第17話 出会って5秒で推しになる
ナンパ男から助けてくれたナオキくんと二人で逃避行。まるで少女漫画のような展開に、私の乙女チックな
手を引かれながらコンビニから少し走り、自宅アパート近くの路地に入ったところで止まった。
「えっ、ええっ、ふへぇ~っ」
いまいち状況がつかめていない私は、アニメのような声を出してしまった。ちょっとヤバい女だが、声は可愛いので許して欲しいところだ。
そんな私を恥ずかしそうに見つめるナオキくんが、照れながら口を開いた。
「あのっ、す、すみません。俺の友人が失礼なことを」
「えっ、あっ、ども……」
相変わらずコミュ障っぽい返しをする私だ。もっと年上のお姉さんらしい余裕を持った会話をしたいところなのだが。
「えっと……あの、俺……」
「は、はい……」
「実は……その……す……」
「えっ?」
まるで愛の告白のような雰囲気を漂わせながら話すナオキくんに、私の顔が紅潮してゆくのが自分でも分かる。
「す、す……」
「す?」
「応援してます!」
ガクッ!
おいおいおいおい!
何で『す』から『お』になるんだよ!
紛らわしいわ!
てっきり好きと言われると思い、体の底にある神秘の泉に聖剣が戻る妄想までしてしまったというのに。
ベディヴィアァァァァ――――!
そんな神話っぽい妄想はおいておき、ナオキくんは話しを続けている。
「その、あの……お姉さんは
ナオキくんの言う動画とは、私の顔バレした放送事故動画のことだろう。やはり私が
「も、もしかして、投げ銭のナオキくん?」
「はい、俺です。推しですから」
やはり毎回投げ銭してくれるナオキは彼だった。
「あの動画を見てから……その、良いなって」
「えっ! でも、よりによって……あんな下品な動画で……」
気になっている男子に自分の下品な放送事故動画を見られているかと思うと、もう恥ずかしくて逃げ出したくなってしまう。
「自分でも変だと思うのですが、あの放送事故動画を見てから、ずっと
これもう私のこと好きなんじゃないのといった反応をされ、つい余計なツッコミを入れてしまう。
「あーっ、もしかしてオカズにしてるとか?」
「ち、違いますから!」
「あっ、ご、ごめっ……」
変な空気になってしまい沈黙が流れる。
「あの、ホントはオカ……いえ、何でも」
「は?」
お、おい、何を言おうとしているんだ! 冗談のつもりだったが本気で〇いたのか!?
まさか、私のこと好みとかな。いや、無いか。
「でも、最初に好きになったのは、引っ越しの挨拶に行った時で……」
「ふえっ」
ま、マジかぁああああああああっ!
好きって言ったよな。これワンチャンありなやつ? もしかして私、年下の子と付き合っちゃうのか? 事案発生に……。まてまて、真剣交際ならOKなのか
「す、凄く好みで」
「あんなヨレヨレTシャツの女を?」
「俺、シンプルなファッションの女性が好みで」
「ぶっちゃけトークだし下品だし?」
「裏表ない優しそうな良い人です」
「パンツ一丁だけど?」
「そこは勘弁してください……」
刺激が強過ぎたのか思い出したのか、彼の顔が真っ赤になっている。
「まさかリアル私を好みとか?」
「出会って5秒で恋に堕ちたってやつです」
「
「それです」
息もピッタリで居心地がいい。これは完全に脈アリだろう。彼氏いない歴イコール年齢の私にも、ついに恋人ができてしまうというやつか。しかも年下の。
「ぐふっ♡ しょ、しょうがないなぁ。ナオキくんがそう言うのなら――」
「でも安心してください!」
「ん?」
「
「ん゛?」
遠くから推す? それって付き合えないのか?
「俺、本当は
ガァアアアアアアアアアアア――――ン!
もう完全に私の中では彼氏彼女の関係になっていたのだが、無情にも彼の中で大人気VTuberは恋愛禁止らしい。こんなのってないよ。
「じゃあ、これからも応援してます。ガチ恋勢だけど、絶対に誘ったりしないので安心してください。では」
そう言って、ナオキくんは行ってしまった。
VTuberの世界ではネットにテレビにCMにと人気急上昇の私だが、恋愛に於いてはコミュ障喪女のままのようだ。
私の
「ふっ、いいもん、絶対トップランカーになってやるから。私は見果てぬ夢を追いかけ一生を費やす
どんより曇った空に向かって
恋に破れた天を仰ぐ私だが、この時、
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