第33話
沙羅から伝えられて衝撃を受けて数日。
リヨンに勝手に壁を感じた俺はしばらく連絡を取ることもなく過ごしていたんだが……。
『アキ殿! 先日はすまなかったでござる!』
焼き魚定食氏――大吾からメッセージが来ていた。
もう何度目になるかわからない謝罪だ。
別に気にしていないと返して何か用があったのか聞いたら……。
『そうでござった。アキ殿。うちの妹に吹き込まれたことを気にしてリヨン氏との連絡を途絶えさせてはござらぬか?』
う……。
鋭いというかよく気付くというか……。
仕方ない。白状しよう。
『実はそうなってる』
『やはり! ダメでござるよ! リヨン氏は何も知らないでござる! 変に意識せずにいつも通りするのが大切でござる』
大吾の言うことはもっともだ。
もっともなんだけど……。
『とはいえなんか、変なハードルを感じる』
この前もテレビに映っていたような相手なのだ。
会ったらもちろん、メッセージのやり取りですらちょっと平常心でいられる自信がない。
『気持ちはわかるでござるが、それでアキ殿はいいんでござるか?』
大吾が溜めて、こう言った。
『リヨン氏との仲は、その程度でござるか?』
『そう言われると連絡せざるを得ない』
『良かったでござる。ご武運を』
それだけ言って大吾がやり取りを終える。
これもまぁ、すぐにリヨンに連絡しろということなんだろう。
ほんとに口調のせいで混乱するが、リアルは中身も外見もイケメンに他ならないんだよな……あいつは。
俺も大吾の気づかいに応えないとだな……。
ここ数日はなんとなく連絡が取りにくかったとはいえ、別にこれまでも毎日やり取りをしていたわけではない。
今連絡しても都合が悪いこともない……と自分に言い聞かせる。
「どこに誘うか……」
ゲームの誘いでも別にいいんだが、会いたい気もする。
ただどこに行くかだけど……。
「一緒に決める、か」
リヨンの行きたい場所もあるかもしれないし、そもそもいつ行けるかわからないから予約が必要な場所だと問題だ。
ひとまず連絡を……。
「……」
そのハードルが高いんだけど……。
結局一時間近く悩みに悩み、最終的にはシンプルにメッセージを送った。
『今度どこか遊びに行けないか?』
返事はすぐに来る。
『わー! 行きたい!』
良かった。
まあそうだよな。向こうにとっては別に、何も変わっていないんだから。
勝手に壁を感じているのは俺だけだ。
一旦連絡を取り始めればアイドルではなくリヨンとの会話になっていく。
そのままお互いの状況やら行きたい場所をあげていったりとやり取りをしていくことになったのだった。
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