第11話 オタクに優しい喪女
ワイドショーでの公開処刑と引き換えに、大きく飛躍した私のWeTubeチャンネル。ただの下品な放送事故喪女が、今やトップ100に入る輝かしいランカーである。
トップランカーといえば、どの子も可愛くて明るくて歌も上手くて一芸も二芸ももったキラキラした存在である。
しかし、私ときたら
「よし、やるぜ!」
いつものように部屋着のTシャツとパンツ一丁で気合を入れる。今日の配信の始まりだ。
「吹けよ風! 轟け爆音! 銀河を超えてぶちかませ、私のメガ放屁キャノン! 魔喪女系銀河のブヒ姫、ついでに今を時めくCM女王、
少しアレンジを入れてしまった。CMはWeTube動画内でも流れるのでテレビを観ない人でも知っているはずだ。
さっそくチャット欄には整腸剤CMのコメントも流れ出す。
:出たよ、CM女王。
:まさかの事態
:ぜってーノイズじゃねぇ!
:ガスキエール飲んだか?
:勘違いしないでよね♡
:ツンデレか!
:屁ンデレ
:アホか!
「おまえら、私がCM女王になって遠い存在になっても、変わらず応援してくれよな」
:ならねーし!
:熱愛も発覚しないし遠い存在にもならない
:ないわ
:しゃーねえ、応援してやんよ
:俺たちのぺろみ
「うへへぇ、皆の応援が嬉しいぜぇ」
:調子のんな
:またやらかしそう
:次は消臭剤のCMか?
:突然の屁も安心、プシュー!
:臭そう
「臭くねーし! 良い匂いの女子だから!」
:良い匂いw
:それは無い
:前は臭いのブーブーしてるって言ってたぞ
:女子ではない
:喪女OLっぽい
:だがそれがいい!
「くっ、やっぱり容赦ねえな。まあ、キラキラ女子じゃーねえな。引きこもってたし」
:ヒッキー
:やっぱり
:だよな
:俺と同じだ
:応援します
:安心のぺろみ
意外と共感する意見が多いようだ。今の時代はパワハラやモラハラに、SNSで見せつけられる格差社会と、様々な要因で自己肯定感が下がることが多いのだろう。
:ナオキ¥3000 元気出してください
そこに投げ銭の色付きコメントが表示された。
「あっ、ナオキ君ありがとう。この前の人だよね。ありがたいけど、無理しなくて良いからね」
ナオキという名に見覚えがあった。先日も投げ銭してくれた人だろう。私を応援してくれる人がいるのは、本当に心強く感じる。
:まめ太郎¥300 しゃーねえな
:深淵のルイ¥200 ほら
:D shuffle¥500 飯の足しにしろ
:マンタ¥100 ほらよ
:再演なる岡本¥300 まあ、頑張れ
次々と投げ銭が続く。
「うおおおおっ! 皆ありがとぉぉぉぉ! でも安くね? 嬉しいんだけどさ」
ちょっと文句も言いながらも応援してくれるのは凄く嬉しい。働いていた頃は、毎日上司に罵倒され自分は無価値な人間だと思っていたくらいだから。
そんな中、チャット欄に衝撃的なコメントが表示される。直接私に相談するような内容だ。
:七子¥10000 ボクも数日前から引きこもってます。会社で上司のパワハラに遭い、出勤しようとするのですが、どうしても足がすくんで動けません。もう生きる希望も失いました
えっ!
なにこれ?
これマジなやつだよね!?
「
私は何故か直感した。自分も同じよな目に遭ったからだろうか。負のスパイラルに入ってしまうと、どんどん気持ちが沈んで危険な状態になるのだ。
「一番大事なのは七子さん自身なんだよ。会社なんて休めば良いし、ブラックなら辞めても良い。真面目で責任感の強い人は全部背負っちゃうから。だから、今は休んで美味しいものでも食べて。そ、そう、甘いものとか。それで、私の炎上動画を見て。そうすれば、こんなアホな喪女でものさばってるんだって笑えるでしょ」
一気に捲し立てるように喋ってしまった。気の利いたセリフも出てこないが、これが私の精一杯だ。
パワハラやイジメをされた人が酷い目に遭うのは嫌なのだ。真面目な人が損をする世の中は間違っていると思うから。
:七子¥1000 少し元気が出ました。今からコンビニで甘いものを買ってきます。
「よ、よかった。少しでも力になれたなら嬉しいんやで」
ちょっとガチになってしまって皆が引いていそうで心配だったが、比較的チャット欄は好意的なようだ。
:優しい
:ぺろみ、良いとこあるな
:優しぃぃぃぃーん!
:ブサだけど性格は良さそう
:可愛いだろ
:オタクに優しそう
:オタクに優しい喪女
:ギャルじゃねーのかよ!
こうして炎上続きの
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