第20話

「今さらどうにもならないし大吾を信じるか……」


 言われた通り掃除だけはしっかりやった……つもりだ。

 俺がどれだけ掃除していてもたまに母親が来たら「ここが汚い」「あそこが汚い」と大掃除をしていくから自信が徐々になくなってはいるが……。


「これが俺の限界……買い物は一緒にする」


 そんなことを考えていると携帯が震える。


「リヨン……?」


 すぐに電話に出る。


「もしもし?」

「あ、ごめんね? ちょっと早く着いちゃいそうだから電話したんだけど……」


 なるほど。


「こっちはもういつでもいいんだけど、ちょっと飲み物とかは買いに行こうと思ってた」

「あ、それなら一緒に行こ」


 家の住所を伝えていたから直接来るはずだった。ただこれなら近くのスーパーかコンビニで集合し直そうかと思ったんだが……。

 


――ピンポーン



「あれ……?」

「あはは。来ちゃった」


 そんなに厚くない扉だ。

 電話越しからも扉の向こうからも、同じ声が聞こえてきた。


「ちょっと待って」


 電話を切って玄関をあける。


「ごめんね。実はもう着いてて」


 いたずらっぽく笑うリヨン。

 その表情が今日の服にもよく合っていた。

 黒の服にはいつもよりフリルがふんだんに散りばめられていて、肩をあえて露出するようなスタイル。

 髪の毛も黒いリボンでハーフツインにしており、メイクも相まって人形のような可愛らしさを演出していた。


「ん?」

「いや、髪の毛可愛いなと思って」

「――っ!?」


 あ。

 つい口に出た。

 悪いことではないんだがなんか気まずいというか恥ずかしいと思っていたんだが……。


「うぅ……不意打ちはずるいというか、アキくん割とそういうとこあるよね」

「ええ……」


 俺以上に恥ずかしがる相手がいたのでこっちは無事だったんだが変な口撃を受けることになった。


「あ、そうだ。買い物行くんでしょ? このまま一緒に出よ?」

「ああ、ごめん。ちゃんと準備できてなくて」

「ううん。一緒にお菓子とかも買っちゃおー!」


 ノリノリで良かった。

 と、何かを思い出したようにリヨンがごそごそ鞄をいじったかと思うと……。


「あ、これお土産! 後で一緒に食べよ?」

「ああ、ありがと」


 包みにはいったお菓子を受け取る。

 男友達と普通に遊ぶだけでは起こらないイベントだなこれは……。なんかちょっと緊張してきた。


「荷物だけ置いてくか?」

「うん! ありがとー」


 そんなこんなでやりとりを済ませ、二人で近くのコンビニまで向かうことになったのだった。

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