19話:地獄へGO!!

 これまであらすじ。

 閻魔王の娘:ネックに奪われた「タンたんの身体」を取り戻す為、ちょっくら地獄へ行くことにした。

 おわり。



 ■誰でも出来る地獄への行き方(初級編)■



 ~ ミッション1:地獄からの使者を見つろ!! ~


 今一度おさらいしておくと、この異世界『ヴァルハバラ』の住人は全員が違法の転生者だ。

 その違法転生者を捉えようと、天国からは神兵が、そして地獄からは魔獣が定期的に送られて来る。

 ネックの様な魔獣使いが直にやって来ることもあるが、どちらかと言えば魔獣だけを送り込んでくる事の方が多い。


「――いた。仕事せずに呑気に寝てる魔獣が」


 魔獣だって人間と同じだ。

 個性豊かな面子が揃っているので、中には仕事をサボって昼寝するヤツもいる。

 今回は町外れの丘でお昼寝していた、地獄の魔獣:ニャジリスク(顔が猫の大蛇@可愛い)がターゲットだ。



 ~ ミッション2:地獄の魔獣:ニャジリスクから『世界扉ポータル』を奪え!! ~


 聞いた話では。

 リバ子様と再会した【死出の山シデノヤマ】は全ての世界に繋がっているらしいが、死物しぶつの出てくるあんな場所へ行かずとも、世界を行き来することは可能だ。


 その証拠に、神兵や魔獣達は毎週のように飽きもせず『ヴァルハバラ』へとやって来る。

 奴等が通ってくるのは【死出の山シデノヤマ】ではなく、『世界扉ポータル』と呼ばれる持ち運び可能なゲート。

 昼寝中のニャジリスクの首に掛かっているペンダントがそれだ。



お前の物は俺の物ジャイアニズム



『にゃじゃ~♪!?』


 昼寝していたニャジリスクから、俺は何の問題も無く『世界扉ポータル』を奪った。



 ~ ミッション3:地獄へGO!! ~


 『世界扉ポータル』を手に入れたなら、もう地獄へ行ったも同然。

 「地獄 ⇔ ヴァルハバラ」と書かれたペンダントの中央をカチッと押す。


 すると、目の前に紫色のモヤモヤとした「如何にも何処かに繋がってます」と言わんばかりのゲートが出て来た。

 そのゲートを怖がらずに通れば――地獄への移動は完了だ。



 ■



「ここは……魔獣牧場か」


 ゲートを通って出て来た先は、“骨の草原”が広がる広大な牧場だった。


 ちょっと何言ってるかわからない人は、まず普通の草原を思い浮かべて欲しい。

 青々とした草が広がる草原だ。

 その草原の「草」を「骨」に差し替えて貰えば、骨の草原の爆誕となる。


 近くには水場となる真っ赤な血の池があり、それを反映したのか真っ赤な空が地獄の空を覆っていた。


 そんな骨の草原で、沢山の魔獣がのんびりと過ごしている。

 最近見た魔獣:ニャルベロスや魔獣:ニャジリスクに、ドラゴンの魔獣:ニャラマンダーや、空飛ぶ魔獣:ニャツァコトル等、多種多様な猫顔の魔獣達だ。


 ちなみにパッと見で一番数が多いのは魔獣:ニャウシだが、これは最もメジャーな食用の魔獣なので数が多いのは当然だろう。

 なお、ニャウシは猫の顔をした身体が牛の生物で、キモ可愛いと評判(?)だったりする。


「お肉が沢山……」


 ジュルリ。

 お肉の群れ(魔獣達)を見ながら舌なめずりをすると、お肉の群れが「ビクゥッ」と身体を震わせて、俺から一斉に距離を取った。

 どうやら実力差を弁えているらしく、おかげで無駄な争いをせずに済む。


 ブルブルと震える魔獣達を尻目に、俺は魔獣牧場から遠くに見える“地獄の街並み”を目指して歩き始めたのだった。



 ――――――――

 ――――

 ――

 ―



 さて、ここで一つ質問だ。

 “地獄の街”と聞いて、一般的にはどのような街を想像するだろうか?


 亡者が彷徨う廃墟の様な街?

 それとも、近未来感あふれる高層ビルが立ち並ぶ街?


 後者を思い浮かべた奇特な人は、正解だ。


「いやぁ~、久しぶりに地獄へと来たが、相変わらず未来感が半端ねぇな」


 俺を出迎えてくれたのは、見上げる程にバカでかい高層ビルの圧迫感だった。

 信じられないかも知れないが、今の地獄において100階建て越えの超高層ビルは当たり前。

 第5世代ドローン車とかいう訳わけらん空飛ぶ車が飛び回り、街のあちこち至る所に、ホログラムなのかプロジェクションマッピングなのか訳わからん広告表示が溢れている。


 ビルの外観が黒と赤で統一されていなければ、100年後のニューヨークやドバイだと言われても納得してしまうだろう。


 街を行きかう人々も「地獄感」溢れる衣装を着ているのに、それでも何だかおしゃれ感が半端ない。

 半裸で甚平姿の俺が、ワイルドを通り越して野蛮人に思えてしまう程だ。


 実際、多くの通行人が俺を見て、通り過ぎ様にクスクスと笑っている。

 全員焼き殺してやろうかとも思ったが……人間は美味しくなさそうなので辞めておこう。

 

 ――そんなクスクス笑いを無視して辿り着いたのは、いくつも建ち並ぶ超高層ビル群の中でも一際大きなビルだ。

 遠くからでもわかるデカデカとした馬鹿デカい文字で「閻魔王の館」と書かれている。


 文字通り、ここは地獄を統べる閻魔王の住む場所であり、そしてその娘であるネックが暮らしている場所。


 無論、用があるのはネックの方で、閻魔王とはなるべく出くわしたくはない。

 異世界『ヴァルハバラ』では最強&無敵の俺ではあるが、「地獄の閻魔王」と、「天国の大天使」だけは俺と互角レベルだともっぱらの噂。

 敵の本陣でまともに戦うのはあまり得策とは言えないだろう。


 という訳で。

 俺はこっそりと正面のデカいゲートから入ろうとして、俺と同じくらい身長がある屈強そうな二人の警備員に止められた。


「ちょっと君、通行許可証を携帯していないようだが? ここは部外者立ち入り禁止だぞ」


「あ、そうなのか?」


 それは知らなかった。

 こっそり正面から入る作戦は失敗に終わるが、失敗したものはしょうがない。


 俺を止めた警備員を逆に掴み、そいつ等二人をまとめてを壁にぶん投げた!!


「「「えっ……?」」」


 周囲の者が唖然とする中、俺は年百メートルも上空を見据えて宣言する。



「俺は異世界『ヴァルハバラ』最強のドラゴン:タツヲ!! 奪われた物を取り返しに『閻魔王の館』へやって来たッ、ドラ!!」



 ――――――――――――――――

*あとがき

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