第19話 負けるのは嫌なので戦闘系に極ふりしたいと思います
「そうか。私が気絶している間にそんな事件があったのか・・・」
昼食用に購入したタラノフスキーベーカリーのサンドイッチを森の中でウィンゲート達は頂いていた。
「気絶というか半分意識ありましたよ教授。意味のないことを呟いてましたが」
「つまらないジョークだなウィンゲート君。まるで私が一時的狂気に捕らわれ五、六時間ほど心身喪失状態になっていたみたいじゃないかね」
「みたいではなくなってたんです」
「にしても完全に迷い混んでしまいましたね」
卑弥呼・エリザベスの言うとおりである。
アーカム方面に繋がる道路はミオンネの手はずにより村人達に素早く封鎖されてしまったいた。もし強硬突破しようとしていたら間違いなくウィンゲート達はガトリングガンの餌食になっていた筈である。
やむなく反対方向に進路を取り、更に村人達の追撃をかわすために進路変更した結果森に迷い混んでしまったのである。
「それにしても驚きました。普通の村人達だと思っていたのに、まるで何かの寄生虫が巣くっているかように突然狂暴化して武器を持って襲ってきたんですからね」
「ウィンゲート君。アメリカの農村ではよくある事だよ。その程度の事で君は驚いていたのかね?」
「よくあることなんですかっ!!?」
「まあ君は人生経験が浅いからな。私の半分も生きていない。大丈夫。あと百年もすればこれは世界に誇るアメリカの常識になっている筈だよ」
「いやそんな常識世界に誇りたくありませんよっ!!」
「冗談はさておき村人達が我々を襲撃してきたのはそれなりの理由があるんだよ。もちろん寄生虫だの宇宙人に操られいただのパッと見た目に普通の村人では有るが実は魔法で外見を誤魔化していて村人全員がゾンビで宿屋に泊まると深夜に突然襲ってくるとかそういのではない」
魔法と言う単語に約一名が素早く反応した。
「もしもしマイルズ様ですか。先程は失礼しました。村人の正体が判明しました。一見すると普通の人間に見えますがその正体は村人全員がゾンビであり侵入者を油断したところを襲ってくる罠だったようです。私も危うくやられる所でした。はい。探索を続けます」
「そっとしておきましょうウィンゲートさん」
「そうですね。エリザ、いえ。卑弥呼さん」
こうして。アメリカ国内の間違った認識は偉大なるマイルズ様にはそのまま届けられる事になる。
「ウィンゲート君がアーカムの役場の人と契約した土地売却書類。覚えてるね?」
「はい。貯水湖を造るための物ですが」
「あれ。結構建設予定地広いんだよ。君がお父さんから譲り受けた屋敷はアーカム市に近い位置にあるが、予定地はクレーターを挟んで反対側のクラークス・コナーズをスッポリ沈める範囲でね」
「なんで村を沈める必要があるんですか?」
「じゃあ農業。食べ物を手に入れるにはどうすればいいと思う?」
「クリエイトフード!!」
リーファは両手を前に付き出して叫んだ。なお彼女はそう言う魔術を見たことが有るが、その魔術は使えない。
ああ!ああ!なんとういうことだろう!
リーファは!リーファは!
アメリカの法律の知識もなければ!
地球の生物学、人類学、考古学の知識もない!(自分の故郷の世界のものは百パーセントある)
宝箱の鍵開けもできないしポーションガブガブ娘だから応急手当ての知識もない!
自動車どころか自転車すら乗れない!
でも馬車には走って追いつけるからダイジョブ!
「そっとしておきましょうウィンゲートさん」
「そうですね卑弥呼さん」
「農業、或いは放牧をするためには広くてなだらかな土地。そして適度に水が引きやすい場所がよい。山の上より山の下」
「あ、ダイアー教授。イタリアに古代ローマ時代に造られた山合いのブドウ畑があるらしいですよ」
「そういう特殊な例は参考にならん。今話題にしているのは大量の人口を維持するための主要穀物等についてだよ。それで、だ。今から百年以上昔アーカム市、もちろん当時はアーカムタウンだな。鉄道も自動車もない。交通手段は馬車だけなので膨れ上がるであろう人口に対し十分な食料を供給すべく適切な政策を取った。当時のアーカムの町長は大変有能だった。町の中央区の土地を持っていたインディアンを追い出して居留地に配置、彼等の伝統とは違った仕事を与えた」
「ふん!お前達人間のやりそうなことだな!」
「否定は出来んな。事実そうであるし今回は更に移住させた土地から更に他に移れと命令しているのだから。おそらく合衆国各地で似たような案件が多発しているだろう。ただ」
ダイアー教授は食後の一服を始めた。
「クラークス・コナーズの移住責任者は彼等に非常に好意的でね。何と言う名前だったか。思い出せんね。大学図書館か市役所に資料があるだろうが。まあそれよりも重要なのはその人物が彼等のトーテム信仰に大変理解を示してね」
「トーテム?」
「大雑把に言うと動物をイエス・キリストの代わりに崇め奉ると言う宗教なのだが」
「何だが怪しい気配がしますね」
「ところが事占いに関してはびっくりするほど当たると評判でねえ。ほら観たことない?町中で鷲だの蛇だの肩に乗せて手に水晶玉とかカード持った占い師の女性」
「あー月一くらいに駅前で見るかも」
「それで先月亡くなった村長が妙な預言遺しててね。村人が殺気だっているのもそのせいだよ」
「預言?」
「えーと、確か新聞に載ってたのは」
「インスマスの大海アーカム東遥か東深淵の水底未来の過去の妄執極東島国の黄色い猿里を包むは屍の山汝願いは叶わず汝は見は未来しかして現在しかして過去けぼはっ!」
「なんですか卑弥呼さん?」
「あ、これスッゴく特徴的な文章だったんで覚えてたんですよ。意味はまったく判りませんが」
「有り難う卑弥呼君。まぁ東のアーカムの連中のせいで村人が皆殺しにされて村が貯水湖の底に沈んでしまう。大量の遺体と共に。一般的にはそう解釈されとるんだよ。無論役場連中はそんな事をするつもりは毛頭ないんだろうが。村人はもう溜池戦争だと。実際問題アーカム市が計画している人工貯水胡が完成すれば村は湖の底に沈んでしまうわけだからな。そういうわけで村人達はあのように愛国者精神ならぬ愛村者精神溢れた住人だらけになってしまったというわけだよ」
「成る程。だいたいわかりました」
「もしもしマイルズ様ですか?この世界には村人が突如バーサーカーになってきて襲ってくる村があります」
「おーいリーファー。そろそろ出発するぞー」
「ウンコダサセローー!!」
「そうかーはやくすませろー」
ウィンゲートは最早リーファの行動に何ら疑問を抱かなかった。
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