第22話【理世視点】

「ほんとに仲いいんだね、店員さん」

「いや、なんか俺以外もあんな感じみたいだぞ……? タバコ買いに来るおっちゃんにも親し気に話してたから」

「なるほど……」


 家に着いてひと段落したところで、理世は部屋全体を眺める。

 一人暮らしのアパートだ。そんなに広くはない。

 座れる場所はあるが、それ専用のスペースを取ってはいないので、座るのはベッドとカーペットの上。

 彰人の勧めに応じてベッドに腰かけた理世だが、初めて来た男の家。落ち着くはずもなくそわそわしていた。

 彰人はというと、要らないというのに母親が置いて行ったベッドカバーが役に立ったことに感謝しながら紅茶の準備をしている。


「で、今日はなんで突然呼んでくれたの?」


 理世がベッドからキッチンへ向かって問いかける。

 彰人も紅茶を淹れながら答える。


「えっと……特に理由はないんだけど、ゲームするならこっちでもいいんじゃないかって」

「確かに……ほんとにすごい数だね……」


 二人が出会うきっかけになったFPSゲームはPCからだが、理世も彰人も、ゲームなら何でも一通り好きと言い合っている。

 実際彰人の家には生活を圧迫するくらいには様々なゲーム機が置かれており、レトロゲーから最新のものまでやりたいと言えば定番ゲームは大抵できる環境になっている。

 学生の一人暮らしには多少贅沢な広さがあるが、それをある意味、有効活用していた。


「好きそうなのあったら教えて欲しい。見てていいから」

「うん」


 理世もゲーム機とソフトを物色しながら彰人を待つが……。


「えっ! これ懐かしー!」

「あー。懐かしいな」

「え、これ持ってたの!? ずっとやってたー」

「それは俺ら世代なら全員通ってると思ってた」


 もう何年も前のゲームを掘り出しては、逐一台所にいる彰人に共有していく。

 彰人もその都度キッチンから理世の方に顔を向けて対応していた。


「裏技が多すぎて通常プレイじゃ勝負にならないんだよな、それ」

「わかるー。あ、これがあるってことは、コントローラー壊れてない?」

「みんなガチャガチャやったからうちのコントローラーは全部もう五代目くらいだと思う」

「うそ、やば……。ほんとだ全部綺麗だ」


 そんな会話をしていくうちにどんどん無自覚に無防備になっていく理世。

 彰人が紅茶をもって部屋に戻ってきたときには……。


「わー、こんなのまであるんだ!」


 四つん這いでソフトに夢中になる理世と、それを後ろから眺めることになった彰人。

 見なかったことにして彰人は机に紅茶を並べたんだが……。


「あっ」


 理世の方が気づいてしまう。

 いっそ気づかない方がお互い幸せだっただろうに、気まずい空気が流れた。

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