第34話
「良かったーちゃんと会えて!」
「忙しかったんだな」
「んー、ちょっとね。ごめんねなかなか予定決められなくて!」
「いや、結果的には早かったというか……」
あれから数日。
リヨンと日程調整を進めていく中で、当初は予定が読めないから待って欲しいと言われていた。
本来の活動と照らし合わせて考えれば仕方のない話で、別にいつでもいいと言ったところ、逆に直近の予定なら空いたということで急遽当日に集まる話になったわけだ。
やっぱり忙しいんだろう。むしろこれまでがおかしかったと言える。
「んー? アキくん、どうしたの?」
「ああ、ごめん。今日はどこか予約したりはしてないから、ふらふら当てもなくなんだけど……」
「いいね! 楽しそう!」
屈託のない笑みを浮かべるリヨン。
今日も全身黒いコーデに、メイクも含めいつも通り地雷系のファッションに身を包んでいる。
だというのにどこかキラキラしたオーラのせいで地雷感が薄い。
これがここまでの付き合いで生まれた認識の差なのか、アイドルという姿を知ってしまった結果なのかいまいちわからないが、相変わらず言えるのはリヨンが人通りのあるところに立てば目立つくらいには可愛いということだ。
「ん? どしたの?」
「いや、また目立ってるなと思って」
「あはは。ごめんね?」
「いや、リヨンが悪いわけじゃないというか……隣が俺のせいで申し訳ないというか……」
「ふーん?」
俺の言葉に何を思ったか、リヨンは少し考える素振りを見せたあと……。
「えいっ」
「うお……リヨン?」
いきなり腕を組まれて困惑する。
「別に今さらこのくらいいいでしょ?」
「それは……」
一回目を思えば何でもよくなってしまう。
とはいえ腕に当たるこの感触は無視できるものではないし、そもそもの距離が近くなりすぎて顔が熱くなる。
周囲もどこか諦めたように視線を外し始めたので、リヨンの狙い通りなんだろう。
別に嫌というわけではないし、ここで抵抗してもドツボにハマりそうだから諦めてこのまま歩く。
ちょっと慣れないし、恥ずかしいし、変な罪悪感みたいなものがあるんだけど……。
「アキくん。今は私に集中!」
「は、はい」
「ふふ。今日はいつもよりそわそわしてるね」
「いつもそわそわしてたのか……」
「うーん。割と?」
首をかしげながらリヨンが言う。
「でも可愛いから好きだよ?」
「……」
もう何も言えなくなって、とりあえず最初の目的地に急いで向かったのだった。
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