたいですよ。こうやって」
伊予は二十五セント硬貨を放り込んで、そしてスタートボタンを押した。
しかし、なにもおこらなかった!
「あれ?」
伊予はもう一度スタートボタンを押した。
しかし、なにもおこらなかった!
「ちょっとどいてください」
卑弥呼はジュークボックスの正面に立つと。
軽く蹴りとばした。
レコード盤が動き出し、演奏が開始される。
「うん。やはりアメリカ製は信頼度が違いますね」
「それって褒め言葉ーー??!」
「なんだこの音楽は?!」
「FryMeToTHEMOON、近くまで差し迫った近未来の出来事と言えばこの曲ですね。まあ対応出来なかったら無意味になっちゃうんですけどね」
「ジャズみたいだけど聴いたことないなあ」
「そのうち大流行しますよ良い曲ですから。じゃあ元の精神感応切りますんで元の世界戻ったら62秒で決着をつけてくださいね」
「あ、出来ないとお二人とも死んじゃいますのでご武運を~~~」
伊予は手を振った。
緑の森林が現れた。
ハイジャンプ。木の枝につかまる。折れた木の枝をコアラに向かって叩きつける。
ウィンゲートはショットガン。リーファは斧を投げつける。
連続でコアラが通常攻撃を繰り出して来るので後方への連続バク転で回避する。樹齢千年はありそうなクスノキがあるので盾にする。クスノキの裏に小石が沢山落ちてるので投げつける。必殺技が飛んでくるので左右に分かれて回避。
右と左からボディーブローかました後廻し蹴り。
吹っ飛んでバランスを崩したところにハイジャンプキック。
地面の土を抉りながらコアラを押しとばしていく。その先には沼があった。
沼面に爆衝する。キノコ雲に似た形状の沼の泥水が打ち上げられた。
沼の水面に泡が立つ。そこから間もなくウィンゲートとリーファが顔を出した。
「ぶはぃ!や、やったか?!」
「い、いや?わ、判らん!!私はあの様な戦い方をしたのは初めてだ!!上手くいったかどうかなど検討もつかわ」
「グアーーーン!!」
そしてコアラも顔を出した。
「生きてやがった!!」
「おのれっ!!」
リーファは腰の斧に手を伸ばし、先程投げつけてしまった事を思い出した。ウィンゲートも同様である。跳び蹴り等という慣れない行為をした結果銃を両方とも落としてしまった。
もちろん探せばすぐに見つかるだろうが、目の前のコアラはそれを赦してはくれないだろう。
「グアーン。我々コアラよりも身体能力で劣る人類がマーシャルアーツ、キック。それを切り札にすると言うのは些か無理が在ったのではないかね?後ろの地面が抉られた場所を見るんだな。俺が爪で引っ掻いて受け身を取った痕が在るだろう?」
思わずウィンゲートは見てしまった。確かに地面に鋭い爪痕が存在する。
「では今度こそ本当にサヨウナラだコア。地面ではなくお前達の体に俺の爪痕を」
鳴り響く銃声。
「コアーーーー!!」
額から血を流して後ろに倒れるコアラ。コアラの流した血に引き寄せられ、沼に住むヒル達が吸い寄せられていった。
ウィンゲート達が銃声をした方を向くと。そこにはウィンチェスターライフルを構えた卑弥呼がいた。
「お前、稲穂畑にいた筈・・・。そうか!瞬間移動の魔法を使ったのだな!!」
「違いますよリーファ。あれは私の精神世界をお二人と繋いでいただけで」
「卑弥呼さん。銃使えたんですか?」
ウィンゲートの質問に。
「ええ。エリザベス教授は銃も撃てますし自動車の運転も出来ますよ。もちろん英語も話せます。彼女はアメリカの大学教授ですから」
そう言いながら自動車に戻っていく。
助手席のダイアー教授は。
「コアラじゃなくて巨大な吸血ヒルがいいーー」
と、うめき声をあげていた。
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