第16話
「よーし!」
「おい! 流石に加減しろ!?」
イケメンは期待通りのパフォーマンスを発揮していた。
三ゲームを終えてほぼダブルスコアだ。
俺が悪いと言うより大吾がうますぎる。
「スコア二百なんか初めて見たわ……」
「いやー俺もなかなか出せないこんなの」
ほんとにどうかしてる……。
「で、どうする?」
大吾が笑顔で訪ねてくる。
最初に申し込んだゲーム数は終わったわけだから、これは延長の確認なわけだけど……。
「俺そろそろ腕が上がらなくなる気がしてるんだけど」
「俺も久々だったからそうだなぁ……でも、負けっぱなしは嫌だろ?」
悪い笑みでこちらを見てくる。
とはいえ……。
「流石にここまで差があるとそんな意欲も起きないんだけど……なんか考えがあるわけか」
「お互い利き腕は付かれただろ? 逆の腕でやって勝負して、負けたら一つ質問に答えるってどうだ?」
「質問……?」
「デートの件、詳しく聞きてえんだよ」
「俺にメリットがあるのか?」
「もう気付いたと思うけど、俺は結構モテる」
「殴って良いか?」
腹立つな、このイケメン。
「待て待て。見たところアキは、俺の秘伝のテクニックが役に立つはずなんだよ」
「テクニック……?」
どの分野かによっては確かに……いや違う。むしろ今のこの複雑な状況に下手なテクニックは要らないと思っていたんだが……。
「モテ期ってのは厄介でな。必要ない縁も手繰り寄せちまう。その断り方、知ってた方が良くないか?」
そうきたか。
別にリヨン以外にそういう相手がいるわけではないし、現状実感はない。
だが、なぜか大吾の目を見て直感的に知りたくなってしまった。イケメンは目力に説得力が生まれる……。
それにまぁ、どの道この後飯にでも行けば知られることだろう、リヨンとのことは。
そういう意味ではそもそも、デメリットがない勝負なのだ。
「いいよ」
「よーし。ちなみに俺、実は両利きなんだよ」
「おい!」
結局延長戦となった四ゲーム目もきっちりボコボコにされてから、ファミレスに向かうことになったのだった。
そういえば見た目のせいで記憶から消えていたが、焼き魚定食はこの手のだまし討ち大好きなプレイスタイルだった。
気付いたときにはもう、後の祭りだった。
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