10話:最強のドラゴン:タツヲ VS 閻魔王の娘:ネック

「もういい!! どのみちお前を地獄に送ることに変わりは無いのだ!!」


 閻魔王の娘:ネックがキレた。

 ストーカー娘:タンたんに子作りをせがまれたら人の姿になった、という事の顛末を事細かに説明していた訳だが、ネックの顔が段々と赤くなっていき、最後は逆切れ気味に話を切り上げたのだ。


 全く、お前が説明しろって言うから説明してたのに、どうしてお前がキレんだよ? 

 ……いやまぁ、今の時代的にかなりアウト感の強い話ではあるけどな。


「違法転生のドラゴンもッ、そこのよくわかんない変な女もッ、お前等二人はここで仲良く地獄行き決定なのだ!! いけッ、ニャルベロス!!」


『『『にゃ、にゃお~ん……?』』』


 指令を受けたのに、ニャルベロス達は動かない。

 牙の折れた顔でクルリと振り向き、ネックをジ~ッと見つめている。

 見つめられたネックも戸惑うばかりだ。

 

「おい、どうしたのだニャルベロス? まるで誰かに無茶ぶりされた様な顔をして」


『『『にゃお~ん! にゃにゃ、にゃお~ん!』』』


 可愛らしい鳴き声でニャルベロスが何かをネックに訴える。

 生憎と俺には魔獣の声が理解出来ないが、魔獣使いであるネックはニャルベロス達の声がわかるようだ。

 ふむふむ、と偉そうに頷きながら訴えに耳を傾けている。


「なるほど、そうかそうか。『ドラゴンが強すぎて戦いたくない』と……なるほどな。わかったのだ」


『『『にゃお~ん♪』』』


 意志が伝わり、ニャルベロス達が喜ぶ。

 が、それも束の間。


「それでも行くのだ!! 行かないとお尻ぺんぺん1万回の刑なのだ!!」


『『『にゃお~ん!?』』』


 見た目の小ささに反し、魔獣に対するネックはドS。

 罰がお尻ぺんぺんなのは可愛らしいが、お尻ぺんぺんだって1万回もされれば普通に泣ける。


 というか、10歳のガキにお尻ぺんぺんされたら俺だって泣くだろう。

 精神的苦痛で。


 そんなまさかの無茶ぶりに吃驚するニャルベロスを尻目に、ネックは怒りに満ちた顔のまま鞭でバチンと床を叩く。


 今のは新しい魔獣の召喚ではなく、魔獣に対する“激励”、行かねば鞭で叩くぞと本当に脅しをかけているのだ。

 魔獣ニャルベロス達はブルブルと震えながら、俺に突撃するか鞭に打たれるべきかを悩んでいる――ように見える。


 ……ニャルベロス達よ、お前等もネックみたいなご主人様を持って大変だなぁ。

 でも、俺だってタンたんが現れてから何かと大変なんだ。

 お互い、現実に負けず頑張っていこうぜ?


 バチンッ!!


 ネックの鞭で、俺は思考の海から現実に引き戻される。

 最終通告と言わんばかりに、ネックが一際強く鞭で床を叩いたのだ。

 ニャルベロス達は一際大きくブルルと震え、そして悩み、意を決した顔で俺に『にゃお~ん!!』と飛び掛かって来る。


 うむ、その覚悟や良し!!

 あっぱれだ!!

 負けるなニャルベロス達!!

 俺はお前等を応援してるぞ!!

 

 ――でもな、俺だって無駄にやられたくはない。


 という訳で。

 俺は口を開き、その喉奥に燻る炎を噴き出した!!



『『『にゃお~~~~んッ!?』』』


 

「ニャルベロスッ!?」

 

 無情にも火達磨となったニャルベロス達を見て、ネックが悲鳴を上げる――が、安心しろ。

 無情の中にも俺は情を残してやったので、その火はすぐに消える。


 想定通り、炎はニャルベロス達の“毛だけを焼き切って”鎮火。

 全身トリミング後の猫みたいな姿となったニャルベロス達は、九死に一生を得たと言わんばかりの顔で『『『にゃお~ん!!』』』と叫びながら一目散に家から飛び出した。


「ぐぬぬぬ……」

 逃げ出したニャルベロス達を尻目に、ネックが悔し気に顔を歪める。

「よくもッ、オレ様のニャルベロスを!!」


「そう睨むなよ。皮膚が火傷を負わない程度に手加減はしてやったんだ。それにほら、アレはアレで無毛の猫:スフィンクスみたいで可愛いじゃねーか」


「うるさいッ!! こうなったらオレ様が育てた中で“最強の魔獣”を召喚してやるのだ!! 出でよ――」


お前の物は俺の物ジャイアニズム


「あッ!!」


 ネックの手から離れた鞭が、俺の手にパシッと収まる。

 最強の魔獣とかいう物凄いパワーワードに心惹かれる部分が無い訳でもなかったが、これ以上面倒くさい展開は御免だ。


 最強にエロい魔獣、とかだったら一見の価値はごほんごほんっ。

 冗談はさて置き――。



「う、うぅ~、うわぁぁああ~~~~ん!! 鞭が取られたぁぁああ~~~~!! 意地悪する奴は嫌いなのだぁぁああ~~~~!!」



「あらら……」


 どうやら我慢の臨界点を越えたらしい。

 ネックが人目も憚らず号泣しつつ、家から一目散に走って出て行った。



 ――――――――


 ~ 余談 ~


「その運気が落ちそうなダサい鞭、私が燃やしてこようか?」


 ネックが逃げ出した後に、タンたんが当然の様に提案して来た文言だ。

 あまりにもごく自然な笑顔で提案されたので、俺は「よろしく」と頼みかけたが、流石にネックが可哀想過ぎる。

 彼女が再び取りに来るまで、俺が保管しておくことにした。



 ――――――――――――――――

*あとがき

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