第43話
激動の一週間だった。
なぜか毎日のように寧々が家に来てはああでもないこうでもないと俺に服を与えたり眉を整えられたり美容室に行けと言われたり……夜は夜で沙羅がちょこちょこ家に来てはお惣菜を置いていくような、そんな感じだった。
「なんだったんだ……」
多分大吾から連絡を受けた一週間というのがキーになっているんだろうが、意図がわからない俺は終始振り回されっぱなしだった。
まあそのおかげで随分とメンタルが回復したような気もする。
もう別に、テレビをつけてステラが、前川理世が出ていたとしても、普通に見られるくらいだ。
「……にしても俺、すごい人と会ってたんだな」
テレビに映るアイドル、前川理世を見て思う。
ゴールデンタイムの人気歌番組に呼ばれ、堂々とトークして歌を披露していく。
会っていた黒い恰好とは真逆。清楚な白の衣装をベースに人気曲を歌うその姿からは、俺と遊んでいたなんて想像が出来ないんだけど……。
「やっぱり、リヨンだな」
もう服やメイクが変わったくらいで気づかないほどの関係ではなくなっていた。
だというのに……。
「なんでいなくなったんだろうな……」
おそらくあの日、リヨンは気づいたんだろう。
俺がリヨンが、アイドル前川理世であることに気づいたことに。
相手は国民的人気アイドルだ。正体を知られれば一緒に居られない。その理屈はわかる。
わかるが……。
「そんな鶴の恩返しみたいな……」
きっかけはともかく、オチは大体同じじゃないだろうか。
もっとも、見るなと警告された上で暴いたわけでもなかったあたり、少しくらい文句を言ってやりたい気持ちも湧いてくるんだが……。
「文句を言うにももう、相手がいないからな……」
これだけ冷静に考えられるようになったのはひとえに、寧々が、そして沙羅が、考える暇もないくらい毎日相手をしてくれたからだろう。
そんなことを考えていると、つけっぱなしだったテレビから気になる情報が流れてきた。
「理世ちゃんはなんかあれでしょ。大型新人とコラボがあるとか」
「そうなんですよ!」
「一緒にゲームだっけ? 理世ちゃんは結構ゲームとかしたりするの?」
「そうですねー。結構」
「あら、何か意外だなぁー。で、コラボ相手はこれ……モデルだよね? 大吾くん」
バッとテレビに意識が向く。
「まさか……」
一週間、と言われた日にちは今日だった。
とはいえまさか、だ。
だが……。
「彼だねー。うわーすごいイケメン」
テレビの中で司会者が言うと同時に、画面に期待の新人とやらが映し出される。
アイドルとコラボさせても遜色ないほどのイケメンだ。
そしてその顔を、俺は良く知っていた。
「大吾……」
まさかが的中する。
こんなことになってるとは……。
とはいえ……。
「これのために一週間って言うには、俺に関係なさすぎる気も……」
大吾の性格を考えればこれでは終わらないだろうと身構えたところだった。
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