16話:タンたんの魂GETだぜ!!

『よいかタツヲ。何を差し置いても、まずはタンたんとやらの魂がなければ始まらぬ。今すぐ人魂道じんこんどう(*死んだ者の魂が通る道)に行って、タンたんの魂を捕獲ゲットしてくるのじゃ!!』


 という訳で、俺はリバ子様の命を受けて一人で人魂道に向かった。

(リバ子様もついて来てくれるかと思ったら、「唐揚げを食べるのが忙しい」と断られたのは内緒だ)



 ――――――――



 ~ ミッション1:タンたんの魂を見つけ出せ!! ~


 まずはリバ子様の水車小屋を出て、隣接する川を渡る。

 それから突き当りにある「雲の壁」を突き抜けて進み、ある程度歩いたら見覚えのある道に出た。


 何処までも何処までも続く雲の道。

 そこに数えるのも億劫になる物凄い数の白い「火の玉」――「人魂」が列を成してゆっくりと流れている。


 先ほど渡った川が「三途の川」とのことだったので、つまりは俺も10年前はこの中にいた訳だ。

 今となっては懐かしい光景だが……感傷に浸っている場合でもない。


「さてと、この中からタンたんを探さなきゃならねぇんだが……これは厳しいな。何処をどう探せばいいのやら……」


 ちょっと想像してみて見て欲しいのだが、「茶色いトイプードル1000匹」の中に「唐揚げ一個」を混ぜて、「さぁ唐揚げを見つけろ」と言われているようなものだ。

 人魂の大きさや色はそれぞれ微妙に違うものの、この中からピンポイントでタンたんの魂を見つけるのは、相当シビアというか無駄骨に終わる感が半端ない。


 一体何日かければ、もしくは何年かかれば見つけられるのやら……。



「あっ、タツヲちゃん!! やっぱり迎えに来てくれたんだね!!」



 ふ、普通に見つかった。

 まさか向こうから見つけてくれるとは……いや、だが待て。


 そう簡単に目当ての魂が都合よく見つかるものか?

 俺を知ってる別人って可能性もあるんじゃねぇか?


「はぁはぁ、タツヲちゃんが見つけてくれた興奮で、また昇天しちゃいそう……ッ!!」


 あ、間違いねぇ。

 このヤバさ、タンたんだ。



 ――――――――



 ~ ミッション2:下山せよ!! ~


 タンたんの魂は確保した。

 手に取ったら普通に触れたので、ふにょふにょしてる先っぽ(?)を提灯みたいに掴んで運ぶ。


「やっぱり私達、運命の赤い糸で結ばれてるんだね!!」だとか、「運命だけじゃなくて身体も○△□☆」とか。

 タンたんが子供の教育に悪いことを口に出していたが、一旦それは無視してリバ子様の水車小屋に戻った。


 そして、水車小屋の扉を開けた後。

 開口一番、以下がタンたんの声だ。



「タツヲちゃんッ、誰よこの女はッ!? まさか浮気相手じゃ……あ~、うん……それは流石になさそう」



 おい、リバ子様のビジュアルを見て“素”に戻ってんじゃねーよ。

 流石にそれは失礼だろ。太ってても顔には美人の面影があるだろ?


 ま、浮気相手じゃねーから否定はしねぇけどな。


 それから、相変わらず唐揚げを頬張っていたリバ子様との関係をタンたんに説明。

 タンたんは「私達の仲人みたいなものだね」とよく分からないことを言っていたがそれは無視して、リバ子様に視線を戻す。


「――で、タンたんの魂を捕まえて来た後はどうすればいい?」


「簡単じゃ、元の身体に魂を戻せばよい。グイッとな」


「え、それで人が生き返るのか?」


「無論、普通の者には到底無理な芸当じゃが、三途の川の主であるわらわにはそれが出来る。――しかし、【死出の山シデノヤマ】ではわらわの力が使えん。ここでは駄目じゃ」


「駄目って、10年間は俺を転生させてくれたじゃねーか。使えないってことはねぇだろ?」


「ふんッ、10年前と今とでは事情が違うのじゃ」


 鼻で笑ったリバ子様だが、それは少しばかり悲しそうな笑いだった。

 俺が知らないこの10年で、何か大変な事でもあったのだろうか?


「とにかく、わらわを『ヴァルハバラ』まで下山させよ。さすればその女を生き返らせてやる」


「わかったよ。リバ子様がそう言うなら」


「ちょっとタツヲちゃんッ、この“肉団子”の言いなりになるの!? そんなの私が絶対に許さない!!」


 とか平気で失礼をほざくタンたんの戯言は無視(どうせ魂の姿なので手出しは出来ない)。

 俺はリバ子様の言う通り、彼女と共に【死出の山シデノヤマ】を下山することに決めた。


 そして、決めた後に後悔することになる――。



「それじゃあタツヲよ、わらわをおぶるのじゃ」



「……え?」この肉団子を?


 ――――――――――――――――

*あとがき

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