悪役貴族の弟

 ども、俺の名はルーク。


 ルーク・ヴィ・アストラだ


 この世界【ルセリア】にある国【テレスト王国】に住む公爵家の次男だ。


 年齢は8歳。そして俺は今、壁とにらみ合っている。


 どうして、そんなことをしているのかというと

 俺は牢にぶち込まれているからである。


 

 ………………。



 と、まぁ……挨拶はここまでだ。


 まずはここまで俺の回想に付き合ってくれてありがとう。


 で、どうだった?


 少しは笑いになったか?


 それとも馬鹿馬鹿しいもんだなとでも思ったのだろうか?


 兎に角、俺がこの牢に閉じ込められてる理由はそんなもんだ。


 閉じ込められてるっていうよりは居座ってるのだが。


 でだ。


「待つだけってのも暇だしなぁ……。」


 兄上がここに辿り着くことを、いつになるか分からんし、何かやることを……せや!


「闇魔法……何が出来るのかの検証でもするか!」


 パニック状態のあの教会みたいなことがあったとしても被害を考えて動けなくなるのは二度とならないようにもな。


 さて、そーと決まれば!


「闇よ」


 腕から出てくる黒い霧のようなもの。


 見れば見るほどゼハハ!って笑いたくなるがちょっと違うところがあるんだよな。


 床に散らばった、父上をぶっ飛ばして砕いた時の鎖に手をかざす。


 おおー引きずり込めたぞ。


 ただ引きずり込めたものは手のひらには無かった。


 いや、正しくは手のひらの闇にのみ込まれたって感じだな。


「出ろ!開けゴーヤ!魔界の扉が開かれた!リベレって駄目だ、流石に怒られる……うーん。」

 

 闇がのみ込んだものを必死に出そうとしてるがダメだった。


 とにかく一度のみ込んだものはもう戻せないらしい。


 ちょっと不便だな。


 ま、それならそれでいいか。


 忙しくなるぞー。



 ◇ ◇ ◇


 


 色々やって、俺の闇魔法に対して分かったことが3つ。



 まず1つめ、俺の闇は文字通りのみ込める。

 

 生物も無機物もなんでもだ。


 色々試した結果、目の前にあるの鎖の破片のをのみ込んだ。


 今、俺が認識出来るのはそこに鎖の破片があるってことだけ。


 その破片は色が無いせいで形、大きさが認識出来ない。


 パソコンでイラストしてる人達には分かりやすい例え方にするとになってるってことだ。 

 

 そう、概念的なモノでものみ込めるんだ。



 次に2つめ、のみ込めないモノだ。


 なんでものみ込めるって言ったがのみ込むにも条件がある。


 物理的なモノだとそれと同じ大きさのを作らなきゃいけない。


 例えば罠で大きな岩を落とされて、俺が展開した闇の穴が小さければ、俺はそのまま岩に潰される。


 そして、闇を広げれば良いってもんでもない。


 広げれば薄くなるし、薄ければ岩をのみ込み切れず、擦り抜けて俺は潰される。


 つまりのみ込む対象の質量も考えなければならない。


 ようは広くて深い闇の穴を展開すればいいのだが、そうすると魔力消費が凄く多くなる。


 広くすれば消費が激しくなるし、深くさせるのもそうだ。同時にそれをやればすぐに魔力枯渇で倒れることになる。


 ただのみ込む対象に出来るモノの自由度が高いのでモノを部分的にのみ込む事も可能だ。


 そうだな……漫画で例えると……奇妙な漫画の3部に出てくるバニラ的なヤツと4部の手で削るヤツと似たようなことが出来る。


 概念や流動体の場合だと闇の穴を深くすればいいだけだ。


 水一杯のバスタブの栓を抜いたみたいにずぶずぶと入ってくるよね。


 のみ込んだモノも無になるのでやろうと思えば、魔力が続く限り海水をのみ干すことだって可能なんじゃないか?

 


 そして3つめ、闇は基本的に俺という点から出てくるものだ。


 俺の身体は魔力性質のせいで全てを引きずり込んでしまう。


 そのせいでどんな攻撃でも数倍以上で感じることになる。


 ただ、俺より強い点を作れば話は別。


 俺の身体より強い吸収力の闇を作れば、魔法などはそっちを優先的に行ってしまうだろう。


 考えることが出来る人相手だと多分気を逸らす事くらいは出来るんじゃないか?





 ………………。


 こうしてまとめると俺って結構ヤバい怪物になってないか?


