第37話
「よーし!」
「音ゲーまで網羅してるのか……」
結局二人であらゆるゲームをやり尽くした。
レースやシューティングに始まって、パンチングマシーンまで。
音ゲーにバスケゲームにモグラたたきまで本当に色々やり尽くして……。
「勝った!」
戦績は理世が四勝。彰人が三勝だ。
理世が得意のレースゲームを二回やったから、というのもあるのだが、それを言い訳にするほど彰人もプライドは低くない。
それなりの悔しさを覚えながら勝ち誇る理世を眺める彰人。
理世が可愛いからいいか、なんて考えていると……。
「アキくん。リベンジしたくない?」
「音ゲーとレースはもう避けたい」
「わかってるよー。ボロボロだったもんね」
「こいつ……」
無邪気な笑みで理世が言う。
「あはは。ごめんごめん。でも別のやつ。クレーンゲームで勝負しない?」
「クレーン……何回で取れるかってことか」
「そそ。私あれ欲しい!」
「あれ……確率機だろ」
理世が指さす先に鎮座している巨大なクレーンゲーム。
中に置かれた景品も巨大なクマのようなぬいぐるみなんだが、彰人が言う確率機というのは要するに、技術ではなく確率で取れるタイミングが決まっているタイプの台という意味。
一定確率でアームが強くなるため、そこに当たるまで取れないというものだ。
勝負にするにはどうなのかという彰人の疑問だったが……。
「でも……あれが欲しい」
ちょっと恥ずかしそうに、目を下に反らしながら理世が言う。
そんなことをされて断る男などいないだろうと、彰人が財布を取り出した。
やり込みこそしないものの、彰人はゲームセンターの筐体ゲームも一通り仕様を把握している。
財布の中身を確認して、なんとかなると判断した彰人は何枚かの札を五百円玉に両替してクレーンゲームに向かう。
「やるか」
「頑張って!」
もはや勝負でも何でもなくなったが、ある意味では負けられない戦いが始まったことになる。
とはいえ彰人の理解では、このタイプは毎回狙いを外しさえしなければその内取れるようになっている。
逆に言うとその時が来るまでは、ピッタリ狙ったところで取れないんだが……。
「おお! 持ち上がった! すごいすごい!」
理世が盛り上がって彰人の肩に手を置きながらジャンプするが、彰人の表情は険しいまま。
彰人の読み通り、持ち上げられたぬいぐるみは取り出し口にたどり着くことなく……。
「ああっ! 落ちちゃった……」
直前でアームに見放されるように落下し、何度かバウンドしたのち再び元の位置に近い場所まで戻っていった。
「こういう台だから」
「むぅ……」
何も言わずに二回目のトライ。
そのために五百円玉勝負なわけだ。
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