第13話 テレビでもやらかしそうなぺろみ

 チャーチャッチャチャー!

「はい、お昼の情報番組、情報ワイド昼スク。司会はおなじみ垣根かきね吉広よしひろです」


 いつもお馴染み、お昼の情報番組昼スクが始まる。


「今日は凄いゲストが来てるんだって?」

 カキネのフリに女子アナ五色ごしきあやが答える。


「はい、今日のスペシャルゲストは、今を時めく話題沸騰の大人気VTuber煌羅きららぺろみ自称17歳さんに来て頂けましたー」


 大人気と紹介されるのには恥ずかしいが、女子アナの紹介で私がスタジオの液晶画面に登場する。当然、リモート参加だ。


「はーい、皆さんこんにちは。吹けよ風! 轟け爆音! 銀河を超えてぶちかませ、私のメガ〇〇ピーキャノン! 魔喪女系銀河のブヒ姫、煌羅きららぺろみ参上! ブヒィィィィィィー!


 いつものキャッチフレーズを叫ぶ私。放屁の部分にはピー音を入れてある。

 通常VTuberがテレビに出る場合は、可愛らしい演出と相場が決まっているが、私の場合はまるで芸人枠のようだ。


 何やら局の方では煌羅きららぺろみではなく俵田たわらだ麻衣まいに出演して欲しいと打診があったそうなのだが、まさかの生放送で顔出し公開処刑されるわけにはいかない。



煌羅きららぺろみさんと言えば、先日の放送で話題になった、ふっ、ふふっ……失礼しました。ほ、放屁炎上事件で有名になり――」

「笑っとるやないかい」


 五色ごしきアナが紹介途中で笑ってしまい、途中でカキネのツッコミが入った。


「すみません、ふふっ、あははっ。し、失礼しました。そして、特技の放屁を活かして大手製薬会社の整腸剤CMにも抜擢され一躍時の人に。ぐふっ」


 何がそんなに面白いのか、女子アナの笑いが止まらない。困った小粋な陽キャ女子だ。



「はい、今日はこのメンバーでニュースを伝えて行きます」


 女子アナの笑いが止まらず、無理やり進行するカキネに合せて私も声を上げる。


「よろしくー! ブヒブヒっ」



 何やら複雑な表情をしているコメンテーターを横目に、笑いを我慢する女子アナがニュース原稿を読み上げた。


「最新のニュースです。本日の日本時間午前八時頃、ヨーロッパ東部の天然ガス施設で爆発があり、事故と事件の両面で捜査を進めているとのことです」


「はい、今はガス代も値上がりして大変ですからね。煌羅きららぺろみさんはどうですか?」


 カキネが私にコメントを振る。


「そうですね、最近の国際情勢でガス代や電気代も上がってますからね」


 最近は登録者も増えCMにも出たが、まだお金が振り込まれておらず生活は厳しい私だ。


「なるほど、ガス漏れ事故を起こした煌羅きららぺろみさんだけに、元栓を締めないとならないわけですね。うぷっ」


 絶妙のタイミングでボケを入れる五色ごしきアナ。実はアナウンサーではなく芸人なのでは?


「そうなんです、元栓が緩くてブーブー……って、あ、あれはノイズが入ったのであってガス漏れじゃないですから!」

「そういう設定でしたか」

「設定じゃねーよ!」


 しまった。つい、ツッコんでしまった。



 そんな私のノイズ主張はスルーされ、話題は次のニュースへと移る。


「今、国会で問題になっているのは議員の失言です。与党自国党の絵路えろ議員が『ネエチャン良いおっぱいしてるな』と発言したそうでして。この発言を受けた立社党の砂土さど議員は、『このブタの分際で』と返し、議会が紛糾しているのですが」


 五色ごしきアナの読み上げに、私はズッコケそうになる。危うく気が緩んでブボッとやるところだった。


 くだらない。おっぱいとかどうでもええわ。



 この話題に政治評論家のコメンテーターが辛口コメントを述べる。


「議場でおっぱいとか議会への冒涜ですよ。これは議員辞職するべきですよ。ボクは許せないな。審議を止めてでも徹底追及すべきだね」


「ブタ発言はどうですか?」

 カキネが質問する。


「ブタは意外と知能が高く人間と近似性があるんだよ。ブタ発言は問題ないと思うな。見たままを言っただけだし」


「良いおっぱいも見たまんまだよ!」


 政治評論家のコメントが面白くて、つい余計なツッコミを入れてしまった。大真面目な顔で面白コメントするとか、このオッサンかなりのやり手だな。


 しかし、これには元から私を快く思っていない政治評論家の顔が怒りで紅潮する。


「キミは失敬だな。年長者は敬うものだよ。これだから最近の若者は」


「そ、そうですよね。時と場合によっては『ブタ』は誉め言葉やご褒美になりますよね。私も年下の美少年に『このメスブタ!』ってケツをペンペンされたらグッときますし」


「な、ななな、キミは何を言っているんだ!」


 一触即発になった場面で、カキネが割り込んできた。

「はい、一旦CM行きます」



 放送コードに引っ掛かりそうな場面もあり、ちょっと先行き不透明なテレビ出演は続く。私の放送事故が先か、オッサンがブチギレるのが先かのチキンレースのようだ。


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