 いや、まだ俺の闇の限界が知らないだけかもしれない。


 限界を知れば、俺もまだ人の範疇にいるってことだ。


 よし。


 限界までやってみよう。


 えーと、そうだな。


「……【黒点こくてん】。」


 闇の玉を作り出す。


 対象は……そうだな……。




 ………………。

 



 全てだ。



 ギィィィィィイイイイイイイイ――――――――ッ!!!!!!!!!!


 っ!?まっず!?!?!?!





 ◇ ◇ ◇


【アストラの街・外壁の上】

 

 ゴゴゴーン……


「……おっとと!?」


「なんだ今のは!?地震か!?」



 ◇ ◇ ◇


【テレスト王国・ガラクシア城】


「――カニスよ。地震など、いつ振りなのだ?」


「120年ぶりかと、陛下。」


「そうか……民達の安否の確認をせよ。倒れた家がないかの確認もだ。」


「はっ!」


 ◇ ◇ ◇


【水人族が住まう海】


「ん?」


「どうかしましたか?姉上?」


「ううん、何も。なんか揺れたなーと思って。」


「海の底ですよ、ここ。」


「うん、だから気のせい。」


 

 ◇ ◇ ◇


【森人族が住まう森】


「里長様!ご無事ですか!」

 

「嗚呼……嗚呼!やっと……やっと目覚めたのですね……!貴方を待ち続けて500年……。」


 里長と呼ばれたエルフの老婆は巨大な樹に縛られ、歓喜の涙を流していた。


「やっと……やっと救いなる死を我らに……。」


 その瞳には希望の光が満ちていた。


「ルーク様ぁ……!!」

 

 ◇ ◇ ◇


【鉱石人族が住まう山】


「ガハハハハハ!!!おっとと!おい、今なんか揺れたか?」


「揺れた?お前さんが酒の飲みすぎなだけじゃないのかぁ?」


「――かもしれん。」


「「ガハハハハハ!!!」」 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 


【龍人が住まう高原】


「崩壊の奇跡……今のはテレストとか言う国からか?」


「女神ルセは世界の縛りによりあの奇跡を然るべき時以外使えぬと言ったはずだが……」


「では一体誰が……?」


 ◇ ◇ ◇


【獣人族が住まう谷】


「くぅーん……」


「もう終わったみたいだから出ておいで。」


「だってぇー」

 

 

 ◇ ◇ ◇


【雪降るう魔族の国・エイラ】


「地震……120年ぶりだ……だが……」

 

「このままでは民の未来が……。」


 玉座で民達の未来を憂う王が一人。


「戦争し続けても限界が……。」


「一体どうすれば……。」


 ◇ ◇ ◇


【どこかの花畑】


「………………キッキ……」


 夜の化身が月を見ながら笑っていた。 

 

 ◇ ◇ ◇

 

【アストラ邸・当主ノエルの寝室】


「父上……なにを?言って……」


「あの忌子を殺せと言っているのだ!ッゴホゴホ!」


「何故です!?なぜあやつを殺せと!あやつは一体なにをしたというのだ!」


「アッシュ、見て分からないの!?あの忌子が旦那様にしたことを!まるで生気を抜き取られたこの姿を見ても分からない!?」


「ふざけるな!……他の者がやればいいであろう!何故俺がやらねばならん!?」

 

「アッシュ……ヤツは危険だ!他の者ではダメだ!お前しかいないのだ!お前ならばヤツは油断するのだ!」


「なぜ……そう簡単に殺せと言えるのです……あやつも父上達の子でしょう!」


「あんな危険人物などワシの子ではないわ!ッゴホ!……全ては家のためだ……!この毒を飲ませるだけだ!アッシュよ、やれ!」


「やりなさい!アッシュ!」


 

 ◇ ◇ ◇


【アストラ邸・地下牢】



「はぁ……はぁ……あぶねー。」


 一歩遅ければ世界が終わってた気がする。


「はぁ……とんでもねぇなぁ……。」


 魔法の結果を見て思う。 


『あのような危険人物はワシの子ではない!!』


 父上のやつが言った言葉が頭によぎる。


 危険人物……。

 

 まぁ……そこだけは同意見だな。


 まったく、もうちょっと便利な力じゃぁダメだったのかね?


 俺の闇のせいでを見つめながら、そう思った。





   ===========

 就職活動で忙しいです。

 @SIVLBさんもギフトありがとうございます。

 今はまだ無理ですが、いつか感謝としてサポーター限定のものも書けたらいいなと思います。

 @kargさんもレビューありがとうございます。

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