第10話 話題の女
そこから私の快進撃は続く。
なんと、私のCMがネットで話題となり、お昼の情報番組、いわゆるワイドショーで取り上げられたのだ。
情報ワイド昼スクでVTuber
チャーチャッチャチャー!
『はい、お昼の情報番組、情報ワイド昼スク。司会はおなじみ
司会進行のカキネが挨拶すると、さっそく話題のニュースに入る。
『今、動画サイトやSNSで話題になっているVTuberが凄いことになってるらしいね』
隣にいる小綺麗な女子アナが相槌を打ちながら説明を始めた。
『はい、皆さんVTuberってご存じですか? あっ、コメンテーターの皆さんも知ってるみたいですね。今、最もホットな話題と言えば、オナラを武器にして大人気となった
世界情勢は混迷し国内の景気も悪く、人々は値上げラッシュと冷え込む給料明細に苦しんでいるというのに、このワイドショーときたらトップニュースが放屁の話題である。
「おいおい、私は自称とは言ってないぞ。なんで皆、私の名前に自称17歳と付けるのだ。てか、オナラを武器にしてねーよ! い、いや……してるけどさ……」
私の独り言は他所に、テレビでは女子アナの説明は続く。わざわざ
『この可愛らしいアニメキャラなんですが、何と動いてファンの方々と対話できるんですよ』
「いやいや、そんな前置きいらないだろ」
『そして、この可愛らしいキャラの中の人が放送事故をしちゃったことで大騒ぎになっていまして』
『中の人って言っちゃダメらしいですよ』
大学教授兼ITジャーナリストの男がツッコミを入れた。若者文化に精通しているそうだが、いつも若干ズレている気もしないでもない。
『あっ、そうなんですね。でも、この
「おいおいおいおい! VTR出すのかよ! 許可出してねえぞ。ま、まさかな……」
私の心配などお構いもせず、無情にもテレビ画面にリアル私(
辛うじて顔にモザイクが入っているが、最近の攻めているAVくらい薄いモザイクで顔バレしていた。
「隠れてない! 顔隠れてないから! 何してくれてんのよ!」
私の叫びも空しく、全国放送のテレビ番組でヨレヨレTシャツとパンツ一丁の私が放送事故する映像が流れ出す。
もはやこの番組が放送事故だろ!
『ブボッオオッ!』
『おっと、デカいのが出ちまったぜぇ。くっさぁ! 全国の男子諸君、女子はオナラしないと思ったら大間違いだぜ。人前では絶対しないけど、部屋ではブーブーしまくりよぉ。
「まてまてまてぇーい! 今の音加工してるだろ! あんな大きくないし長くもないはず。くっ、これが昨今の偏向報道かよ。自由過ぎるだろ……」
ネットをしていないお茶の間の高齢者にまで、私の黒歴史が広まってしまったようだ。なんの羞恥プレイだよ。
番組では、私の羞恥プレイ映像が流れた後でコメンテーターの紹介が始まった。そのまま流れでコメントもしている。
『時代は変わったね。ボクの頃は女性がオナラをするなんてとんでもないことだから。アイドルはオナラしないって信じられていたし。でも、ちょっと下品だね……』
政治評論家の高齢男性コメンテーターの反応だ。
『今でも同じですよ。カメラの前でオナラするなんて品が無さ過ぎです。いくら炎上商法でもやり過ぎですよね。ああっ、私まで恥ずかしい』
エッセイストの中年女性コメンテーターの有難いお言葉である。
『彼女は賢いと思いますよ。これ、狙ってやったとすれば凄い有能な女性だと思います。今はウィーチューバーやブイチューバーって星の数ほどいますからね。その中で一気に人目を引く為に、恥を忍んでブリッとやったんでしょね。実は計算高い女性ですよ』
大学教授でITジャーナリストの男性コメンテーターが解説する。全く計算でも狙ってもいないのだが。
「ううっ、くぅううっ……。わた、わたし……恥ずかしいっ! もう、お外歩けないよぉ」
こうして黒歴史は全国区、いや全世界区となり、恥と引き換えに私のチャンネルの登録者数は50万人を超えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます